ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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暁からハーメルンへの移植投稿を機に、内容の見直しや文章の修正を行っております。

ギンガ×ゴッドイーターは、次に誰の何の話を書きたいのか、ちょっと考えさせてください…昭和ウルトラシリーズを見返してると、書きたい話とかは浮かぶんですが、タイミングとかどんな形にするべきかとかいろいろ考えないといけないので…。


第零章 プロローグ
才人-ジ・アース-


 紅と蒼。異なる二つの色で己の身を染め上げた月。その月が囲むように周っている星があった。

 その星は、外見だけならば地球と非常によく似た星。私たちの生きる地球と比べると、全く科学的な力が及んでいない分、緑溢れる自然と、青く澄み渡った海…環境汚染の形跡のない美しい自然を維持していた。

 

 地球と特に異なるのは、この星の知的生命体は人間だけではなく、耳の先が尖った『エルフ』、翼を持つ『翼人』など、多彩な種族が存在する。そして人間を含めた彼らの多くが『魔法』という、空想の産物と思われた異能の力を行使することができるのだ。

 

そして古来より己と自らの同胞たちのため、自身の信じるもののため、互いに争い合っていた。権力を誇示するため、愛する人を守るため、理由は様々だ。

 

 

 後に宇宙より飛来する外星人たちから、この星は『惑星エスメラルダ』と名付けられる。

 

 

 

 

 

 

エスメラルダは狙われていた。

 

今、この星に…恐るべき魔の手が忍び寄ろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

トリステイン王国。この星の『ハルケギニア大陸』に存在する、小国ながらも由緒正しき伝統を持つ、ブリミル教と呼ばれる宗教を信仰する王国の名前だ。

この国をはじめとし、ハルケギニアの王族は始祖『ブリミル』の血を受け継いだ誇り高き一族でもある。

だが人間の場合、魔法を使えない者を『平民』、魔法が使える者を『メイジ』と呼称され『貴族』としての位を生まれた時から賜る。

貴族は、この世界では平民以上に強い権力を持ち合わせている。それがなくとも平民にはない魔法と言う力のアドバンテージが大きいがゆえ、この星の人間たちは貴族平民の格差社会が展開され、差別意識が根強く残ってしまっていたのだ。しかもたちの悪いことに、6000年間もずっと続いていたのである。それは貴族と平民の間に、絶対的な壁というものが存在することを証明していた。

 ただ、誤解はしないでいただきたい。この星には数多くの目に余る問題は山にも匹敵するが、この星の知的生命体たちは平和を強く望む者たちが、身分や種族に関係なく大勢いると言うことを。

 

 

ここ、トリステイン魔法学院は優秀な魔法使い=メイジを育成するために貴族の子息子女が通う、魔法を習う高名な全寮制の学校である。

 学院は上空から見たら地面に五角形(ペンタゴン)を描いたような建築様式をしており、外枠を頑丈な外壁で囲み、五角形の各先端を示す部分には巨大な塔が築け上げられ、中心部には更に巨大で高大な本塔がそびえ立ち、地面には本塔と各五つの塔を結ぶ廊下がそれぞれ備えられていた。

 

 

 

 

 その学院の広大な中庭にて、制服の上に黒いマントを羽織った生徒達に囲まれた中、青銅で作られた数体の石の人形に立ち向かう、黒髪の少年がいた。

 

「っぐ!」

 

彼の名は『平賀才人』。年齢17歳。どこにでもいるような日本人の高校二年生。好物はテリヤキバーガー。嫌いなものは体育の先生。趣味はノートパソコンでのネットサーフィンやゲーム。学校の成績はあまり思わしくない(本人曰く中の中)。ちなみに最近出会い系サイトを使って、ずっとできないままの彼女を募集しようかと模索中。知り合いたちからの評価は『好奇心旺盛だがヌけている』、親からは『ヌケてるから勉強しろ』とのこと。

 

そんな日本のどこにでもいるはずの彼だが、なぜか今……

 

 

 

異世界の魔法学校で決闘の中にあった。

 

 

 

 

戦乙女を象った青銅のゴーレムは、一気にサイトの前まで接近し、彼の腹に重い拳を打ち込んだ。強力な拳を食らったサイトは吹っ飛ばされてしまう。

 

「ぐふぅあ!?」

「サイト!?」

 

吹っ飛ばされた彼のもとへ、桃色の髪の小柄な女子生徒が駆け寄った。

 

「分かったでしょ。平民は絶対に貴族には勝てないのよ」

 

彼女は心配そうな表情でサイトを抱き起こした。

 

「止めてよギーシュ!決闘は禁止されてるじゃない!!」

 

 桃色髪の女子生徒は気障な男子生徒…ギーシュに向かって怒鳴りつけた。

 

「それは貴族同士での話だろう?彼は平民、何の問題もない」

「それは!……今までこんなことってなかったから……。

それに、私たち貴族は平民を導く立場にあるでしょう!?決闘にかこつけて、一方的に虐げるなんて!元を辿れば、あんたの下劣な二股が原因なのに!」

 

