「仲町、何処に行っていたんだ」
「トイレだ」
「……チッ」
ふいっと視線を逸らしてカメラを使って着替える。私の着物もそうだが、大体は愛する
あんなもの誰が着ると思っているんだ?
「巓、終わったのか?」
「負けたな」
傷だらけの長袍も千切れて痣や血を流す黒賀平助の身体に髪の毛を巻き付け、仲町の運転する車の中に連れていく。血の臭いに気付いたヤツもいるが無視だ。
トレーラーの内側の壁に貼り付けている発明品『壁紙ハウス』の中のドアノブをひねり、傷だらけの黒賀平助を私の使っているベッドに落とす。
「脱げ。手当てをするぞ」
「悪い、誓って直ぐに負けちまった」
「人間の勝敗など私には無関係だ」
「……そうかよ」
私の言葉にムッとする黒賀平助に「なんだ?拗ねているのか、馬鹿者」と言えば顔を更にしかめ、長袍のボタンを外して上半身をさらけ出す。
黒賀平助のその無駄な脂肪を取り除いた筋肉質な肉体に思わず、手当てを止めてしまいそうになりながら打撲傷と裂傷に傷薬を塗り、処置を進める。
静かに私を見つめる黒賀平助の視線に喜びの感情が混ざり始めている。どうやらこいつは献身的な、自分を優先して愛して貰える相手を望んでいるようだ。
全く強欲な男だ。
「巓、お前はアイツを知ってるんだよな」
「アイツは知らん。だが、不破なら知っている」
「……どうしたら勝てる?」
「人のまま修羅に勝つことは無理だろうな。アレは人を殺すために生まれ、神を殺すために高みを目指す修羅道を生きる存在だ」
「俺も堕ちるべきは修羅の道か」
そう言って己の拳を見つめて笑う黒賀平助の目は僅かに赤みを増した。修羅の道か外道の道か男という生き物は本当に両極端しか選ばない。
「不埒者め、人に生まれたというのに道を外れる理由があるわけがないだろう。そも不破は糸色と同じく五百年続く一族だ。一代最強程度のお前が敵うものか」
「一代最強か。確かに俺だけの代で勝てるのかも怪しいが強さだけならアイツに負けていなかった。だが、不破政虎は俺の想像を簡単に飛び越えた」
ギリッと歯軋りをする音が聞こえた瞬間、黒賀平助の手当ても終わり、救急箱を袖の中に戻してベッドに腰掛ける彼を見下ろす。
いつぞや愛する
「捕まえたぞ、平助♥」
「えっ、ちょ!?」
戸惑う平助に、