四乃森のおじ様に家まで送って貰い、お風呂と昼食を済ませた私はクローゼットの奥に入っていき、糸巻きの家紋にゆっくりと印籠を押し当てた瞬間、家紋の入った壁──ううん、正方形の大きな箱が部屋の真ん中に飛び出し、ガシャンと一本足の武者が着地した。
「唐倶利武者、推参!」
「からくり、武者」
その名前は知っている。巓ちゃんに貰った奇天烈斎の発明品を書き記した『大百科』に載っている機巧人形の鎧武者であり、糸色家の子供を守り、仕えるようにプログラミングされたロボットだ。
濃い青色の甲冑、腰に佩いた刀、胴に記された糸巻きの家紋は唐倶利武者の存在を示しているものの、どうやってお話しすればいいのかな?
「えと、はじめまして?」
「はっ。御初に御目に掛かり致す、糸色の姫君。某は糸色機巧軍侍大将の唐倶利武者に候う」
「御丁寧にありがとうございます。確かに私に糸色の名は在れど今は才賀の娘、命に御座います」
車輪のついた一本足を綺麗に曲げ、私に向かって頭を下げる唐倶利武者に倣って私も正座し、深々とお辞儀を返して唐倶利武者を見詰める。
無駄な装飾は無く武人としての性能を高めているタイプのロボット。才賀正二お爺様の部屋にも似たものはあったけれど。私は此方に興味を惹かれます。
「あるるかんっ!!」
そう鑑賞に浸っていたその時、窓ガラスを突き破って私の部屋に入り込んできたしろがねさんに目を見開き、此方に向かって飛来するガラス片にぶつかる刹那、唐倶利武者がガラスの欠片を微塵に切り裂いた。
「貴様、ミコトに何をするつもりだ!」
「姫君、曲者に御座ります」
ギシリと機巧人形の身体を軋ませ、刀を構える唐倶利武者と懸糸人形を糸で操り、攻撃を仕掛けようとする二人の動きに私は呆然と見詰めることしか出来ない。
どうして、戦うことになっているの?
「
「いざ、参る!」
私が制止するよりも素早く戦いを始めてしまった二人は私の寝室を飛び出していき、壊れて滅茶苦茶になったベッドやカーペット、本棚に頭を抱えてしまう。
流石に予想外すぎるよ、これは。
「命さん、凄い音がしたけ……なにこれ?!大丈夫!?何処も怪我していないよね?!」
「勝君、どうやって止めましょうか?」
そう言ってお庭で攻撃を繰り返す唐倶利武者としろがねさんの操るあるるかんに私は悩む。窓ガラスや本棚は直して貰えばいいけど。
先ずは、二人の誤解を解かないといけない。