見た目通り、ギーシュは女にもだらしのない性格であった。彼の家系である『グラモン家』は男子は好色さにおいても有名なのだ。

彼女の言葉を聞いてギーシュは、一瞬眉を顰めたが、すぐに大笑いしだした。

 

「ははははは!今朝はその平民に、立場を弁えさせようと床の上にわびしい食事を用意したとは思えないセリフだな!さすがはゼロのルイズだ!」

「そ、それは…!」

 

自分に対する負の指摘に、ルイズと呼ばれた女子生徒はしどろもどろになる。彼女もまた、サイトに対して酷い扱いをしていた。

 

 

彼女のフルネームはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。年齢16歳。トリステイン王家とは遠い親戚にあたり、代々優秀なメイジを輩出してきた由緒正しき公爵家出身。彼女の父・母・二人の姉たち・そしてご先祖様たちは優秀なメイジ。

 しかし…ルイズだけはどういう訳か違った。

 

ハルケギニアのメイジたちは『』『』『』『』の四大系統に目覚め、そこから徐々に新たな系統魔法等も習得していき、自身の格を上げていく。

 

しかしルイズの場合、初歩的な魔法『コモンマジック』さえ碌に使えなかったのだ。正確には…あらゆる魔法を使っても、

 

なぜか『爆発』しか起こせなかった。

 

実家暮らしだった頃も、そして魔法学院に入学した今でも魔法成功確率ゼロ。そのせいで付いた二つ名が…

 

『ゼロのルイズ』。

 

 彼女はヴァリエール家出身であることを誇りに思っていることもあり、とてもプライドが高い。こんな屈辱的な二つ名など、呼ばれるたびに腸が煮えくり返りそうだ。

 

先日の、魔法学院の生徒が2年生になった際に執り行われる伝統行事、使い魔召喚の儀においても、彼女はその二つ名を一層嗤われることとなった。

本来使い魔は、召喚するメイジの系統にちなんだ生物…例えば鳥や両生類、中にはドラゴンなどを召喚するもの。

当初は、ルイズが使い魔を召喚できないものだと、同級生たちは思っていた。しかしルイズは、使い魔召喚の魔法を…人生で初めて、魔法を成功させた。

ただ、その召喚したものが…人間だった。

 

その人間こそが、地球人であるサイトだった。

 

 このハルケギニアでは、自分たちの住む世界の外にもまた、人間が…知的生命体が存在するという認識は皆無だった。何せ地球と違い、この世界の人類は魔法文化に依存するあまり、宇宙進出どころか、機械文明もろくに発達していない。

 故にサイトのことを、どこかから適当に召喚した無力な『平民』なのだと皆が口を揃え、ますます『ゼロ』の二つ名に磨きをかけたルイズを嗤った。

 プライドの高いルイズにとって、やっと魔法を成功させた喜びも、サイトの出現によって一気に失せた。元より高位の貴族生まれなこともあるが、ますますゼロだと馬鹿にされたその原因であるサイトに対し、苛立ちのはけ口として当たってしまったのである。

 

 尤もサイトとしては、理不尽なことである。好き好んで地球からこの世界に来たわけではない。好奇心旺盛な彼としては最初は空想の産物でしかなかった魔法と異世界にわくわくしたものだが、すぐにホームシックに駆られた。加えて身分の差を理由に、ルイズに理不尽な扱いをされてはたまったものではない。

 

 

「それともルイズ。もしやあの平民に、清らかな乙女心をときめかせているのかい?だからこうして、わざわざ平民一人を助けようなんて思ったのかな」

 

 つまり、あの平民に惚れているのか?と言っているのだ。ギーシュの冗談なのは間違いないだろうが、ルイズは怒りで真っ赤になる。

 

「な、なに言ってるのよ!自分の使い魔がボロクソにやられるのを黙って見てられ無いってだけよ!」

「ボロクソね…」

 

 サイトはよほど自分が信用されていないことを悟る。

 

「ふっ、君がなんと言おうと決闘はすでに始まっているんだ!

さあ、平民。この程度で倒れられては面白くない。まだ抵抗するつもりなら立つといい」

 

 ギーシュは決闘の続行をサイトに促してくる。「調子に乗りやがって」と悪態をつきながら、サイトは立ち上がった。

 

「ほう、手加減がすぎたか」

「うるせぇ、いきなりだったから油断しただけだ」

 

 サイトは、鼻の頭を親指で撫でて強がってみせる。

青銅は金属の中で脆い方ではあるが、金属は金属。人間の体に打ち込めば滅茶苦茶痛いことに変わりない。

 

立ち上がったサイトに、ルイズは怒鳴った。

 

「どうして立ち上がるのよ、馬鹿!」

「ムカつくからだよ」

「え?」

 

 サイトの答えがルイズには理解できなかった。ムカついたからといって貴族に逆らう平民がいるか?サイトの答えがルイズには理解できなかった。そんな貴族に逆らう平民なんていない。いるはずがない。メイジの魔法の前には、平民の誰もが恐れ平伏するしかないことを痛感している。だというのに、サイトはその真逆…予想の斜め上を行っていた。ハルケギニアの人間からすれば、正気を疑うことだろう。

だが、地球生まれの地球人であるサイトにとって、この感情こそが正常だった。

 

