ヴィルマ・ソーン、不破政虎の二人組の刺客を無視して帰った私達を心配する才賀勝としろがね達と軽く言葉を交わして、サーカスの公演を行うために準備を進めていく。私の艶やかな黒の御髪と白露のごとき御髪を同時に操る妖術も演目に入っているのは不満だ。
だが、これも命の頼みだ。
私も人として生まれたのだから信じてやろう。もっとも笑い者になるつもりはないが、ヴィルマの小柄術は少なくとも演目に加わるには適していた。
「巓、アイツらなんてどうだ?」
「私に言うな。お前が言えば良いだろう」
そう言って黒賀平助を見上げて、直ぐに視線を逸らしたところを見ていた仲町の息子がニヤニヤと笑って黒賀平助と肩組みを行い、腹を叩いている。
まあ、私は全身を巻き付けたけれど。
「テン、何かあったのか?」
「ああ、少し使える二人を見つけた。しろがねも昼間に話していた奴らだ。少なくとも女の方は頼めば引き込めるだろうが、男の方は止めておけ。死臭がする」
「お前も感じていたか」
「当然だろう。私は……いや、違うか」
もう白面の者ではないからな。人間に生まれてから十七年ほど過ごしているが、些か妖怪としての価値観を正すときが来たのだろう。
「(糸色景の血によるものなのだろうが、私の愛する
もっとも私は私を襲ってきた男を好いてしまっているが、どうにも放っておけないコイツの態度も悪いと思っているし。なにより悪感情の多さも好ましい。
「嬢ちゃん、此方に来てくれ」
「なんだ?」
「勝手に演目に組み込んだのは悪かったな。だが、その髪の毛を自由に動かせるってのは客引きに使えるし、何よりアンタの顔は誰もが振り返る美人だ」
「フン、世辞を聴くつもりはない。───だが、そうだな。才賀としろがねが満足するなら私も構わない。それに生まれ変わった意味も見つけた」
「六十も生きてねえのに生まれ変わりなんざ言うもんじゃねえぞぉ?まあ、嬢ちゃんのおかげで不思議と活力はあるからな!」
それは命の道具のおかげだ。私は飴玉やお菓子を取り寄せるバッグを貰っただけで、大して凄い事をしているわけではない。
「あそこの羽虫に言っておけ」
「はむし?また、あのストーカー野郎か!」
怒りを露にして駆け出す仲町の背中を眺めつつ、私の隣にやって来た羽虫を睨み付ける。黒賀平助に御鬼輪を渡したのもコイツだ。
「巓君、君の成長は素晴らしいね。しかし、あの態度はNonsenseだ。あれでは平助君が離れてしまうかもしれない」
「何を言っているんだ?あの男はもう私の物だろう、胸を掴み、夜の林で押さえつけてきた時点でアイツは責任を取るつもりだった筈だ」
そうでなければ許さん。