───スペースシャトル発射まで、あと
「オイ、ガラクタ。私の従姉妹を抱えて何をやっている?」
「あら、貴女も来たのね。テンちゃん」
「そう呼んで良いのは命だけだ」
「残念ね、もう聞けないわ」
そう言うと血を流して眠る命に膝枕をしてやっているガラクタ───コロンビーヌは片目と片腕を失い、銀色の血液を垂れ流している。
直に血液は底を突いて死ぬ存在だ。
私の後を追いかけていた平助とギイもまた命の事を見るなり苦しそうに顔を悲しみと後悔に歪める。いつもならば美味と感じる筈なのに、酷く不味く思える。
ゆっくりと目を閉じて動かない命の頬に触れ、まだ微かに暖かな彼女の温もりを確かめていた刹那、微弱で今にも止まってしまいそうな心臓の鼓動が聴こえた。
「まだ生きているな。ギイ、手伝え」
「医師は僕の方なんだが?」
「て、巓、俺は何をすればいい!」
「ヘースケは人員を探してくれ。これは、いつ止まってもおかしくない状態だ。動いていることすら奇跡に近い…コロンビーヌ、何かしたのか」
「べっつにぃ…この子にはアポリオンは使えないから潰さないように心臓を軽く押していただけよ」
成る程、心肺蘇生なら可能性はあったわけか。
ギイに軽い心臓圧迫を受けながら血を吐いて、浅くか細い呼吸を再開し始めた命の姿に安堵しながら此方に向かってくる人間を見つめる。
「ガラクタ、お前の手柄だ。ありがとう」
「貴女ってお礼とか言えるのね」
「壊すぞ、糟が……おい?」
笑顔のまま止まったコロンビーヌを見下ろす。
銀色の血が、ぽたり、ぽたり、と垂れる。
最後まで私の従姉妹達を守ってくれた事は感謝する。次に目覚めることがあれば私と同じように人として生まれ変わることを願っておこう。
「テン!輸血が必要だ、来てくれ!」
「好きなだけ使え、私は特別頑丈だ」
私は素早く左側の着物の片袖を脱ぎ、肌を晒すと平助が何かを言いたそうにしているが、私は注射針を刺され、血が命に流れるのを見ながらタンカーに寝そべり、同じように運ばれる。
命を傷付けた男をブチ殺してやりたかったが、才賀勝に此度の命運は譲ってやろう。そうでなければあの不自然な親子はまともに話せんだろう。
「アシハナはどこだ?」
「そういえば、どこだ?」
「……平助、頼めるか」
「分かった。巓も無茶するなよ?」
「当たり前だ」
私の言葉に苦笑を浮かべながら平助はベルトを巻き、アシハナを探すために走り出した。男というのは格好付けることに誇りでも持っているのか?
血の臭いが濃くなっているぞ、全く。