「なぁルイズ、お前ら貴族は…魔法が使えるからって人を見下せるほどに偉いのかよ…はっきり言ってムカつくぜ。

さっきお前にも言ってたけどさ、こいつの考えていることは、はっきり言って、

 

 

俺の故郷を何度も攻めてきた侵略宇宙人と変わらねえ…

 

 

俺は、自分の力を傘に、立場や力の弱い奴を平気で虐める野郎が許せないんだよ!」

 

 

 サイトは相当に、気障な男子生徒、貴族に対する怒りを募らせていた。今の彼の言葉を聞いて、ギーシュや、サイトと彼の決闘を観戦している生徒たちの一部に、苛立ちの表情が浮かぶ。

 

「…ふん、平民ごときが正義の味方を気取り、僕ら貴族を悪とみなすか…とことん無礼な平民だな」

「生意気な平民だな!おい、ギーシュ!そのゼロのルイズの使い魔に現実ってもんを見せてやれ!」

 

次々と、サイトを痛めつけてしまえと言い出す声が相次ぐ。ギーシュが行ったという二股のことを、遠い記憶の彼方に放りだしてしまったかのようであった。

 

「あのさ、ルイズ…ごめんな」

「えっ?」

 

 いきなりのサイトの謝罪の言葉に、ルイズは困惑した。

 

「シエスタから聞いたよ。お前、男子生徒に絡まれてたあの子を、懲罰覚悟で助けたんだってな。座学でもトップってことはそれだけ努力してたこともさ。なのに、必死になって頑張ってたお前を他の奴らみたいにゼロってバカにして」

「こ、こんな時になにを…」

「だからよ、償いってわけじゃねえけど、そんな頑張ってるお前をバカにしたこのキザ野郎と他の奴らの分も含めて、ぶん殴ってやるぜ!!」

 

 そう叫び、サイトはギーシュの先頭のゴーレムに向かって走りだした。

 

「ちょ、ちょっと待って!そんなことしなくていいわよ!やめてぇ!!」

 

 ルイズの悲痛な叫びの中、サイトは突っ込んだ。

 

「愚かな…ワルキューレ!その平民に、貴族に歯向かう愚かさを、身をもって教えてやれ!」

 

だが生身で敵うはずなく、青銅の拳を顔や体中に食らいボロボロになっていった 。

 

魔法。貴族はそれを行使することで、魔法が使えない人間である『平民』を支配している。そんな貴族を相手に、普通の高校生でしかないサイトは、ただの平民…支配される側だった。

 

ガス!!

 

「っぐ…!!」

 

 サイトはワルキューレからの顔面パンチで膝を着き、鼻血を出してしまった。

頭を殴打されたせいか、目の前の景色がグラっと揺れた。

 

 

(ったく…なんでこんなことになっちまったのかな…

 

地球じゃない世界で、こんな喧嘩に巻き込まれてさ…)

 

 

 サイトの頭の中で、数日前の…ごく当たり前の日常から、あまりにも非現実的な世界に様変わりするまでの記憶が過った。

 

 

 

 サイトの故郷…地球で怪獣、さらには侵略目的で飛来した宇宙人が出現したのは、なんと約50年も前。ウルトラマンが出現したのはそれから一年も後のことだ。それから十数年近く、毎年のごとくウルトラマンが出現したが、1980年を過ぎてからばったりと表舞台に姿を見せなくなった。人知れずどこかで、中には外国に出現したなんて話もあるが実際のところよくわかっていない。ともあれ、これまでの長きにわたって怪獣・星人とウルトラマン・人間の戦いの時期を、『怪獣頻出期』と称されている。

 

 しかしサイトが中学2年生のある日、実に26年もの時を経て怪獣が再出現、当時の防衛チーム『CREW GUYS』を全滅寸前に追い込み世界中に壊滅的な被害を与えた。その直後に現れた、若きウルトラ戦士『ウルトラマンメビウス』、新たに出現した青いウルトラマン『ウルトラマンヒカリ』と新生GUYSの活躍で、地球に平和が戻ったのだった。

 

 あれから3・4年…西暦2010年。現在、怪獣や星人からの脅威は今のところ途絶え、新たに宇宙資源を取り入れる宇宙開拓組織『ZAP SPACY』が発足され、宇宙鉱物資源の輸送・惑星開発を主な任務とする彼らの活躍の方が注目されつつあった。

 

 

 

 日曜日の、日本の東京。

 

 表札に『友里』。サイトはその一軒家に住んでいる。仏壇の置かれた和室にて、彼は仏壇に掛けられた写真に映された二人組の夫婦を見て合掌し、黙祷した。

 

「偉いのね…亡くなったお母さんたちに」

 

 そんな彼を覗き込む壮年の女性…サイトの母がいた。

 

 彼女はサイトの実の母ではない。四年前、両親がウルトラマンメビウスと怪獣の戦いに巻き込まれて亡くなり、身寄りのなくなった彼を、今の義母が養子として引き取ったのだ。実の親への情から、母とは今も名字が違ったままだ。

 

「これくらい普通だよ。

じゃあ俺、今から修理に出してたパソコン取りに秋葉原に行くから」

 

