まるで清流の様に緩やかに動き、力強く大地を踏み締める様に構えた鳴海お兄さんに手を伸ばす
「うひゃあ、えげつない崩拳でさあ」
「ほうけん?」
「えぇ、中国拳法の技の一つで『半歩崩拳、あまねく天下を打つ』なんていう諺を残す技だそうで。あたしは蹴りで足をへし折られましたが、あのまま戦ってたら確実にああなってましたね」
それは黒賀平助の事だろうか?と小首を傾げながら、スゥッ…!と息を吸い込み、更に深く力強く踏み込んだ彼は真っ直ぐ天に向かって蹴りを放つように右足を振り上げ、
その動きと連動するように続けざまに踵落としを繰り出し、両腕を握り締めながら胸の前に揃えて構え、伸びる無数の手を払いのける。
「わ、わっ!」
あまりにも危ない動きと技に顔を手で覆いながら不安げに鳴海お兄さんの戦いを見守っている途中、彼の左腕に大きな刃物が飛び出して
「ちぇっ。結局、戦っちまったじゃねえかよ」
「すごい!すごかったです!」
悔しそうに頭を後ろを右手で掻く鳴海お兄さんに私は駆け寄って、鳴海お兄さんのパンチやキックが物凄く格好良かったことを伝える。
「あらら、浮気ですかい?お嬢さん」
「へ?ち、ちがいます!私は純粋に鳴海お兄さんが格好良かったから褒めているだけで、そんなつもりはないんですよ?!」
「なら、差別化しやしょう。あたしの事は気軽に英良って呼んで良いんですぜ」
「お、男の人を呼び捨てなんて…!」
「おや。あたしに全部くれるんでしょう?」
ニヤリと笑う阿紫花のお兄さんの言葉に恥ずかしさと不安を抱き、スカートを握って顔が熱くて頭の中に彼の名前がグルグルと回っているのがわかった。
「ぷっ、くく、冗談ですよ。そんだけ緊張がほぐれたなら大丈夫でしょう。兄さん方、屋敷に突入するときはあたしも混ぜて貰いますぜ」
「勝手にしろ。あと子供を泣かせるな」
「僕も同感だ。女の子は労り、慈しむものだ」
「ありゃあ、手酷い指摘で」
にへらと笑って鳴海お兄さんやレッシュさんと一緒に向かっていく彼の顔に思わず、からかわれたんだと気付き、恥ずかしさよりも悔しさが勝った。
「わ、私を何だと思ってっ、英良さんのばかぁ!」
そう言って私は忠臣倉を抱き締めて空に飛び上がってしまった。うぅ、グスッ、私はこんなに好きなのに、子供だからってからかうのは酷すぎます……。