【完結】からくりと踊り謡う薄命の花   作:SUN'S

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巓様の視点になります。




からくりと踊り謡う薄命の花 急

あの激動の日々から六年が経った。

 

少なくともゾナハ病を発症する人間はもう地球上には居らず、平穏な日々は続いている。たまにミンシアや公女に会うことはあるが、些細な出来事だろう。

 

「随分、様変わりしましたね」

 

「そうかな。巓みたいに口調は変えてみたけど」

 

「私の口調は最初からこうですが?」

 

ホホホと笑えば愛する秋葉妙(かあさま)ナガレ(とうさま)は苦笑を浮かべつつ、私と平助の事を見つめる。六年の月日はやはり長く感じるものだ。

 

おそらく分岐点は命が天幕の舞台に飛び込んだとき、あの日こそ私の人生を大きく変える瞬間だったのかも知れない。が、多少なり不満はある。

 

「どうして、私の娘を蝶野に預ける?私と母様、父様の強さならこの子を守るなど簡単だ。平助は僧侶の修行もあるが、良き父として」

 

「巓、この決断は間違いないわ。この子の未来を守るためには必要な選択であり、貴女のお腹にいる子供も無事に生まれるには必要なのよ」

 

「……あの財を狙う糟どもが」

 

私の手に入れた宝を幾度となく奪おうとした挙げ句、今度は私の家族を奪うつもりか。許さん、絶対に私の髪と尾で絞め殺してやる。

 

「巓、お義母さんなりに考えがあるんだ。僕らも一緒に乗り越えよう?この拳は巓達を守るために振るう、最強の楯であり鉾だ」

 

「知っている。だから、私はあなたとの娘を失いたくないんだ」

 

そう言って私は蛮竜を掴んだまま不思議そうに動かない私と平助の間に生まれた愛しのやや子を、(ほまれ)の事を見つめる。

 

いや、きっと、そうなのだろう。

 

糸色景の血と糸色巓の血を濃く受け継いだ私のやや子は錬金術師の求める最高品質の素材であり、ホムンクルスなどという糟に対抗する手段足り得る。

 

「巓ちゃん、どうしたんですか?尻尾がお庭まで出ていますよ?」

 

聞き慣れた鈴の音に耳を傾け、ゆっくりと後ろに振り返れば不思議な目を持つ男児と手を繋ぎ、やはり今日もアシハナに押されるがまま車椅子に座っている、今日も無事に生きている命と目が合う。

 

「この愚図めが、また抜け出してきたのですね」

 

「フフ、罵倒と敬語が混じってますよ。(さかい)、この人が前にお話しした巓ちゃんです。英良さん、お願いします」

 

「えぇ、勿論ですよ」

 

ゆっくりと命の身体を抱き上げ、縁側に移すアシハナの隣に立つ男児の視線の先には───私の愛する秋葉妙(かあさま)が存在している。

 

「おばちゃん、つよいね」

 

「ホウ。坊主の癖に見る目があるな」

 

でも、ぼくなら二十回目で勝てるよ(・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「……成る程、そう受け継いだわけね」

 

その言葉に私は命を見る。

 

「賛さん、蛮竜を借りるわよ」

 

「うん、よろこぶ」

 

この男児は『並行世界の転写』ではなく糸色景の持っていた『未来視』に近い何かを持っているというわけか。成る程、そっちは手合わせ目的か。

 

「境さん、電光丸は持ったわね?」

 

「うん。持ったし、おぼえたよ」

 

緩やかに戦いを始める雰囲気の糸色妙と阿紫花境の事を見る傍ら、私の子供に機巧人形を取り出して遊ぶ命の事を見据える。

 

いつまでも変わらず、傍にいてほしいものだ。

 

 

───からくりと踊り謡う薄命の花のままで在れ。

 

 

-完-

 

 




今回のお話で「からくりサーカス」原作本編およびクロス本編「からくりと踊り謡う薄命の花」はおわりです。

翌日、10時25分ごろに「らんま1/2」編を開始します。時代はまた移り、物語はハチャメチャで慌ただしく何だかんだで恋をする時代。まだまだ糸色景と相楽左之助の子孫や家族の冒険は続いていきます。


ご愛読、ありがとうございました。
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