仏壇の前から立ち上がったサイトは、玄関に向かう。

 

「気を付けて行きなさい。特に女の人にはね。あなた、可愛い女の子には弱いんだから」

「余計なお世話で〜す。

別にそうそう騙しにくる女の人がいるはずないって。俺モテないし」

「自分で言ってて悲しくならないの?」

「シャラップ。じゃあ行ってきます」

 

 後ろから説教と茶々を入れてくる義母にそう言いながら、サイトは自転車に乗って駅へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 駅まで自転車、そこから電車で着いた町、秋葉原。電気店が多く立ち並ぶその町は、多くの世代の人たちがよく立ち寄る。サイトもその日、修理に出していたノートパソコンを引き取りにやってきたのだ。

 

「ふう〜、ようやく帰ってきたぜMYパソコン!」

 

 修理を頼んでおいたノートパソコンを受け取り気分はウハウハ状態。まるで子供だ。

 パソコンを引き取ったし、リュックにしまって家に帰ろうと思ったその時、彼は制服を着こんだ少女と鉢合わせした。

 

「平賀君?」

「あれ、高凪さん?」

 

 綺麗で長い黒髪を靡かせた女子学生、『高凪春奈』。成績優秀で、サイトと同じクラスで学級委員長を務めている。クラスでも指折りの美少女とも称されていて、サイトも彼女に対して好印象を抱いている。

 

「こんなところで会うなんて!」

 

ハルナはすごく嬉しそうに、サイトへ満面の笑顔を向けた。

 

「平賀君、今日はなんでここに?」

「修理に出していたパソコンを引き取りにね。ほら」

 

サイトはパソコンを仕舞い込んだリュックを見せる。

 

「やっとハマってるゲームの続きができるぜ!修理してる間に暇つぶしに読んでた漫画も飽きてきちゃった頃だし」

「平賀君…ゲームはいいけど、成績は大丈夫なの?」

 

心配そうな目を向けるハルナの言葉に、サイトは息を詰まらせた。

 

「…高凪さん、今その話はやめて。せっかくの休みだから忘れさせて」

 

 せっかくの日曜日のウハウハ気分が萎えてしまうし、明日の退屈な授業の時事への軽い絶望が過る。

ネガティブに陥るサイトに、ハルナは再び言う。

 

「だって平賀君、将来の志望って、GUYSに入ることでしょ?」

「なんで知ってるの!?」

 

 それを聞いたサイトは目を丸くした。彼女には将来の希望進路など喋ってないはずなのだが。

 

「ごめんね。この前、職員室で先生と揉めているの、聞いてたの」

 

 ハルナが気まずそうにそう言った時、数日前の嫌な記憶がサイトの頭の中に蘇った。

 

 

 

『平賀ぁ、お前GUYSに入りたいんだって?

まだ寝てんのか?お前の成績であそこに入れるわけないだろ?ろくにテストの点取れてねぇわ、授業だって居眠りすることがあるわ、お前みたいな馬鹿が、地球の平和を守るなんざお笑いだろ。ライセンスの取得だって無理無理』

 

 そう言ったのは、たまたまサイトとハルナのクラス担任の休みの間、代理の担任を務めた体育教師だった。

 

 一言で言えば、最悪な先生だった。優秀な生徒には媚び諂うように褒めちぎり、その逆の場合は人目のあるうちは気を遣う言葉を送りつつも、影では平気でその生徒を悪く言う。よく教師になれたものだと思えるレベルだった。

 

GUYSのライセンスだが、1980年までの『怪獣頻出期』から4年前の2006年までの怪獣が出現しなかった長い年月もあって、当時と比べて一般人も取得しやすい資格として認知されていた。取得できれば当然GUYSに限らず一般職への就職にも優位になるのだが…

 

この体育教師は、サイトを応援するどころか、皆のいないところで笑い飛ばしていた。

 

『なんだ貴様、その気に入らん目は。

いいんだぜ?俺を殴っても。その時は即退学だ。

お前みたいな無能のガキ、さっさとうちの学校からいなくなった方が無駄な金を使わなくて済む。要するにお前なんざいない方がこの地球の平和に役立つんだよ』

 

 この時も、サイトの成績が芳しくないことをダシに、教師とは思えない言葉で彼を罵倒し嘲笑っていた。

 座学よりも体を動かすことが好きなサイトが、大好きだった体育の授業が嫌いになった元凶である。

 

『まぁ、それ以前に、実の親の教育もまともに受けちゃいねぇ根無草じゃあ、無能のまま育つのも無理ねぇな。どうせ今の親代わりも、お前の養育費狙いでお前を引き取ったんだろうよ』

 

サイトは、実の親が怪獣災害で亡くなった身。それを今の義母が引き取って育ててくれた。そんな義母すらも、この体育教師は悪辣な言葉で侮辱した。

今すぐにでも殴ってやりたかった。でも、義母に迷惑をかけたくなかった手前、必死に怒りを堪えていた。

 

 

 

「酷いよね。あの先生…平賀君に対してもあんな言い方して、しかも平賀君のお母さんまで…」

「あのクソ体育教師…次に母さんを悪く言いやがったら絶対ただじゃおかねぇ」

 

