【完結】からくりと踊り謡う薄命の花   作:SUN'S

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巓様の視点になります。

場所は日本に戻る────。




お姫様を助けて 急

伊豆。

 

私は命の頼みと羽虫の懇願を聴き、致し方無く才賀勝と才賀しろがねという命の優しさを踏みにじった愚物共の現状を確かめるためにやって来ている。

 

あれほど優しく愛情を受けていたというのに、何故そうも簡単に愛情を捨てて、命や類の傍を離れようと考えるのだろうか。私ならば絶対に離れない。

 

「……おい、もっと優しく運転しろ」

 

「ものすんごい安全運転だぞ」

 

私の言葉に生意気に偉そうに反論する黒賀平助に軽く舌打ちをする。人間に生まれ変われた事は嬉しく至上の幸福と言えるだろう。

 

しかし、この乗り物酔いには慣れない。

 

私の事を真に慈しみ、優しさをくれた糸色景(いとしき けい)も、私を娘として愛する糸色妙(いとしき たえ)も、百年の友たる糸色後(いとしき しとり)も、私を癒やした糸色偏(いとしき ひとえ)も、そして糸色巓(わたし)に友をくれた糸色類(いとしき るい)も、ずっと見守っていた糸色命(いとしき みこと)も、この苦しさと気持ち悪さに耐えていた。

 

何とも不愉快な体質だ。

 

「辛いなら車止めるか?」

 

「……いい、目的地は直ぐそこだ」

 

スンと鼻を鳴らす。

 

白面の者としての力のほぼ全てを失っているが、最後の一尾と共に私は愛する秋葉妙(かあさま)の身体の中に入ったため、シャガクシャ以上の妖気はまだ残っている上、黒賀平助の感情を喰らえば力は戻ってくる。

 

「勝って彼処の子供か?」

 

「アレだろうな、命が良く話していた」

 

そう言うと私はシートベルトを外して車の外に出た瞬間、今の状態で出せる殺気を銀髪の愚物にぶつけた刹那、逆方向からナイフが飛んできた。

 

どうやら別の糟も釣れたみたいだな。

 

「和服美女!!」

 

「お姉さん、サーカスに興味ない!?」

 

「囀ずるな。糟共」

 

見せかけの筋肉。いや、ある種の芸に秀でた筋肉を見せつけてくる糟を押し退け、私は銀髪の女と童を見下ろす。命の優しさと愛を受けていた者達だ。

 

「みこと、さん?」

 

「違う。私は秋葉巓、今は糸色巓と名乗ろうか」

 

「糸色ッ、お前達が日本の自動人形(オートマータ)の創造主か」

 

「あんなガラクタを作っていたのは百年前の糸色景(かのじょ)にすり寄っていた羽虫だ。チッ。忌々しい存在だが、アレは何かと便利だからな」

 

それに糸色景(かのじょ)を覚えているのは私とアイツだけだ。

 

どれだけ取り繕ったところで彼女の想い出を語らえる者が消えるのは悲しく寂しい。白面の者だった頃には有り得ない悲観的な考え方だ。

 

本当に面倒な事になってしまった。

 

 

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