私を助けるために巓ちゃんの連れてきた黒い長袍の男の人の名前は黒賀平助と言うらしく、お父様曰く阿紫花英良のお兄さんと同じ村の出身だそうです。
「人間風情が、
「機械ごときに俺が倒せるかよ。デブ」
そう言うと同時に黒賀平助は地面を踏み締め、虎のように荒々しく豪快に爪手を薙ぎ、ドットーレの顔を叩き殴り、木を削るように顔を砕いた。
ロボットの反応速度を上回る拳打の速さに目を見開き、私はその強さに感心してしまう。人間は鍛え上げるとあんな風に強くなれるんですね。
「フランシーヌ様に頂いた衣装をォ!!」
「
私の身体を掴んだときと同じように両手を伸ばして攻撃を繰り出すドットーレ。───だが、その攻撃する位置を知っているかのように黒賀平助は彼の手を弾き、歯車を毟り千切り取っていく。
「禽拿術。中国拳法では相手の身体を極める関節技の総称ですが、毟る、千切る、引っ掻く、相手の身体を切り裂く技法の総称でもあります」
「四乃森のおじ様、博識ですね」
「友人に、詳しいものがいますので」
「うるさいぞ、蓑虫」
蓑虫?と小首を傾げながら四乃森のおじ様を見上げ、どこが蓑虫になるのだろうと考える。忍者だから蓑虫なのかも知れないけど。
そう思っていると黒賀平助の動きが軽やかに変わり、跳ねる動作と手足を曲げ、払う動作と攻撃が同時に行われているようにも見える。
「猴拳。サルの動きを模倣して使う洪家拳の五形の内のひとつで、形意拳にも似たものがあったはずですが、あちらより動きは素早いですね」
「この人間があっ!」
「人形の動きは読みやすいなあ!」
迸歩刀手。
前へ進む動作と手を振る動作が繋がる。
踏み込みに合わせて真上に弧を描く様に振り抜かれた裏拳がドットーレの顎を殴り、ドットーレの苦し紛れに放たれたパンチを足払いと膝を砕く右の張り手が決まり、ドットーレは右腕以外の関節を粉々に破壊された。
「秋葉、コイツは壊して良いのか?」
「好きにしろ。私は玩具に興味はない」
「くっそおおおおおおおおっ!!!俺は負けない、俺はフランシーヌ様におお仕えする
そう言うとドットーレは残っていた右腕をバネ代わりに弾き上がり、どこかに行ってしまった。まさか逃げたのでしょうか?とお父様を見ると「……どうやら逃げたようだな」と同じことを考えていたようです。