数日ほど休んだ私達はローエンシュタイン大公国に移動し、阿紫花のお兄さんは仕事の依頼を受け、一時的に帰国することになってしまいました。
その依頼というのは私の身体を蝕む病を和らげるお薬の運送であり、ここ数日の出来事で沢山のお薬を飲んでしまった影響でもある。
もっと気を付けて使わないとダメですね。
「ギイ、診察に託つけて私の友人の子供に淫らな真似をしたら指を切り落とすからね」
「フッ、このギイ・クリストフ・レッシュが大事な患者の診察に不貞行為を働くと思っているのか。ルシール、僕は医者なんだぞ?」
「俺は外に出てて、適当に時間を潰してくるぜ。流石に女の診察を見るわけにはいかねえからな」
「チョンマゲイノシシの癖に紳士的じゃないか」
「うるせぇよ!」
三人とも私の事を心配してくれている事実に嬉しくなるものの、やっぱり申し訳ない気持ちになる。忠臣倉も傷付いて壊れたパーツは直したけれど。
また私を守るために無茶をしそうなんです。
「宜しくお願いします」
「ああ」
ゆっくりと聴診器を胸に当てて心音や肺の音を聴くレッシュさんの顔付きは涼やかなままで、背中を向けて深呼吸を繰り返す度に冷たい聴診器が背中に触れる。
「やはり異常は無い」
「フフ、そうでしょうね」
セーラー服を着直して、レッシュさんの言葉に頷いてスカーフを襟元に通す。
私の患っている病気は身体的に身体を蝕んでいる訳ではなく、本当に病を患っているのかも分からない。むしろ健康的な肉体なのに異常に身体能力は低く、走ることも儘ならないんです。
「ゾナハ病でもないな」
「前にも言ったが糸色の血筋はゾナハ病を発症する事はないよ。糸色景もゾナハ病の銀の煙を受けたが燃えるように銀は消えてしまった」
「知っているさ。僕も一緒に居たんだ」
そう言うとレッシュさんは椅子から立ち上がり、静かに窓の近くに移動するとスーツの中に仕舞っていた古びた紙。写真や絵の類いを取り出して眺めている。
「ママンに似た優しい女性だった」
「女系の家系ということも相俟って、ミコトの顔はあの子に良く似ているのさ。だからこそフランシーヌ人形もまたお前や日本に居る娘を狙うだろう」
「……フフ、巓ちゃんを掴まえるのは無理ですよ。彼女は現時点の世界で最も強くて綺麗で、次期当主なんて噂されているんです」
糸色当主の証「蛮竜」。
私も触れたけど、アレを使えるのは巓ちゃんです。私は何か熱のような物を感じたけれど。お母様も妙叔母様も教えてくれなかった。