あれから数日後。
ゾナハ病の治療用施設を出立して、私達は空港にやって来ている。ツカサ君はセーフティーを解除したケータッチを受け取りに来ること無く、三郎丸は今後の護衛を兼ねて『コピーロボット』と一緒に施設に残している。
「すまないね。ミコト」
「フフ、良いんですよ。ルシールおばあさんにはいつもお世話になっていますから、お荷物を押したり持ったりするぐらい恩返ししないと」
「……本当にミコトは良い子だね。それに比べてギイは呑気にナンパをして、ナルミはそのギイに怒って此方に気付きもしていない」
「男の人ですから飛行機が楽しみなんですよ。……まあ、私は乗り物酔いで倒れるかも知れませんが、そのときはお願いできますか?」
阿紫花のお兄さんとフランスにやって来たときもそうでしたが、もはや呪われているとしか思えないほどに私は乗り物酔いしやすくお母様も同じです。
巓ちゃんもそうですが、あの子は弱いところを見せるのを嫌っていますから、誰かに見せることは絶対にないんでしょうね。
「時間だ。搭乗するよ」
「鳴海お兄さん、レッシュさん、時間ですよ!」
「ん?あ、ああ、分かった」
「ミコト、飲み薬は持ったかい?」
「フフ、大丈夫です♪︎」
ちゃんと阿紫花のお兄さんが持ってきてくれたお薬は沢山残っていますから、私の体調は問題ない。でも、やっぱり大好きな人に会えないのは寂しいです。
「ん?」
ふと、鏡の向こう側に誰かが見えた。
───けれど。鏡の中に人を取り込めるわけもないので気のせいですね。まあ、鏡の中に出入りを可能とする発明品を幾つか見つけましたけど。
そういうものは危ないので作りません。
「(そもそも『仮面ライダー』の使っている変身ベルトの設計図まで載っている大百科のほうが謎ですね。お父様に聞けば何かヒーローに関して分かるかな)」
どうにも特撮というものに疎く、すぐに理解することは出来ませんけど。仮面ライダーダークディケイドに変身する楯敷ツカサに必要なアイテムを製作できるのは私だけなのは理解しました。
しかし、私はヒーローを手助けする科学者というわけではない。ちょっと手先の器用な普通の女の子です。まあ、確かに生家は凄いですけど。
私自身が誇れるものはない。
「(…………他の糸色って言ってましたけど。現在、糸色の名前を正式に名乗っているのは叔母様と叔父様の二人だけですし。お二人とも手先が器用とは言えない)」
あまり考えすぎるのもダメですね。
「鳴海お兄さん、鞄を上げて貰えますか?」
「ああ」
「ナルミ、僕の頼むよ」
そう言って私達は鳴海お兄さんにお願いする。