命に私の血を分け、辛うじて生命は繋いでいる。しかし、いつ死んでもおかしくない状況に変わりはなく、私は宙に向かって飛ぶスペースシャトルを追う。
高々空気の無い宙の中に向かうだけだ。
その程度の場所など私には脅威でも何でもない。緩やかにフェイスレスの待つ場所に駆け出す才賀勝の後ろを歩きつつ、鳥のガラクタの絶叫に顔をしかめる。
「な、なんでテンさんが此処に!?」
「命のため以外に何がある。お前が死ねば命は悲しみ、フェイスレスの持つ心臓がなければ命は危ない。此処に来るのは必然的だろう」
「ゾナハ病の治し方もだよ、テンさん」
私の言葉に付け足す才賀勝の頭を軽く撫でてやり、ゆっくりと井戸を通って宇宙ステーションという物の中に飛び込んだ瞬間、フェイスレスが佇んでいた。
「フランシーヌ」「私の名前はフランシーヌ」「あなたはどこから来たの?」「こんにちは」「だめですよ、町の中で腕を振り回しちゃ」「フランシーヌ」「私の名前はフランシーヌ」
何度も重複する言葉に不快感を感じながら私はレンガ造りの町の中を歩いていると、しろがねやフランシーヌ人形と姿形の似たものを侍らす黒髪の男がいた。
成る程、ようやく腹を括ったわけだな。
「よう。待っていたぜ、マサル。命じゃないのは残念だが、お前の声はフランシーヌやアンジェリーナ、エレオノールに似ているから気に入っていたぞ、テン」
「囀ずるな。糟が、素っ首を刎ね飛ばすぞ」
「おー、こわいこわい。だけど、そんなこと言っても良いのかな。此方には命の心臓があることをわすれてもらっちゃ困るぜ」
「フン。私の性格を知って尚言うか」
薙刀を取り出そうとする私の前に一歩踏み出した才賀勝に視線を向け、静かに呆れたように溜め息を吐いて、ゆっくりと腕を組み、尻尾に腰掛ける。
「マサルか、お前も来たってことはゾナハ病の事を聞きたいんだろ?」
「フェイスレスさん、お願いです!ゾナハ病の治す方法とミコトさんの心臓を僕に教えてください!」
「君は僕からエレオノールを取り上げておいて、それが今さら土下座して、ゾナハ病の止め方と命の心臓を教えろだと?」
「教えてください!!」
「いやああだよ、バアァカ!」
フェイスレスの態度に舌打ちをして、やはり手足を斬るか死ぬ寸前まで追い詰めねば言わないと再認識し、薙刀を取り出した刹那、私の尾にクマの縫いぐるみが張り付いていた。
「あのガラクタをまた再利用したわけか」
そう文句を言いながら尾を擦り合わせ、クマの縫いぐるみを粉砕し、人形を取り出す才賀勝とフェイスレスに視線を戻す。
邪魔ばかりする糟が、本当に不愉快だ。