【完結】からくりと踊り謡う薄命の花   作:SUN'S

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仕立て屋へようこそ 急

地下施設の通路を走る車は振動や揺れを起こす事はなく、私は安心して背もたれに身体を預け、気持ち悪さと吐き気、酔いの苦しさを我慢する。

 

私の隣に座っているレッシュさんの視線も気になってしまい、静かに眠ることも出来ず、私は悩ましげに口許にハンカチを添える。

 

「ミコト、余り無理するのは却って危険だ」

 

「ちょいと銀髪の兄さん、お嬢さんに手出しするのは止めてくれますかい?その子は大事な大事なあたしのものなんですぜ」

 

「そんな、大事だなんて…♪︎」

 

阿紫花のお兄さんに大事だと言われた瞬間、とても嬉しくて幸せな気持ちになる。その様子を見ていたレッシュさんは「やっぱりミコトのダメな男に惹かれるのは遺伝だな」と、よく分からないことを呟いた。

 

私は悪い人を好きになった訳じゃないですよ?

 

そう思いながら彼を方を向けば「ママン、僕は野蛮なイノシシマンと煙草臭いテナガザルとやっていけるかな」なんてロケットペンダントに話し掛けている。

 

カッコいいのに、残念な人ですね。本条のおば様が好きそうな顔立ちと、巻町のお姉さんが好きになりそうな美形なのにレッシュさんは残念な人です。

 

フランスは、こういう人は多いのでしょうか?

 

「───っと、渋滞だな」

 

「ゔっ」

 

「ワルい、揺らしちまったか?」

 

「へ、へいきです」

 

私は突然の揺れに思わず口許を両の手で押さえ、鳴海お兄さんの謝罪を受け入れながら窓の外を見るとお巡りさんの格好をした人達が車を一つずつ確かめている。

 

「検問か」

 

「そりゃあホテルが爆発したんですぜ」

 

「やったのはお前らだろ!?」

 

「壁を壊したのはナルミ、お前だろう」

 

私は隠れていただけで、何もしていないです。

 

「少し良いかね」

 

「わ、私ですか?」

 

運転席の鳴海お兄さんではなく私に話し掛けてきた事に戸惑いつつ、窓を開けようとしたその時、レッシュさんの手が私の手を覆うように止める。

 

「警察に化けるのは良い手だが、帽子を忘れているぞ。ナルミ、押しきれ!」

 

「これで指名手配されたら恨むぞぉ~っ!!」

 

そう言い合いながら鳴海お兄さんが車のアクセルを踏み込んだ瞬間、グンッと身体が背もたれに押し込まれ、物凄く速い車の動きに口許を両の手で塞ぎ、ガタガタと揺れる車体の気持ち悪さに吐き気を催す。

 

「お嬢さん、辛抱してくださいよ!」

 

「ギイ!何処に行きゃ良いんだ!」

 

「兎に角、今は真っ直ぐ走れ!」

 

喧々囂々と騒ぐ彼らと同じ車内にいるから、私は女の子の尊厳を吐き出さないように必死に我慢しながら顔色を悪くするのでした。

 

 

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