この私に道化師の真似事を要求するとは死にたいのか?と仲町の事を睨み付けるが、どうやら真剣に考えての行動のようだ。
黒賀平助も道化師の格好をしているが、ピエロというのは何人も必要なのかとしろがねに聞けばメインやサブのピエロは何人もいるそうだ。
しかし、たかだか髪の毛を自由に操るだけで人気を得るとは思えない。そも妖術を使って人気を得るなどお前達の嫌う欺瞞の類いだろう。
「リーゼ、仲町はどうした?」
「そ、それが腐ったゴハンを食べテ」
「……はあ、分かった。手伝ってやる」
「ありがトウごさまイマす!」
嬉しそうに駆け出していくリーゼの背中を見送り、私は一輪車に乗ろうとする才賀勝の肩に手を置き、仕方なく片手を貸してやる。
「貴様等、見ていけ」
「て、巓さん!?」
「囀ずる暇があるなら翔べ」
転ばないように髪の毛を張り巡らせ、チラリと才賀勝に目配せをする。ここまで整えているのだ、それぐらいやり遂げてみせろ。
「やっ!」
ぎこちない一輪車の動きと真剣な顔付きに集まっていた糟共の視線は集まり、私は髪の毛を拡げて人の身体を模造して動かす。
黒賀平助の動きを完璧に模倣している訳ではないが、中国拳法というものの動きは大体覚えている。しかし、どうにも客の呼び込みが弱い。
数少ない妖気をこんなことに使いたくないんだが、そう思いながらも髪を結い合わせ、才賀の身体を固定して綱渡りのように手助けをする。
ッ、少し髪が痛みそうだな。
「あっ、倒れ……!」
「倒れませんよぉ!」
刹那、才賀の身体がナイフの柄で弾かれ、男の足で支えられ、ぐるぐると回り始める。この前のナイフとは違う、武装錬金か。
あの女、錬金術師とも繋がっているのか?
「いかがでしょうか!この足芸!この洗練されたナイフ腕前は!」
そんな迫真の叫びに視線が才賀に集まり始める。成る程、そういうことなら私も加わろう。髪の毛を戻して、ヴィルマの隣に立つ。
「あたしとナイフで張り合う気かい?」
「嘗めるな。我には造作も無い事だ」
緩やかに隣の立つヴィルマ・ソーンの動きや所作を完璧に模倣し、髪の毛を束ねて作ったナイフを才賀の投げる空き缶や鞠に向かって放つ。
同時、同箇所に打ち込めば歓声が広がる。
「全く大したもんだよ。けど、アンタって昂ると我とかハクメンなんて呟くのは何故だい?」
「お前には言わん。それが答えだ」
そも教えるつもりはない。