 思い出すだけで腹が立つ。さっさと教師を辞めろと何度も念じているくらいだ。

 

「ごめんなさい、思い出させちゃって」

「高凪さんは何も悪くないだろ。

…あぁヤメヤメ。あのクソ体育教師のことなんかいいよ」

 

 ムカつくやつの話で盛り上がってもストレスが増すだけだ。サイトは話題を変えることにした。

 

「そういえば高凪さんこそ、制服姿でどうしてここに?今日は学校休みだろ?」

「今日は、部活が早く終わったからここで時間を潰してたの」

「へえ、部活か…」

 

 平凡で幸せそうな年頃の少年少女の会話。一部の人間ならリア充爆発しろ!と言いたくなるほど微笑ましいものだろう。ハルナが何部に所属しているか、それを聞こうとしたが…。

 

ぎゅるるるるる…。

 

「あはは…」

 

 恥ずかしそうにサイトは腹を抑える。気が付けばもう昼の時間だ。それを見てハルナはクスッと笑う。

 

「もうお昼だもんね。一緒に食べに行こ?」

「いいの!?」

「うん」

 

 子供のように目をキラキラとさせるサイトに、ハルナは少し照れくさげながらも嬉しそうに頷いた。

 

 

 

 二人はファーストフード店で食事をとることにした。先ほど紹介した通りサイトはテリヤキバーガーが好きなため、二人はそれとドリンク・ポテトを注文した。

 

「んまぁぁい!マヨの入ったテリヤキやっぱ最高!」

「そんなに美味しいの?」

「そりゃ俺の大好物ですから!」

 

 体育教師へのストレスをすっかり忘れ、おいしそうに食べていると、ハルナはこちらを見て笑顔を浮かべ続けていると、視線を明後日の方角に向ける。するとなぜか、ふへへ…と妙に残念な声が聞こえてきた。

 

 

「…なーんて」

「高凪さん、なんか言った?」

「ひゃい!?」

 

 サイトの呼びかけで、我に返ったハルナはドキッとした。

 

「うぉ!?びっくりした…どうしたんだよ?」

「あ、あはあは…なんでもないよぉ?ちょっとしゃっくりが出ただけだから。

そ、そそそうだ平賀君!一つ提案なんだけど!」

「て、提案?」

「勉強、私でよければ見てあげるよ!」

「え?」

「ほ、ほら!平賀君って成績ちょっとまずいんだよね?成績が低いとGUYSのライセンス取得も難しいと思うし!それに、あの先生にまた馬鹿にされるのも嫌だと思うし!よかったら私がマンツーマンで教えたげる!」

 

ハルナの提案を聞いて一時きょとんとしていたサイトだが、うぅむ、と悩み始めた。

 

「勉強かぁ…」

 

 確かに勉強はしなければならない。将来、GUYSに…地球防衛の任を…人類の命運を背負う仕事をする以上必須だ。だが、頭を動かすより体を動かすタイプのサイトは、正直勉強は好きではない。

そのサイトの反応に、ハルナは肩を落とした。

 

「そ、そうだよね…平賀君、勉強好きじゃないもんね。私が教えてあげたって楽しくないもんね」

「あ、や…ごめん!別に高凪さんとの勉強が嫌なわけじゃないって!

考えてみりゃチャンスだもんな!高凪さんが勉強教えてくれるってのは!成績上がれば、あのクソ体育教師に一泡吹かせられるし!」

 

 見るからに落ち込んでいるハルナを見て、サイトはしまった、と罪悪感に苛まれた。せっかくの彼女のご好意を無碍にしてしまうし、実は出会い系に登録したての彼は絶賛彼女募集中の身。これは一石二鳥のチャンスになりうるかもしれない。思春期少年らしい下心を抱きつつも、むかつく先公への意趣返しも兼ねて、勉強会に意欲を示した。

 

「!じ、じゃあ…この後…」

 

サイトが乗り気になってくれたのを見て、ハルナの表情がぱあっと明るくなる。

 

 

こんな、彼らの平和な時間が、その時にストップしてしまうなど誰が予想しただろうか。

 

 

「うわああああああああ!!!」

「「!」」

 

 二人のいるファストフード店のすぐ近くから、悲鳴が聞こえてきた。サイトとハルナが悲鳴の聞こえた方へと視線を向けると、恐怖を感じさせる光景が彼らの目に映った。

 

 

 人が、消えていくのだ。

 

 

空より白いレーザービームのような光が地上に降ってきて、地上の人間たちに直撃すると、蒸発するかのように…それも次から次へと、多くの人たちが消えていく。

 

 

「なにこれ…!?」

 

 恐怖し、サイトにしがみつくハルナ。そんな彼女を守るように、サイトは彼女の方に手を回した。

 

「異星人…!」

 

 養子とはいえ、『元防衛軍エリートチーム隊員の息子』だからなのか。サイトはこれを、侵略目的で現れた異星人によるものだと確信した。

 

「高凪さん、しっかり俺の手を掴んで!」

 

