すっかり夜も更けてしまい、勝君を連れて一緒に帰りたかったけれど。お父様に「もう少しだけ加藤君としろがねさんと一緒に居させてあげよう。それに押し掛けて一方的に要求するのは良くないからね」と諭してくれた。
お父様の言いたいことは分かります。だって、私も知らない人の子供になれと言われたら、直ぐに受け入れることは出来ないですし、きっと不安になります。
「お迎えありがとうございます。勝君、また会いに来ますね、しろがねさんも鳴海お兄さんもまた会いましょうね。お休みなさい」
「おう。気を付けてな」
「ご助力、感謝します」
「またね、おやすみなさい」
三人に手を振って挨拶を済ませて、私は車の後部座席に座り、乗り物酔いしても良いようにお薬を飲み、ゆっくりと人工皮革の背もたれに身体を預ける。
お父様は助手席に座り、シートベルトをカチリとロックし、規則正しく交通ルールを守っています。私もシートベルトを身に付けて、車の窓ガラス越しに三人にもう一度手を振る。
ゆっくりと移動を始める車の揺れで直ぐに酔いはじめてしまい、「うぅ、いつまでも乗り物には慣れませんね」と気分を悪くしながらもお迎えに来てくれた運転手のおじ様を見る。
今日はもう四乃森のおじ様はお休みしているらしく、初めて会うお兄さんが運転席に座り、真っ暗な夜の道路をサングラスを掛けて運転しています。
「……君、道を逸れているぞ」
「ああ、すみません。何分、初めて通る道なんで」
お父様がそう言うと運転手のお兄さんは軽く謝ったものの、そのまま車の向きを変えず、走り続けている。ちょっとした違和感を感じながら、お父様を見るとお兄さんの事をまじまじと見つめている。
「私の記憶違いで無ければ君を雇った覚えはない。四乃森や他の運転手はどうした」
「お、お父様?」
剣呑な雰囲気になり始めた車内に不安になりながらお父様の事を呼んだその時、ガコンッ…!と人気の少なく街灯も殆んど無い道路の真ん中でいきなり停車し、運転手のお兄さんはお父様と私を一別した。
「まさか社員の顔を覚えてるとはな。アンタは良い社長なんだろうが、此方も仕事なんだ。お宅の子供の力をどうしても欲しがるヤツがいるのさ」
「逃げなさい!!」
お父様の怒鳴るような、その言葉を皮切りに私はシートベルトを外し、車のドアを開けて外に飛び出した瞬間、しろがねさんやロングコートのお兄さんが使っていたような人形が私の事を押さえ付け、肺の中が全て出てしまう。
「かはっ…!」
「オイ。傷付けるなよな」
ミシミシと身体中の骨を締め上げるような痛みに涙が溢れ、掠れていく意識の中、お父様が私の名前を呼ぶ声が僅かに聴こえ……。