「才賀、人間は落とし物じゃない」
「で、でも、倒れていたから!」
「嬢ちゃん、そう怒ってやるな。オレらも怪我人をほっぽり出して見て見ぬふりはできねえからさ。それにマサルがこんなに言うってことは悪いヤツじゃねえさ」
「そうそう!」
「おまけに美人だぜ!」
ぎゃいぎゃいと嬉しそうに鼻の下を伸ばす珍獣の眼差しを避けるように黒賀平助の背中に移動し、才賀勝の頼み事は素直に許してやる。
ヴィルマ・ソーンとしては子供に助けられたことになるが、おそらくしろがねに負けたのだろう。しかし、ヴィルマを倒したはずのしろがねがいないということは手傷を負っているな。
黒賀平助に目配せを送り、私はスンと鼻を鳴らしてしろがねの臭いを追って雑木林に入る。全身に鮮血を纏って、人形をカバンに納めもせず、荒い呼吸を繰り返すしろがねの姿を見つける。
「だれだ!」
「私だ」
「……テン、か……」
「使え。多少は癒える」
「すまない。助かる」
命の作った傷を治す絆創膏を専用の消毒液とガーゼ、包帯を使って使用する。命の過保護さというべきか、身体の弱さも相俟って怪我にうるさい。
しかし、命なりに恩返ししようとしているのは知っている。私は自分の幸せを享受し、そのまま平穏に暮らしていけば問題ないと思うのだが、命は頑固だ。
「数分もすれば治る。ついでだ、飲め」
「アルコールか?」
「私は未成年だ。コンクフードだったか……命が『お腹が空いたら食べてくださいね!』と無理やり私の袖の中に押し込んできた」
「……ぐむっ、なんだこれは!!ハンバーグや唐揚げ、ナポリタンの味が同時にやって来たぞ!?」
「カロリーは気にするな。私は諦めた」
「ふ、太るのか?」
「三十日分のカロリーだ」
そう教えてやると顔色を悪くしているが、律儀に飲み干そうと健闘するしろがねの姿を、くつくつと笑いながら眺める。私は基本的に脂肪は胸に行く。
あまり恐れて飲む必要はない。
────だが、シャガクシャは許さん。
私と愛する
シャガクシャ、アイツだけは必ず殺す。
「どうした」
「何でもない。憎しみがあるだけだ」
次に会ったときは確実に殺す。アイツはそれほどの大罪を犯しているというのに、平然と私の家に来るし、ムカつくほどに身体が大きいのだ。
シャガクシャだけは許せん。