 サイトはハルナの手を握り、彼女を連れて安全な場所を目指して走り出した。少女一人を連れて行くのは難しいが、だからと言ってサイトは彼女を見捨てて行くことなどできない。絶対に離すものか、サイトはたとえ、彼女が握られるのを嫌がったり痛がったりしても決して離さぬよう、彼女の手を握り続けながら、彼女と共に走り抜けていく。

 しかし、クール星人によって放たれた光弾の脅威が、無情にも二人に直撃した。

 

「うああああ!!」「きゃああああ!!」

 

 光弾を受けて悲鳴を上げる二人。その直後、サイトたちの姿は白熱し、地上から跡形もなく消え去ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「ぐ…」

 

 クール星人の攻撃によって秋葉原の町から消されたサイトは、薄暗い空間の中で目を覚ました。

真っ先に感じたのは奇妙な感覚だった。まるで自分が空の上を飛んでいるような浮遊感がある。いや、その通りだった。本当に自分は浮いていたのだ。自分だけじゃない、子供・オタク系・女子高生・主婦・会社員など様々な人たちが同じように、この奇妙な部屋の中で浮いていたのだ。

 

「うあああ!助けてくれ!!」

 

 ジタバタと藻掻いて、下の方に見える扉の方へ逃げようとしても、体が自分の意思と関係なく浮いてしまっているせいで届きもしない。子供や女子は泣いてしまっている。

 

(そうだ!高凪さんは!)

 

 サイトは辺りを見渡し、一緒にいるかもしれないハルナを探し回る。すると、幸か不幸か彼女の姿は自分のすぐ近くだった。だが意識を失ってぐったりとしている。

 

「高凪さん!」

 

 彼は彼女の手を掴んで引っ張り、彼女の体を揺すると、ハルナはうめき声をあげながらも目を覚ました。

 

「平賀君…?」

「大丈夫高凪さん!?怪我は?」

「う、うん…平気。でも、ここはどこなの…?って、なにこれ…!?」

 

 自分だけじゃなく、周囲の人間が無重力状態であることに驚愕するハルナ。

 

「落ち着いて。多分俺たちは、宇宙人のUFOの中に連れ去らわれたんだ。こういう手口を使う奴を、母さんから効いたことがある。多分、『クール星人』って奴らだ。宇宙ハンター、なんて風にも呼ばれてる」

「クール星人?」

「43年前、ウルトラ警備隊に挑戦状を叩き込み、標本のために人類を誘拐し続けていたそうなんだ。母さんから聞いたことがある」

「じゃあ、私たち…これから…」

 

 その表情には恐怖の色さえ見える。体も震えていて酷く怯えきっていた。

 サイト自身もこの状況に恐怖を感じないわけがない。これから先、星人に何をされるかわからないし、嫌な想像をついついしてしまう。だが、自分まで怯えるわけにはいかない。虚勢だとしても、勇気を振り絞らなければ男ではない。

 

「大丈夫、きっとGUYSの人たちも駆けつけてくれる。俺たちは俺たちのできることをするんだ!」

 

 彼女の両肩に手を触れ、顔を引き締めて頷いて見せたサイト。ハルナはそれでも震えたままサイトにしがみつく。

なんとしてもここから抜け出さなければ。

 

「く!」

 

 サイトはハルナの手を掴んだまま、水中を泳ぐように入口の方へと移動し始める。だがこの部屋は無重力空間で、外はきっと重力の効いている場所だ。扉を開けたりしたら、一気に台風の暴風域に入ったように空気がどっと流れ込んでしまう。そうなったらここにいる人たちが壁にぶつかった衝撃で大怪我を負うか最悪命を落としてしまう。自分とハルナだってただでは済まされない。ここで待つしかないのか。手遅れになる前に、GUYSの人たちが来てくれることを祈るしかない。

 

「誰かいるか!」

 

 おお!噂すれば何とやら!サイトの心に希望の光が灯る。この危機を知り、GUYSが駆けつけてくれたのだ。しかもこの宇宙船に自ら飛び込む形で。

この声、テレビで聞き覚えがある。確かGUYSの現隊長である『アイハラ・リュウ』という男の声だ。他にも、もう一人若い隊員がやってきている。

 

「こっちです!助けてください!」

 

 サイトは外にいるであろうGUYSのクルーたちに向かってSOSを呼びかける。足音が聞こえてきた。次第に大きくなっている辺り、近づいてきているようだ。扉はガラス張りの扉のごとく透明なので、彼らが来たのはすぐにわかった。

 

「待っててください!今助けます!」

 

 扉のすぐ近くの壁に、この無重力室の操作盤がかけられているのを見つけた若い隊員…『ハルザキ・カナタ』が、内部で捕まっている人たちに呼びかけるように告げた。

 その時、GUYS基地『フェニックスネスト』のオペレーターからの通信が、リュウたちの通信端末『メモリーディスプレイ』に入ってきた。

 

『隊長!謎の発光体が、それも巨大なものが、クール星人の宇宙船に近づいています!それもかなり高速で!』

「何!?」

 

 この状況でまた更なる危機が!キツいダブルパンチに、リュウは苦虫を噛み潰したような顔をする。

 

『急いで脱出してください!』

「わかってる!カナタ、全員連れて脱出するぞ!」

「はい!」

 

