アメリカ、イリノイ州グリーンタウン───。
初めてやって来た場所にドキドキしながら、乗り物酔いでまた体調を崩す私の傍に寄り添って背中を擦ってくれるルシールおばあさんの優しさに涙が出てしまう。
「やっぱり乗り物酔いは治らないね」
「す、すみませゔぇんっ」
「良いさ。アンタは良くやっているよ」
私の事を褒めてくれるルシールおばあさんの言葉を嬉しく思う反面、こんな優しい人にゾナハ病を感染させた『真夜中のサーカス』を嫌悪する。
自分勝手に他人を傷付けて、自分のためだけに笑顔を求めるのは悪いことです。料理もそうです、高祖母様も「料理は人から人へ受け継がれ、その味は人と人をも結ぶ」という言葉を残しているように。
人に想いを伝えなければ意味はないのです。
「人が誰もいねえな……」
「当然だろう。ゾナハ病に感染した人間は治療用施設に搬送し、お前も知っているように笑顔を見なければ呼吸困難を起こす」
「分かってるよ。で、ゾナハ病に掛からない例外は糸色家の血筋、『柔らかい石』から生み出された『
「そうだ。そして、しろがねと違って糸色家は代を重ねる毎に特性を増す者。あるいは、彼女のように特異な能力を宿すか原因不明の病を患う」
二人の会話を聴いていると自分の血筋に少しだけ違和感を感じるときがある。私は本当に人間なのか、それとも本当は何か別の生き物に作られたものなのかもと思うこともあります。
しかし、私は最愛の両親に大好きな従姉妹、好きな人だって出来たんです。私は化け物でもなんでもなく、普通の女の子です。
カシャッとシャッターを切る音が聴こえた。
私達は瞬時に武器を構えてカメラを構えたピエロ風の男の人を警戒し、私もいつでも電光丸を引き抜けるように柄に手を添えて動けるようにする。
「アンタ、何者だい?」
「何者って、この格好を見ても分からないか?通りすがりのピエロだ。しかし、
「どう、いう?」
「ミコト、アンタは下がっておきなさい。それと質問に答えることをお勧めするよ。私の剣は、この間合いでも届くからね」
「せっかちなバアさんだな。楯敷ツカサ、通りすがりのカメラマンだ。今回はゾナハ病を探りにやって来た。ただの普通のカメラマンだ」
そう言って名刺と変なカードを投げてきた彼に驚きつつ、バーコードの付いたカードを拾った瞬間、バチッ!と右手に痛みが生じる。
「……癒やしの力が、減った?」
「なにっ?!」
「貴様、真夜中のサーカスの一員か!」
「お前ら失礼だな。あんなゴミ山でオレみたいなのが遊ぶわけないだろ?」
呆れ気味に言葉を発した彼はカシャッとまたカメラのシャッターを切り、ヘンテコなバイクに股がってヘルメットも被らずに行ってしまった。
なん、だったのかな?