コツリと玉座の目の前に在る段差を一段降りただけで感じる重圧な気配に僅かに後ろに身体を退いてしまうけれど。ここで逃げるのはダメです。
「……しろがねさん、その発明品を使います」
「これか?」
私の言葉にしろがねさんは電光丸ではなく、もう一つの発明品『人間あやつり機』を見つめる。見た目は「しろがね」達の使っていた懸糸傀儡の指輪と同じです。
ですが、その対象は人間です。
「私の身体を預けます、どうか」
「ッ、わかった!」
私の関節に操り糸が絡み付き、痛ましく傷だらけでボロボロのセーラー服を締め付ける。初めて感じる圧迫感は苦しくて気持ち悪いけど。
この程度の事で負けるつもりはない。
そう思っている間もフェイスレスは攻撃も仕掛けず、静かに私達の行動を観察し、いつでも動けるように工具を取り出せる位置に手を置いている。
対して、私は人形になる。
しろがねさんの腕前は知っていますし、攻撃に関して何も不安に思うことはありません。ゆっくりと自動反撃機能を解除した電光丸と鞘を構える。
「ミコト、お前の
「えぇ、お預けします」
私は、しろがねさんの言葉を承諾して全身の力を抜き、痛みや苦しさに堪えて無理やり立っていた身体の重心も全て彼女に委ねる。
「即興の操り人形劇…だが、僕の技術は人形ではなく対人にも使用できる事を忘れちゃいないかい!」
「ミコトっ!!」
フェイスレスの振るう右手に仕込まれた無数の工具を電光丸で受け止め、いつも健康体を維持するために行っているストレッチやヨガのおかげで柔軟な関節は予想以上の斜め上からの突きを行うという可動を見せる。
糸に引かれるがまま私の身体は空中を舞い、左右から薙ぐように連続して横蹴りを放ち、横回転に身体を旋回して電光丸を振り抜く。
糸色流剣術に組み込まれ、幾つか継承されている古流剣術「飛天御剣流」の技法の一つ、確か「龍巻閃」という名前だったと記憶している技を繰り出す。
「いやはや、コイツは驚いた。ほんの一瞬だが、百年ちょっと昔に戦り合った日本の侍を思い出したよ。確か、彼も糸色の名前を名乗っていたね。そうだ、ハッキリと思い出した。彼の名前は糸色姿だ」
「……その方は糸色景様の兄君です」
「成る程、合点が行くわけだ。エレオノールに攻撃方法を任せるのも自分のポテンシャルを最大限まで引き上げることが目的だったわけだ。流石は、糸色家の血筋。そういう感覚は群を抜いている」
そうフェイスレスは嬉しそうに語る。