ローエンシュタイン大公国の公女様、エリ・アダム・ドゥ・ランベール・ティロームの身体の中に埋まっている可能性のあった「柔らかい石」は無かったみたいです。
少し残念そうにしながらも検査を終えて、気晴らしのために理髪店で髪の毛を短く切り揃えた彼女と一緒に私達は町を歩く。
その時、ズドンッ!と凄い音が聴こえてきた。そちらに顔を向けると噴水の縁に立て掛けたサンドバッグに向かってパンチを撃ち込んでいる鳴海お兄さんがいた。
やっぱり私も筋トレを始めた方が良いかな?なんて思いながら彼の事を見つめていると「私にも、それの叩き方を教えて下さい」と呟いた。
「アンタが……っ、すっごい意外だな」
「私だって怒りたいときはあります」
私は、みんなが優しくしてくれるから勝手に怒るなんて出来ないな。ずっと迷惑を掛けて来ているし、子供の頃はいつ倒れて入院するのかも分からなかった。
いつも死ぬんじゃないかと夜は怖くてお母様に泣きついて、お二人のお仕事を邪魔していたのに、お父様とお母様は嫌な顔もせずに私を愛してくれる。
その優しさと愛情に私は答えたいのです。
「へえ、いいスジしてるっすよ」
「ほ、ほんとうに?」
「俺は嘘は言わない主義だ」
「嬉しい」
自分の手を見つめて微笑んだ公女様の顔に鳴海お兄さんの顔が赤くなっているのが見え、しろがねさんやあの先生だけじゃなくて公女様にも惚れちゃうのは、流石にダメだと思います。
「鳴海お兄さん、浮気は」
そう注意しようとした瞬間、私は肩を掴まれ、口許に何かを押し付けられてしまった。みんなが居るのに、誰も気づいていないッ…!?
慌てて手を外そうとするも動かせず、クラクラと頭の中がふやけて視界がぐにゃぐにゃになってくる。刑事ドラマで良く見るお薬を染み込ませたものだ。
しかし、遅効性の薬品を染み込ませているハンカチを使っているのか。私の意識は残ったまま、身体だけが重くなってくる。
まさか麻酔を染み込ませて吸引させているの?と理解したときには遅かったらしく、手に持っていた電光丸を抜くことも出来ず、私は車のトランクに手足を縛られて押し込まれてしまった。
「(……瞬きをしない?)」
そんな疑問を抱きながら私は叫び声、鳴海お兄さんがレッシュさんに詰め寄っている声を聴きつつ、麻酔の影響でぼんやりとし始める。
逃げないといけないのに、逃げられない。
「(忠臣倉はルシールおばあさんと一緒にいるから、本当に大変な事になってしまいました。いえ、まあ、誘拐には慣れていますけれど)」
まさか外国でも同じことが起こるなんて予想外です。
【概要用語解説】
本作の単語や転生者、その親族を解説します。
【挿絵表示】
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【
本名「才賀命」。繋ぎ読み「
年齢は15歳。身長149cm。
「さよなら絶望先生」および「るろうに剣心」および「からくりサーカス」に登場する御三家のハイブリットな血筋を受け継ぎ、生誕した現地人。「糸色景」の神通力を色濃く「糸色偏」の曾孫「糸色類」と「才賀善治」の娘であり、才賀と糸色の才能を受け継ぐ。
「糸色景」の患っていた原因不明の病を隔世遺伝で発症し、子供の頃は入退院を繰り返していたため、自分に対する生死観はズレてしまっている。ニュートンアップル女学院の中等部に通っており、成績は常に学年一位。運動音痴では無いものの、病気のため体育系は最下位。
阿紫花英良に一目惚れしてしまい、現在は少女漫画や恋愛小説を参考書にしながら奮闘しているものの、子供扱いから抜け出せていない現状に不満を抱きつつ、優しく扱ってくれる現在に満足もしている。