 カナタは操作盤を、トライガーショットを撃ちこんで破壊した。その影響で、無重力室はその効力を失いさらわれた人たちは床に落下する。落下の衝撃を予期し、サイトはハルナをお姫様抱っこし、自分は体を動かして床の方に何とか足を傾けさせていたおかげでけがはなかった。ハルナの顔がほんのり赤かったのは言うまでもない。

 扉を開けたリュウは、すぐに浚われた人たちに向けて避難を呼びかけた。

 

「もう安心してください!皆さんを必ず連れて帰ります!我々の指示に従ってください!」

 

 それからリュウたちは、被害にあった人たちを守り脱出すべく奮闘した。

 

「ええい、地球人め!せっかく集めた標本を!」

「知的生命体ぶった昆虫の分際で、生意気な!」

 

 勿論クール星人が、歪んだ思考の元によるものとはいえ、苦労して集めた人間を気軽に手放すはずもなかった。

 脱出するべく円盤内を逃走し続けるサイトたちを逃がすまいと、円盤内の通路の壁が口を開け、その中から小型の自立型ビームガンが顔を出してリュウたちを攻撃してきた。侵入者、あるいは逃亡者対策のために用意されたものだろう。宇宙の闇を飛行機旅行のように容易く行える宇宙人が開発した武装、当然破壊力もすさまじく、食らえば人間は一たまりもなかっただろう。

 

「その『生意気な昆虫』と見下す姿勢が、てめぇらの敗因だ!」

 

 だが、リュウとカナタの二人は、それらをものともしなかった。壁や天井に仕掛けられた兵器や、武装したクール星人が待ち構えているのを、まるで予知でもしていたかのように見切り、壁の影にサイトたちを一旦隠して自分たちは先陣を切って銃撃、遭遇したクール星人や彼らの兵器を破壊しながらサイトたちを連れて脱出地点へと導いた。

 

 クール星人は、生身だと全然大したことのない異星人だった。歴戦の勇士であるリュウの敵ではなかったので、時間稼ぎにもならない。リュウと、彼が手塩にかけて鍛えた隊員カナタのおかげもあって、被害者の人たちは宇宙船から脱出していった。

 

 

 

 

 リュウたちの活躍で、浚われた人たちは次々と宇宙船から降りて行った。だが、結構な数の人たちが浚われたのだ。まだこの船に残っているかもしれない。まだリュウたちは宇宙船から降りていなかった。降りていなかったのは彼らだけじゃない。なんとサイトもリュウたちと同行していたのだ。

 

「平賀才人君、だったか。まさか被害者の身でありながら避難誘導を手伝ってくれるなんて助かったよ」

「いえ、俺は以前あなたたちに命を救われた身ですから、少しでも恩返しができて嬉しいです」

 

 宇宙船の入り口際にて、互いの活躍を健闘し合っていたカナタとサイト。

 

「けど、無茶すんなよ。お前はあくまで一般人だからな」

「…はい」

 

 リュウの一言にすごい重みを感じたサイトは、ゆっくり頷いた。やはり隊長としての威厳を彼から感じたのか、「大丈夫ですから気にしないでください」の言葉も出そうで出なかった。

 ガタン!その時、クール星人の宇宙船が激しく揺れ始めた。

 

「まずい!こいつら逃げる気か!」

 

 クール星人の船長の指示通り、そしてリュウの予想通り、宇宙船は地球からの脱出のために再稼働し始めたのだ。しかも、他の星人たちを乗せた小型の円盤が次々と母艦であるこの宇宙船から排出され、直ちに逃げ出していく。

この宇宙船も少しずつだが、地面から離れ始めていた。まだ地上とも距離が近い今のうちに行かなければ。

 

「平賀君、早く降りてきて!!」

 

 地上から先に避難させられたハルナの、悲鳴に近い声が聞こえてきた。

早く降りなければ。そう思ったサイトだったが、ここで彼の足を止めてしまうものが、彼の視界に映ってしまった。

 

 まだ避難を終えていなかったためか、小さな子供が一人宇宙船の廊下に突っ立っていたのだ。その原因はすぐにわかった。

 

その子供の目の前に、『白くて丸い鏡のような発光体』が浮いているのだ。これはクール星人の罠なのか?

 

「あれが例の発光体か…?」

 

 そう思ったカナタだったが、すぐに違うものだと、次に入ってきた通信でわかった。

 

『隊長、ハルザキ隊員!もうじき星人の宇宙船に向けて、宇宙から向かってくる発光体が飛来します!このままではそちらに衝突してしまいます!』

「発光体が飛来?」

 

 カナタは首を傾げる。今、オペレーターが話していた飛来している発光体、それはどう見て今クール星人の船内にあるあれではない。きっと何かしらの別物だ。

 一方でサイトは逃げ遅れた子供の元へ駆けつけた。

 

「お前、何してるんだ!早く脱出するんだ!」

 

 脱出を呼びかけたサイトだったがその時、またクール星人の宇宙船が激しく揺れて、サイトは発光体に手を突っ込んでしまう。それだけだったらまだよかった。だが、この状況でもっと最悪なことがその時起こったのだ。

 

「な、なんだこれ!手が抜けない!!?」

 

 なんと、発光体にサイトの左腕が突っ込んでしまい、抜けなくなってしまったのだ。

 

すると、逃げ遅れた子供とサイトを助けに来たリュウが駆けつけてきた。子供を抱えたリュウはすぐサイトに呼びかける。

 

「お前も早く脱出しろ!」

「は、はい!

