お父様とお母様のお二人も勝君としろがねさんの旅立ちを許し、私は数ヶ月の間だけ過ごしたお姉さんと弟の部屋を静かに眺める。
何も無くなった部屋の床に座って、ぼんやりと二人と過ごすことの出来た日々を思い出す。でも、私は病院と家を往復して数時間ほど会えれば良い程度だった上、二人の事を深く知っている訳じゃない。
ふと、とある物を思い出した。
阿紫花英良のお兄さんに手渡された黒賀に繋がる電話番号。これを使えば勝君としろがねさんに関わる事を、人形のことも調べることが出来る!
それならば、と私はお父様の書斎へ向かう。
「お父様、私も夏休みに入りましたので少しだけご相談があります!阿紫花英良さんのところに行かせて欲しいのです!!」
「……類、私は疲れているようだ。14歳の愛娘が男の家に行きたいと父親に直談判してくるなんて妄想や悪夢では答えようがない」
「お母様はお仕事ですよ?」
「ああ、そうだったね。命、お前は私の大事で大切な愛娘だ。その愛娘を数日知り合った程度の男に送り出せとお前は言うんだね?」
「はい!」
お父様の叱咤激励に力強く私は頷き、深い溜め息を吐いて電話を掛け始めてくれたお父様の優しさに笑顔がこぼれてしまう。やはりお父様はいつでも私の味方で居てくれるんですね!
そう思いながらお父様の優しさに感動していると唐倶利武者が書斎の扉を開け、私に手紙を差し出してきた。……要約すると目覚めていない仲間を起こしに行き、私のために兵を集めてくるそうだ。
「この様な御無礼をお許し下さいませ」
「フフ、良いんですよ。唐倶利武者、あなたの仲間を全員起こしてまた私のところに戻ってきてください。それだけで十分ですから」
「……感謝致します、姫君」
そう言うと唐倶利武者も屋敷を出ていってしまい、私はまた寂しい気持ちになりながら、お父様の「許可を取れた。明日、迎えに来るそうだよ」と教えてくれた。
明日、阿紫花のお兄さんに会える。
そうしたら、また勝君としろがねさんの事を追いかけることも追い付くことも一緒に戦うことだって出来るかも知れないんだ。
「フフ、フフフ、フフフフフ……!」
「おお、お妙さんと会話しているときの類のように昂っている。まあ、従姉妹だから当然なのかも知れないが、母娘は良く似ているものだ」
なにかお父様が言っているけれど。
今は発明品を沢山作って、私も戦えるように準備しなければいけないのです!「いざや、心行くまで仕合おうぞ!」と不破のお兄さんも言っていましたから合っているはずです!