「改めて、黒賀平助だ。宜しく頼む」
「命を誘拐した一員と巓君が一緒に居るのは些か腑に落ちないところもあるが、娘と私を助けてくれた事は感謝する。助かった、ありがとう」
「わ、私もお礼を言いたいです!危ないところを助けていただき、ありがとうございました!その、阿紫花のお兄さんはご健在でしょうか?」
「英良さんなら元気に旅行してるさ」
そう教えて貰えた事に、ほうっと吐息をこぼす私の肩を掴んだお父様の目はグルグルと渦を巻いて、なにか困っているようにも見えた。
「あしはなだの、えいりょうだの、誰の話だ?私の可愛い可愛い愛娘に手出しするウジ虫がいるのか?そうなんだな、よし、殺そう!私と類の大切な娘に手を出す不埒な男は抹殺するべきだ!!」
「お伴致します」
「某も参ろう」
みんなが怒っている理由が分からず、巓ちゃんに近づいて相談するも「悪感情の桁が違うな。気色悪い」と文句を言い、黒賀平助を殴って引きずっていく。
あの二人は仲良し……でいいのかな?
私もあんな風に強気に出れたら良いのにな。と、考えてみるも私は身体が弱いからパンチやキックなんて出来ないし、頑張って走っても体育測定ではいつも最下位、握力だって11kgしかない。
「命、帰ったら母さんを交えて相談だ」
「……でも、お父様は恋愛は自由だって」
「くっ。そうだったな…!」
そう言うと悔しそうに頭を抱えるお父様の大きな背中を擦りつつ、お父様はもう少しだけ私とお母様を守っていたいのだと考えると言い分もよく分かる。
ゆっくりとお父様と一緒に車に戻る途中、私の頭を優しく撫でてくれるお父様は静かに「命の恋路を邪魔するつもりはないさ。ただ、お父さんは良からぬ男に騙されて欲しくないんだ」と真剣に教えてくれた。
「あの、お父様はお母様とどうやってお付き合いをしたんですか?」
「私達の出会いは私がまだ若く悪者に襲われていたとき、類に助けて貰ったのが切っ掛けだよ。彼女の隣に立てるように努力し、彼女の手助けになれたのがお付き合いをする始まりだったかな」
そんなことがあったんですね。
「あの時は苦労したものです」
「ハハハ、あの頃も四乃森は彼女の傍に仕えていたね」
「御庭番衆は糸色家のものなのでね」
お父様と四乃森のおじ様はそんなに昔から仲良くしていたの?と驚きつつ、唐倶利武者を見ても「某の生まれたときは、もっと愛し合う夫婦だったで御座る」と教えてくれた。あの手紙に書かれていたことは事実なんだ。
愛情深い一族というのは本当なんですね。