───命ちゃん達の誘拐後、アメリカにて。
ヘリコプターに乗り込んだ私達はあからさまに飛行船とは違う方向に飛び出していた。コイツら、命よりも優先するものがあると思っているのか?
「オイ。何処に向かっている」
「アメリカのゾナハ病研究施設だ。ようやくゾナハ病を食い止める装置が完成したという連絡を受けている。……ところで、その耳と尻尾はなんだ?」
「チッ。命より優先する必要があるのか」
男のしろがねの言葉に、そう私は苛立ちながら煙草の煙を吐くアシハナを睨み付ける。その臭いは嫌いだと何度も言っているはずだが、忘れているのか焦っているのか本当に面倒臭い男だ。
「巓、座らないのか?」
「……酔うから嫌だ」
私に向かって両手を広げて座るように促す平助に飛び付いてやりたい気持ちを堪えながら、命の匂いも気配も消えていない事をアイツに巻き付けた髪の毛で分かっているが、生命力が低下している。
あまり無茶するな。
お前は愛されるべき存在だ。
「んッ、平助、いきなり尻尾を掴むな」
「お、おお、悪い。マジで生えてるのか」
平助の言葉に視線が集まり、耳と尻尾を消して平助の隣に腰掛ける。すぐにヘリコプターの振動で気分が悪くなり、気持ち悪さと吐き気、目眩に襲われる。
乗るくらいなら飛ぶべきだったか。いや、人間の身体で長時間の飛行は難しい、こうなることは最初から避けることは出来なかった結果だ。
「少なくとも研究施設には三郎丸がいる」
「…んゔ、だれだ?」
「ミコトの使ったニンジャよ機巧人形だ。僕のオリンピア程ではないが高性能の自律型機巧人形だろう。ただ、アレは数を多く作り過ぎている」
忍びなら群れるのが当たり前だ。私に仕える忍びもそう言っていたが、やはり個の強さを求める奴らには伝わりにくいのだろう。
「……血の臭い」
スンと鼻を鳴らして、窓の外に視線を向ける。
童を襲うガラクタがいるな。平助の手の甲を軽く叩き、窓の外を目配せする。
「子供か?」
「待て、ここにゃもう人は居ないはずだぞ?」
加藤の言葉に機内が緊張に包まれる。
そんなに焦るのならば助けに向かえば良いだろう。そうするためにお前達はこんな酔う以外に成果を与えないヘリコプターに乗っている。
「私の髪で道は作ってやる。加藤」
「助かる!!」
私の呼び掛けに一切の躊躇もなくヘリコプターの扉を開け、飛び降りる加藤の足元に滑り台のごとく髪の毛を螺旋状に作り、ガラクタの近くまで最短距離を進めるように場所を固定していく。
平助も他の奴らも次々と降りていく。
「アシハナ、お前は行かないのか」
「あたしは二度も裏切っちまったんですぜ?」
「下らん。それだけで命が嫌うか」
アイツは底抜けに優しすぎるからな。