塀をよじ登って小学校を覗く警備員さん達のように手を伸ばすも手は届かず、ジャンプしても塀の上には届かなくて目尻に涙を溜めて唐倶利武者を見る。
「某は壁を走れるで御座るよ」
「ありがとう、唐倶利武者」
お姫様抱っこをするように私を抱き上げた唐倶利武者は小学校の塀を車輪を擦り付けるように登り、私は薄暗い夜中の校庭で争うしろがねさんと勝君、他の小学生を襲う人達に驚く。
「唐倶利武者っ!!」
「御意!」
私の呼び掛けに瞬時に察してくれた唐倶利武者は警備員さんに私を預け、左腰に佩いていた刀を引き抜き、しろがねさんを助太刀するように左切り上げを放ち、人形の顔を半分に切り裂く。
「な、なんだよありゃ」
「人形遣いの戦いです」
「人形使い?」
「はい。あちらの銀色の髪のお姉さんは味方で、あっちの顔を隠しているのは敵です。警備員さん達にもお願いできますか?」
「出来ますかってお前」
「馬鹿野郎、オレらみたいな素人が割り込んだら銀色のお嬢ちゃんは負けるかも知れねえだろ。さっきの侍人形がいったんだ、それで問題ないはずだ」
一番歳上の警備員さんがそう言うなら下手に動かず、見守る方が大切ですね。そう私も納得してしろがねさんと共闘する唐倶利武者の動きは美しく洗練され、剣技の冴えも頗る良好だと分かる。
彼の流儀は「真古流」という数多の日本剣術の極意や秘伝を吸収した、あらゆる剣術をベースとした超攻撃型の機巧人形だ。私の命令と忠義を失わなければ問題なく戦い続ける糸色家の戦えない人を守る侍大将。
その誉れこそが唐倶利武者の動力源────。
「ちぃっ!!鬱陶しい人形だね!」
「お主も人形を使っておるではないか!」
「私は良いのよ、私はッ!!」
「隙を見せたな、あるるかんっ!」
その掛け声と共に片腕のない黒い人形「あるるかん」が悪い人の人形を破壊しようとした刹那、子供の悲鳴で二人は動けなくなってしまった。
私も完全に見落としていた。
相手は複数人、人形遣い。それらを合わせると相手の数は四人を越えている。警備員さんたちを送り込まなくて本当に良かったと安堵する反面、しろがねさんと唐倶利武者は子供を守るために戦えない。
強いからこそ心配なんだ。
「わたっ」
「静かに!騒いだらバレる!」
いきなり口許を押さえつけてきた事にビックリしながらも心配してくれた事にうなずき、警備員さんたちにお礼を言って、しろがねさんと唐倶利武者、勝君を助けるために注意を引き付ける準備を始める。