お父様とお母様の揃った食卓。
数週間ぶりにお二人と揃ってお食事を楽しめるのは嬉しいのですが、どうしてお二人は『娘の恋人候補を査定する会』という弾幕を用意しているのだろうか?
それに、勝君としろがねさんは小学校に用事があると言って、早々に出ていってしまったけど。二人とも、また危ないところにいないでしょうか。
「阿紫花英良。名うての殺し屋、人形遣いとして黒賀の里で随一の実力を誇る反面、金銭によって相手側に寝返る可能性もある。柏崎の調べだとこうね」
「やはり糸色の血筋になるかね」
「あら、貴方は素敵だったわよ?」
お父様とお母様のイチャイチャとした会話を聴きつつ、阿紫花英良のお兄さんが人形遣いとして随一だという事は次郎丸を贈ったのは正解だったと知り、嬉しくて食事を食べる早さが増してしまう。
フフ、嬉しくて仕方ない。
ただ、どうしてお父様とお母様はお兄さんの事を調べているのかは不思議だ。確かに、ほんのちょっぴりだけど。カッコいいし、素敵な男の人だと思ったけど。
「命、お母さんは貴女の恋路は応援するけど。落とすなら徹底的に攻めて行きなさい。私の婚約にも余計な茶々を入れてきたバカはいたけれど。今は大丈夫よ」
「よく分かりませんが、がんばります!」
「お父さんも応援しているが、良からぬ男だったらビンタぐらいしてやりなさい。あと防犯用に道具を買っておくから身に付けるんだよ?」
「もう善治さんったら過保護すぎるわよ」
「そうですっ、もう来年には高校生ですよ?」
私とお母様の言葉にお父様は気恥ずかしそうに笑いながらも食事を終えて、私は勝君としろがねさんの様子を確かめるために、こっそりと屋敷を抜け出す。
怒られるのは怖いけど。
大事なお姉さんと弟を見守りに行くだけだから何も危ないことに巻き込まれる訳じゃない。そう自分に言い聞かせて、ふらふらと覚束ない足取りで街灯に照らされた道を歩いていると唐倶利武者が刀を揺らす。
「誰かいるの?」
「お、オレ達は悪者じゃねえぞ!」
「そうだ、見回りの警備員だ!」
私はその言葉に、ほうっと安堵の息を吐いて唐倶利武者に「学校を守っている人です」と教えてあげれば、唐倶利武者も「某と同じく守護の役目を担うもので御座るか」と納得してくれた。
「最近の警備員さんは頭に布を被るんですね」
「お、おうよ!」
「イカすだろ!?」
いかす?
「どうすんだよ、なんか信じちゃったぞ」
「知るかよ、でも良いとこのお嬢様っぽいぜ」
ヒソヒソと小さな声で話し始めた二人に小首を傾げながら恰幅の良い三人目の警備員さんに「なにかあったんですか?」と聞こうとしたその時、ものすごい音と悲鳴が聴こえてきた。