女の子の尊厳は何とか死守したものの、気持ち悪さに動けずドットーレの腕の中に私は収まっている状態で、逃げることも離れる事も出来ずに膠着状態を作る原因になってしまっている。
「お嬢さん、お手をどうぞ」
「うぷっ、しゅみません」
フラフラと口許を押さえながらドットーレに手を借りて立ち上がった瞬間、お父様の「命、そいつは敵だぞ!」という言葉を聞き、すうっと手を引いて逃げようとしたけれど。あっさりと制服を掴まれて戻される。
逃げることは無理ですね。
「んっ!んーっ!!」
パタパタと手足を動かしてみるもドットーレの力には勝てない。私に何か使えたら良いんですけど、お母様のように格闘技を習っている訳でもない、ひ弱な私には何も出来ない。
「あまり暴れていると潰してしまうぞ?」
「ひぐっ、く、くるしぃッ」
ミシリ、メキッ…!とお腹を締め付けるように腕が内側にめり込み、身体が浮き上がる。息が、出来なくなる。どうにか逃げ出さないと死んじゃう。
「待ってくれ。娘に用があるのだろう、殺してしまったらお前達の用件は聞けなくなる。せめて、娘を傷つけないでほしい」
「ふむ、許可しよう。ただし、俺達のゲームに勝ったらな!」
そうドットーレが宣言したその瞬間、私の身体を掴んでいた彼の手が弾け、私は地面に転がりながら唐倶利武者と四乃森のおじ様に救出された。
一体、なにが?
「呆けるな。愚図、お前は危機感無しの鶏か」
「巓ちゃん?」
じゃあ、さっきのは巓ちゃんが助けてくれたのかと思い、ドットーレの方を向けば真っ黒な長袍を身につけた鳴海お兄さんと戦っていた人がそこにいた。
「オイ。俺がコイツらの相手するのか?」
「お前程度で倒せる糟ばかりだろう。やれ」
「て、巓ちゃん、あの人って……」
私と勝君を狙っていた人なんじゃ?と戸惑いながら、そう問いかけようと彼女の顔を見上げる。特に何も気にしている様子も気配もない。
「アレは私の胸を揉んだ糟だ」
「えっ」
「誤解だ!いや、誤解じゃないけど」
「今も私の身体に邪な念を向けている。そういう感情をここまで深く向けてきた相手は初めてだからな、愉快で愉快で堪らないのだ…!私にそれを知られているから必死に隠しているが、手を見て、足を見て、胸を、尻を、首を、髪を、顔を、何処を見てもあの糟は私に欲情しているんだぞ!私に自分の感情が筒抜けだと分かっているのにっ!」
そう言って私を見つめて笑う巓ちゃんは、いつもよりちょっとだけお姉さんという感じが増していて、私もドキドキとしてしまうような笑顔を向けてくる。
やっぱり、私もあの人に恋しているのかな?
まだ分からないけど。
巓ちゃんを見ているとそう言う風に思えてしまう。