「すまない、ミコトッ」
「大丈夫です。ほら、動きますから」
私の事をお姫様抱っこして走るしろがねさんの謝罪を受け入れ、少し痣みたいに変色している右腕を邪魔にならない程度に動かしながら答える。
タッタッタッ、と軽やかに地面を蹴って走る彼女と私の目の前に小さな鳥のような
だけど、どこかで見覚えがある。
そう、そうだ。勝君が連れていた人形です。
「アンタ!しろがねとミコトだな!助けてくれ、マスターが危ないんだ!!Oって奴らに襲われて、このままだと殺されちゃうよぉぉ!!」
その言葉に私達は焦るよりも先に「どこにいるの!」と叫び、鳥さんの先導を受けながら動き出す。でも、もう動くことも出来ない、私はもう足手まといだ。
「しろがねさん、降ろして下さい」
「ダメだ。連れていく」
「無理ですよ、しろがねさん」
「いやだ!お坊っちゃまだけではくミコトまで失ってしまったら私は耐えられない!」
「いいえ、耐えて下さい。私と貴女は勝君のお姉ちゃんなんです、大事な弟を守るために絶対に振り返っちゃダメですからね」
そう言って私は壁に背中を預け、涙を流しながら走り去るしろがねさんと鳥さんの後ろ姿を見送り、ゆっくりとまた立ち上がってころばし屋さんに彼女達の事を頼み、ぞろぞろと集まってきた「しろがねO」達を見据える。
もう、削る分の命もありません。
「掛かって来なさい、ここから先は通さないわ」
「止めておけ。既に死に体、我々のような超人に敵うわけもない。大人しくここで捕まれば先程の愚行は見逃してやっても良いだろう」
そう言って私を見下ろす「しろがねO」達に向かって、ゆっくりと深呼吸を繰り返しながら、私は二度も酷使してしまったせいで『決め技スーツ』のバックルを左手でなぞり、通路の真ん中に立つ。
「すぅぱぁ…!」
「ッ、取り押さえろ!」
「動くな、人間!」
「ライトウェーブッ!!!」
私の叫び声に呼応して、カァッ!とバックルは強烈な閃光を発し、「しろがねO」達の視界や運動機能回路を一時的に狂わせ、私を追えなくしたところで窓の縁に手を掛け、ずるりと真っ逆さまに落ちる。
「セイリング、ジャンプ…!」
落下する際に生じる風圧を受けて地面にぶつかることは無かったけど。もう、私は動けない、戦う力も残されていないから、勝君の事はお願いします。
しろがねさん、お願いしますね。
海に落ちて、沈みかけ、岩肌に身体を当てて静かに目を瞑る。ちょっとだけ眠らせて……、ほしいです。