っぐ…んのお…!抜けねぇ…!!」

 

 地面に埋まった大きな株を抜こうとするように、サイトは無理やりにでも自分の腕を引っこ抜こうとした。だがさっきからちっとも左腕は抜ける気配はない。それどころか、何かに引っ張られているように彼の腕はずぶずぶと引きずり込まれていった。

 

折角GUYSが助けに来てくれたのに、こんなところで、こんな訳の分からないもののせいで、俺は…!!

 

このままでは…自分も、リュウとあの子供たちも…

 

「アイハラ隊長!俺に構わずその子を連れて行ってください!」

「何言ってんだ!お前も…」

 

 お前も一緒に脱出しろと怒鳴り散らすリュウだったが、地上と宇宙船の距離がもう限界に達しようとしていた。それはサイトも時間の経過と勘によって既に察知していた。

 

「もう時間がありません!早く!高凪さんのこと、頼みます!!」

「…く!」

 

 もう限界だ。これ以上留まったら自分も、今自分が抱きかかえているこの子供もこの宇宙船から出られなくなってしまう。やむを得ず、リュウは子供を抱えたまま入口から地上へ飛び降りた。

 

 サイトの乗る宇宙船が、地上から離れていく。もうこうなってしまった今、サイトは地上に戻ることなど不可能だ。飛び降りたところで死ぬのは目に見えているくらい、地上は遠すぎた。

 

「…」

 

 この変な丸い鏡のような発光体はなんなのだ。さっきから腕を引き抜こうとしても、全然腕が出てきてくれない。この発光体さえなかったら、こんな場所からさっさと抜け出せたのに!サイトはこの白い発光体が憎くなった。

 と、その時だった。遠くからギラリと、一筋の青い光がサイトの目に映った。まだ今は昼の時刻だ。なのにあそこまで光るものなんて見たこともない。流れ星…とは言い難い。しかもその光は消えもせず、段々を大きくなっているように見えた。

 

「!」

 

 まさか、こっちに近づいてきているのか!

 

「何をしている!早くこいつを回収しろ!」

 

 何者かの奇怪な声が聞こえてきた。発光体の向こう側から聞こえたようだ。サイトはその方へ目を向けると、そこには数十体ものクール星人たちが集まっていたのだ。

 こいつら、俺だけでも浚う気か!早くしなければ!たとえ地球に帰れない結末が待っていたとしてもこんなところで死ねるか!

 サイトは何度も、何度も発光体から腕を引っこ抜こうとするが、獲物に噛みついた蛇のようにしつこく、発光体はサイトを離してくれなかった。

 

「まずい!もう『奴ら』が!」

「あともうちょっとでせっかくの標本が手に入る所だったのに!」

「くそ!こうなったらあの小僧は捨てて脱出するぞ!」

 

 クール星人たちが騒ぐ中、サイトは後ろを振り返る。

 

 

 

 

 その時、彼は見た。

 

 

 

 

 

 

 

青い光の中で自分たちの方へ手を伸ばす、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴーグル付きマスクに隠れた、金色の瞳を光らせている、

 

 

 

 

 

 

 

 

鎧を纏った、蒼い巨人を。

 

 

 

 

 

―――――うわああああああああああああああああああああああああ!!!

 

 

 

青い光は、無情にも一直線にサイトやクール星人の主力が乗っていた宇宙船に直撃し、爆発を引き起こした。

 

 

 

サイトの意識はそこで一度途切れ、

 

 

 

「っぐううああああああああ!!!!!」

 

 

 

左手に感じる鋭い痛みと共に、彼は再び目を覚ました。

 

「な、なんだ…左手が、熱い…」

 

やたら熱さと痛みを感じる左手を見ると、見たこともない古代文字のような文様が、左手の甲に刻み込まれていた。

ふと、手の先に見えた、緑色の草に目が入る。さっきまで異星人の宇宙船に自分は浚われていたはずなのに、いつの間日常に戻ってきていたのだろうか。

サイトは視線を、今度は辺りの景色に向ける。

 

「…あれ…ここは…?」

 

目に映ったのは芝生を囲っている、外国の古い時代を思わせるレンガの塀と塔。そして…

 

「…あんた、誰よ?」

 

桃色の髪と瞳を持つ華奢な美少女だった。

 

そこからは次々と、平凡な学生生活から全く異なる生活の始まりだった。

 

自分をこの異世界、ハルケギニアに召喚したのはその少女、ルイズ・フランスワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールだった。

 

 




 サイトの嫌いなものに『体育の先生』とあったので、ちょっと勝手ながらその先生のくだりを追加しております。モデルは『ペルソナ5』に登場した最初の悪役『鴨志田卓』です。教師にして元オリンピック選手でありながら、人間として最低な本性を隠した男なので。
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