診療所の先生にお礼を言い、私達は鳴海お兄さんの家に向かうことになりました。携帯電話でお話しするお父様はいつもの優しい雰囲気ではなく仕事中の真摯で真面目な雰囲気になり、とても格好良かったです。
「狭くて悪いが、上がってくれ」
「お、お邪魔します」
「失礼致します」
「お坊っちゃま、お手を」
「ありがとう、しろがね」
私もお姉ちゃんなのに何だかしろがねさんのほうがお姉さんに見えてしまいます。やはり、私だとお姉ちゃんになれないのでしょうか?
「ケホッ…」
そう一抹の不安を抱えながらドレッサー、こういうときは洗面台と言う場所をお借りして、手荒いと嗽をさせてもらう。手持ちの曜日毎に分けたお薬を飲み、口許の水気をハンカチで拭き取る。
ふと、視線を感じて後ろに振り返ると勝君がいた。
「えと、命さん?」
「はい。命ですよ、どうしましたか?」
「その、さっきも咳してたから大丈夫かなって」
「フフ、心配してくれてありがとう」
まだ会って十数分も経っていない私の事を心配してくれた勝君の優しさに胸の奥がポカポカと熱くなる思いを感じながら、彼の腕に出来た傷に手のひらを翳し、ゆっくりと『癒やしの力』を使用する。
お母様のように他者の身体に翳しただけで全治全快を施すことは出来ませんけど。私だって糸色の血を引いているんです、少しくらい未来のために役立ちたい。
「ゲホッ…げほッ、ゴホッ」
「も、もう良いよ!?ほら、治ってる!」
「……ああ、それなら良かったです」
ほうっと安堵の吐息をこぼす。
「命さんの傷を治す力って、いったい何なの?」
「わたしの、力ですか?」
「うん」
ゆっくりと吸入器でお薬を飲み、ズキズキと痛む自分の胸を押さえながら勝君の質問を呟くように復唱し、自分の手のひらを見つめる。
遡る事、明治時代。
糸色家の繁栄の近代祖とも言われる糸色景様はお母様や私のように神通力を有し、千里眼や未来視など多彩な能力を持っていたようです。
そして、彼女の子供達にも能力は遺伝していた。糸色後は他者を惹き付け、包み込める大空の様な存在であり、妖怪を使役する百鬼夜行の総大将だったそうです。
その糸色後の妹───つまり、私の高祖母様はお母様や私のように人の傷を癒やす神通力を持ち、私みたいに使う度に吐血したり、心臓や肺に痛みを感じることはなかったらしいです。
「───以上が、私の異能のお話しです」
「いとしきって、すごいんだね」
「フフ、そうですね」
もう一つだけ付け加えると、私は糸色景様の患っていたという病気を隔世遺伝的に再発し、もっと言えば当時の病気より酷いものになっているということです。