唐倶利武者の持つ刀は五百年近く昔、ちょうど戦国時代に存在していた刀だと分かり、珍しくて持ってみたいけれど。刃物は危ないから触れない。
……私も走り回ったり運動してみたいな。
「ケホッ、ケホッ…」
お薬を飲んでマスクを着けたパジャマ姿のまま『万病薬』という発明品を作るために私は実験を繰り返す。
この発明品に1パーセントでも希望があるなら試したいし、私も大人になって素敵な恋をしてみたいし、お母さんにもなって、大好きな人と結婚もしたいんです。
本当に万病に効くなら私の身体も治してくれる筈だから、お父様やお母様、しろがねさん、勝君、家族のみんなとも仲良く長生き出来る。
私は大百科のページを読み、お薬の調合手順をしっかりと繰り返す。この本を書いたのは奇天烈斎たる糸色景、私と同じ病気を患っていたご先祖様で、きっと私よりも生きることは大変だったでしょう。
「よし、ちゃんと粉末になった」
カプセル剤の容器に詰め替えて、コクリと『万病薬』を飲み込んでみる。───しかし、私の身体はいつもと変わらず、全身に痛みを感じ、心臓と肺に重く苦しいものを感じ続けている。
また、失敗した。
そう思いながら『万病薬』のページの下を見る。「この薬は万病に効くだろう。しかし、私の病を治すには至らない」と書き綴られている。
「……生きたいなあ……」
ぽつりと言葉が零れる。
小さな頃から友達と遊んだりすることも難しく、病院と家を行き交う生活ばかり。
それは中学生になっても送迎の車が無ければ長距離の移動は出来ず、この前の誘拐事件の時に無茶をして『癒やしの力』を使う反動は強くなり、心肺の痛みは呼吸すら儘ならないものになってしまった。
「高祖母様、貴女はこんなに辛くても生きていたんですか?私みたいに同じ病気を発症するかも知れないと考えて、こんな本を残してくれて……」
嬉しさと悲しさが滅茶苦茶になって混ざり合う感情に悩まされ、『万病薬』の粉末を瓶の中に溢さないように仕舞い、工具は箱の中に戻していく。
その途中であるものを手に取り、構える。
『名刀・電光丸』
大百科に載っている武器の中にあるもので比較的に安全な模造刀。現代風に言ってしまえばスタンガンのように相手を失神させる電圧を纏っている。
ただし、電池式である。
明治時代に電池なんてあったかな?
そう小首を傾げつつ、脇差し程度の長さしかない電光丸は攻撃に反応し、反撃を行う。昔、叔母様の家で糸色家の家宝『蛮竜』を触らせて貰ったときは、みんなビックリしていたけど。
あんな大きいものは持てないよ、女の子だもん。
「当主の証かあ…私も持てたらなあ…」
多分、か弱い私には無理だろうけど。