───シャトル発射後。
ピッ、ピッ、ピッ、と一定のリズムを刻む機械の音を聴きながら目を開けると白い天井と私の身体に幾つも付いている医療機器に驚いてしまう。
私は、死んだんじゃなかったの?と酸素マスクの中を蒸らす呼吸は弱くて、本当に生きているだけ奇跡とも言える自分の姿に思わず、苦しさに呻く。
勝君は?鳴海お兄さんは?
グルグルと頭の中を巡る考えを落ち着かせるためにゆっくりと深呼吸を繰り返すものの、少し強く息を吸っただけで咳き込み、酸素マスクを真っ赤な血で汚し、あまりの痛みに涙が出る。
「お嬢さん、大丈夫ですかい!?」
「っ、けほ…ごほっ、ごほっ…ッッ…へー、き……」
私の咳に気付いてくれた彼がカーテンを開け、私の口を覆う酸素マスクを外して、血で塞がっていた鼻と口許の血を拭き取ってくれる。
恥ずかしいけど、今は何も出来ないから。
血濡れの顔の私を見る英良さんの必死な顔にクスリと笑いそうになるけれど。胸に出来た大きな縫合手術痕に目を背けつつ、ゆっくりと彼の頬を撫でる。
フフ、ちょっとだけお髭が生えてますね。
「ね、…てん、ちゃ、は……?」
「お嬢さんの姉さんなら今坊やと一緒に宙に行ってる。もうお嬢さんは休んで良いんですぜ?ほら、あたしが傍にいやすから」
巓ちゃんが宇宙にいる?
私の心臓を取りに、彼女が?
困惑と不安の感情が溢れるがままに籠の中に畳まれた制服に手を伸ばす。四次元ポケットにある、あれを使えば、巓ちゃんに伝えられる!
届いて、届いてっ、届いて!
「コイツですかい?」
「…ひゅー、けほっ、っ……はぃ…」
四次元ポケットを開いて貰い、ゆっくりと整理していた棚から発明品を取り出す。宇宙にいる彼女を助けるために使える、ゆっくりと発明品のボタンを押す。
一度だけ、使うだけでふ。
「(巓ちゃんの勝君が無事に帰ってこれますように)」
そう私は『しあわせトランプ』にお願いした瞬間、スペードのエースが消えて、みんなの無事を願う度、一枚ずつ消えていく。
「……ソイツは、なんなんで?」
英良さんの問いかけに答えようかと思うも笑顔を向け。少し首を横に振って『しあわせトランプ』を四次元ポケットの中に戻す。
ある程度の幸せと願いは届くと信じています。
だから、二人とも無事に帰って来て下さい。
私の望みは、大切な家族で笑っていられること。心臓だって治らなくても、みんなと僅かな時間でもいいから一緒に過ごしたい。
英良さんのことも認めてもらえて、結婚式だってしてみたいんです。巓ちゃんと一緒に、みんなで笑顔を見たいんです。