しろがねとヴィルマ・ソーンがいきなり戦い出した事に呆れ気味に溜め息を吐きつつ、私は才賀勝が気付かないようにフォローをしてやる。
これもまた“すぽんさあ”としての役割だ。
もっとも私の事を見つめる変わった視線も増えてきている。蒼月潮やシャガクシャと戦っているときにも感じた。嫌な気配の元を睨み付ける。
「誰だ、お前は」
「私の名前はパンタローネ、
まるで自分の方が優れているかのように喋っている緑色の服を着た木偶を見る。木製の肢体、身体の中を回る歯車の軋み、手の挙動で空気の流れが変わる。
鎌鼬や鞭の類いに似ているが、強さは劣る。そも只の木偶に
「来い。遊んでやろう、
右腕を振り抜いて、糸色本家の武具倉に仕舞われていた妖気を纏う薙刀「含牙戴角」を構える。本来なら髪だけで十分な相手だが、慈悲ぐらい与えるのが人だ。
「ただの棒切れで私が倒せると?」
「自惚れるな、木偶。お前ごときに含牙戴角の刃を使うわけがないだろう?お前は存在その物が粉々に消し飛べば良いだけだ」
そう言ってやった刹那、空気の弾丸を放ってきた。普通の人間なら一撃は貰うかもしれないな。もっとも私は白面の者の生まれ変わり、妖気の障壁を張ることも未だに可能な力は残っている。
「冥道残月破」
カンと石突きを地面に叩きつけ、無駄な足掻きを行う前にあの世に送ってやろうとする私の慈悲を裏切り、木偶は漆黒の満月から炸裂する風を利用して逃げる。
やはり人には成り得ないゴミだな。
「……逃げたか…」
まだ私の事を監視する視線は感じるが、大して脅威になる相手は存在しない。命なら手こずるだろうが、アイツも糸色景の血筋だ。
それなりに彼女の力を受け継いでいる。
当の本人は蛮竜に認められていることにも気付いていないが、本当はアイツは面白い従姉妹だ。普通に考えれば拒まれないのだから持てば良いものを。
その気になれば相楽左之助の怪力も使えるというのに無自覚に力を抑え込み過ぎている。あれでは狙ってくれと言っているようなものだ。
「巓、何かあったのか!?」
「何も無い」
「いや、あるだろ。地面抉れてるぞ」
「……フン、木偶に襲われただけだ」
私の事を心配する眼差しは悪くないと思う。