何処まで走っていたのかは分からないけれど。私が吐き気に負けて気を失っている間に、無事にお巡りさんの格好をしていた
「目的地には着いたんですか?」
「いや、今回の奴らは検問や交通規制を利用して僕達を足止めしようとしていた。おそらく才賀と糸色の血を引く君を狙っているのだろう」
「その言い方ですとあの人形共はハナっからお嬢さんの身柄を狙っているように聞こえやすが、ひょっとして銀髪の兄さんも狙っている組織の一つですかい?」
「ギイ、お前はいけ好かねえヤツだ。ここでハッキリと教えろよ。お前の言う目的地ってのと、命は何か関係でもあるのか?」
鳴海お兄さんと阿紫花のお兄さんの二人に詰め寄られて溜め息を吐くレッシュさん。彼は静かに旅行鞄の傍を離れ、敵意の無いことを示す。
人形遣いにとって人形は命その物だ。
その人形の傍を離れた彼の視線は私に向いている。
彼の善悪を判断する権利を、みんなが私に委ねているという状況に戸惑いつつ、ゆっくりと「私は味方だと思います。狙っていたなら、もう拐われるか殺されています」と思った事を素直に話す。
「忠臣倉、私の荷物を出してくれる?」
そう言って気を失っていた私の事を守ってくれていた忠臣倉に話し掛けると身体の真ん中に存在する観音開きの門を開け、トランクケースを出してくれる。
着替えは全部あるけど。
みんなの服はあのホテルに残してしまっていて、他に着替える場所もないですし、こんな雑木林の近くに停車しているのだから宿泊施設は望めない。
「しかし、どうします。車のガソリンは極僅か。走るか歩くにしても小柄なお嬢さんはあたしらみたいに長時間は無理でしょう」
「その問題は体格ではなくミコトの心肺器官の方を優先するようにしておけ。彼女は佇まいや態度こそ平静を装っているが、 浅く掠れた呼吸を繰り返している」
「……女の子の秘密を暴くのは悪いことです」
私はレッシュさんに苦言を伝えながら車外に出ていく三人に背中を向け、シャカシャカと吸入器を軽く振り、口許に添えてお薬を吸飲する。
「(ホテルに宿泊するのは無理そうだし、発明品の一つを使って安全に過ごす事を提案するべきなんでしょうが、いきなり旅行先で知り合った殿方三人と寝食を共にするのは破廉恥なのでは?)」
ほんの少しだけ不安を募らせながら忠臣倉を縫いぐるみのように抱き締め、四次元ポケットに仕舞っていた発明品の『キャンピングハット』を取り出す。
「……今、腹から出さなかったか?」
「ポケットですよ?鳴海お兄さん」
私は小首を傾げながら訂正し、ポチッとスイッチを押して見る見る内に大きくなっていくキャンピングハットを見上げ、無事に作動した事に安堵する。
もっと色合いを変えたかったんですけど。