「さあ、皆さまお立ち会い。運命の歯車に巻き込まれ始めた才賀命の歩み『からくり編』は、いかがだったでしょうか?」
「百年前、
「歯車が糸を手繰るがごとく、彼女は────」
「長の口上失礼つかまつりました。只今より始まるのは、かつて大妖怪“白面の者の魂”を宿す糸色妙が娘、秋葉巓の歩み『サーカス編』の開幕でございます」
サーカスの妖狐 序
仲町サーカス。
命の愛を裏切って宿り木に据えるには明らかに役不足な場所で笑う才賀勝としろがねを見つめる。無駄に筋肉の付いた糟共は何か言っているが、何をしているのかよく分からないが猿の求愛行動に興味は無い。
「巓、荷物運び手伝ってくれよ」
「断る。私は“
私の名前を呼ぶ黒賀平助に言葉を返し、白と黒の混ざった髪の毛を日傘のように束ねて頭上に広げ、大きな車の荷台に腰掛けたまま告げる。
そも私は羽虫に言われて仕方なく来ているだけだ。本来であれば私は愛する
───だと言うのに、
そういうものは婚姻し、夫婦になってからだ。
今時の若者は直ぐに色恋に現を抜かして、私の通う女学院の高等部も校外に恋仲を作っていたりと不健全だ。私は飼い主、黒賀平助は飼い犬だ。
その言葉以外に例えるつもりはない。
「いくら日陰でも髪だろ。ほら、水分補給しとけ」
「……フン」
私にペットボトルを差し出す黒賀平助は当たり前のように私の隣に腰掛け、分厚い腕の筋肉や首筋、頬を伝う汗を拭いもせず、ゴクリと冷たい飲み物を飲んだ。
分厚くガッシリとした強靭に太ましい筋肉質な身体。相手の事を殴り、砕くために鍛え上げた四肢の強さ。人間に生まれ変わってから出会ってきた男と違って、黒賀平助の肉体は一種の芸術とも言える。
故に、非常に不愉快だ。
「おい、おーい?」
「 ……き、きさまッ、勝手に寄るな…!」
「イデッ!?んだよ、心配しただけだろ」
いきなり身体を寄せるように覗き込んできた男にビクリと身体が震え、思わず私は全力で髪の毛を使って吹き飛ばしてしまった。
きゅっと胸の前で手を握ってしまう。
「(なんだ、これは?)」
しかし、無傷のまま不貞腐れる黒賀平助をほうっと安堵を……無視して、私は車の荷台を降りて才賀勝としろがねの二人を見る。命の事を悲しませていた癖に、ずいぶんと楽しそうに過ごしている。
「(……くだらない。私は我の愛す者を……)」
いや、アイツは無関係だ。
そも勝手に人の心に立ち入るな、不埒者め。
なんなんだ、アイツは……!