巓ちゃん、彼氏が出来てました。
流石は高校生、進んでいます!と感心しながらも私のお見舞いに来てはくれない彼の事を考えて、ザザッと頭の中に砂嵐のようなものが広がる。
記憶の混濁も何も問題ないのに意識がたまに消えそうになってしまうのはとても怖いです。鳴海お兄さんやルシールおばあさんは大丈夫でしょうか。
そう窓の外を見つめる。綺麗な満月の見える夜空を見上げていると、お月様の真ん中に黒い点のようなものが見えて、よく見たら人の形をしている。
「お、
慌てて、立ち上がろうとするもまだ完全に回復していない身体から力が抜け、ベッドから転がり落ちるように倒れ、だんだんと大きくなる点に焦り、今のまともに動くことも出来ない状態に不安を駆り立てられる。
「やだ、やだっ…!」
「Добрый вечер!!」
「ひうっ、こ、ころさないでぇ」
そう言って頭を守るように腕を上げるも一向に襲われる気配もなく、恐る恐る目を開けて窓の方を見上げると黄色いまん丸としたお月様がそこに佇んでいた。
「む~ん。初めまして、糸色のお嬢さん♪︎私はムーンフェイスという名前のホムンクルスだよ。怖がらなくてもかぐや姫のように連れ去りに来た訳じゃあないさ」
「……む、ムーンフェイス、さん?」
「そう!私の名前はムーンフェイスだ。今晩は素敵な月下の出会いと御近づきの印に君にプレゼントを持ってきているんだ。受け取ってくれるかい?」
ゆっくりと窓枠に手を掛けて飛び上がるムーンフェイスさんに手を引かれ、私はキラキラと光る星空と綺麗な満月の浮かぶ夜空に招かれる。
一体、彼が何者なのかは分からないけれど。
糸巻きの家紋を刻んだ手袋を見れば糸色家に関わっている人間なんだと分かりますし。なにより怖い筈の夜が彼の傍にいると怖くない。
「……私をどうするつもりなんですか?」
「中国に連れていくのさ!」
その一言に言葉が詰まる。
私が行けば迷惑になるはずです。
「怖いのかい?フフフ、怖がらなくても良いさ。君の行くべき道はお月様が照らそう。その儚い命の輝きは、やがて世界を魅了するのだから!」
「分かりました、連れていって下さい!」
「そうこなくっちゃね!む~~~ん!!!」
高らかに笑ったお月様は金色の蝶々に包まれ、気がつけば海の上に、今度は森の中に飛び込んでいき、私は代わる代わるに景色の変化する事に戸惑う。
発明品にも似たものがあるけど。
まさか、奇天烈斎様のご友人なの?