サイトはテクターギア・ゼロへの変身を完了し、二大怪獣と対峙した。
(よかった。前回の時のようなチビトラマン状態じゃなかった!)
『チビトラいうな!!』
無事本来の巨体への変身を遂げて一安心するサイトに、ゼロは怒鳴る。ともあれ、これでツインテールと戦える。ゼロはテクターギアから煙を吹かしながら構えを取った。
グドンとツインテールは、突然現れた強敵に動揺しきっている。は自分を挟み撃ちしている二体をじっと見ながら身構えている。
「シュア!」
真っ先に彼が立ち向かった相手はグドンだった。空中爆転で一気にグドンの背後へ飛んで着地、背中に蹴りを加えた。 グドンが倒れこんだところで、ゼロはその頭を強引に掴んでグドンを無理やり立たせる。続いて拳を数発、そして膝蹴りをグドンの胴体に叩き込んでいき、最後に尾を掴んでグドンのバランスを崩して地に倒す。
「!」
グドンがゼロと交戦している隙に、ツインテールが背後から迫ってきている。
すると、グドンもさっきのお返しと言わんばかりに、鞭を一度・二度・三度と連続で振う。
前と後ろからの挟み撃ち。ゼロはそれを、三度バック転で横に回避した。
二大怪獣の呉越同舟の挟撃は失敗、お互いが追突し合う形で終わった。
ゼロは体勢を整えて反撃に移ろうとして接近してみたが、ツインテールよりいち早くグドンが体勢を立て直し、ゼロに向けて鞭を叩き込む。
「GUEEEEAAAA!!!」
顔面に鞭攻撃を食らって、ゼロは地面に倒される。倒れこんだところでまた鞭を叩き込んできた。
「グ!ウオ!」
鞭の攻撃にゼロは手を出し切れずに…いや、彼は伊達にウルトラマンを名乗っているわけではない。鞭の嵐の中をかいくぐってグドンに向けて蹴りを一発、そしてジャブストレートを二度食らわせ、地上に投げ倒した。
しかし、グドンは立ち上った途端に両手の鞭をゼロの両腕に絡みつかせた。
「ヌゥ…グ!」
予想以上の強烈な力だった。そのせいか鞭を振りほどこうにも、全然ほどける気配がない。グドンは近づいてゼロに鋭い牙をむき出してきた。ツインテールという立派な餌を目の前に、前菜としてゼロに食らいつこうとしていた。ツインテールもその隙を突くように後ろから鞭を、ゼロの首に絡みつかせた。
このまま、ゼロは…サイトは怪獣たちの餌として食われてしまうのか!?
「ねえ、ちょっとやばくなってきてない!?」
次第に劣勢に立たされていくゼロを見て、キュルケが焦った声を出す。
ゼロが共通の脅威とみなされているようで、恐らく真っ先に殺した方がお互いの利となることを、怪獣たちは察していた。
もしゼロがここで倒れてしまえば、怪獣たちはお互いに争うこととなるだろう。
「…もうこれ以上は、私たちにできることはない。学院に戻って怪獣の出現を知らせた方がいい」
冷静にタバサが、最も安全な方針を提示した。怪獣が学院からさほど離れてない地点で出現した以上、学院の皆に避難を呼びかけるためにも学院に戻るべきだ。もう破壊の杖を取り戻すとかフーケを捕えるなどといった女王協ではない。
が、ルイズがそれに反論した。
「ちょっと待ってよ!サイトはどうするのよ!フーケだって、破壊の杖だって見つけてないのよ!」
「ルイズ、あんたの言いたことはわかるけど、あんな土壇場の中を、あたしたちがどうやって突っ切るっていうのよ。タバサのシルフィードが速くても、危険すぎるわ!」
キュルケが再度、ルイズに注意を下す。もちろんこれが当然の反応だろうということは、ルイズ自身もわかってはいる。わかってはいるのだが…
「あれって…!」
ルイズは地上に、太陽の光で反射してきらっと光る、あるものを見つけた。
フーケが奪い去ったはずの破壊の杖…MACバズーカが、ウルトラマンと怪獣たちの戦いの場と、今自分たちがシルフィードに乗っている地点の間くらいの地点の地面に転がっていた。
あれがあれば、おそらくは!
「…タバサ、一旦私を地上に下ろして!」
「ルイズ!?」
「あの破壊の杖、まだ撃てるはず。私がこいつで怪獣を撃ってみる!
怪獣を怯ませるくらいの隙を作れば、ウルトラマンを助けられる!」
「ルイズ、あんたって子は…」
あれだけ言ってあげたというのに、また無謀なことをしでかそうというのかとキュルケが言おうとしているのだろうと、ルイズは察していた。
「言いたいことはわかってるわ!でも!!」
だけど、とルイズはそれでもと言った。
「ウルトラマンは、私たちのために戦ってトリスタニアも魔法学院も救ってくれたわ。本当は私たち貴族がしないといけないことを、得体の知れないあの巨人がやってのけた。私たち貴族からすれば、命を救われた借りを返す義務があるのよ!
それに!」
ルイズの頭の中に、サイトの顔が浮かぶ。
ギーシュとの決闘でぼろぼろになっても頭を下げたくないからと諦めず、クール星人とかいう奴らの円盤の襲撃でも皆を守るべく奔走し、もっと伯爵がシエスタを強引に連れて行った時も連れ戻そうと躍起になり、そして今回だって…
あんな馬鹿な平民は見たことがない。主である自分の言うことに逆らうわ、立場も弁えずにほほをぶって説教はするわ…考えれば無礼極まりないことを連発する生意気な使い魔だ。
だけど…
「サイトは…私が初めて成功した魔法で召喚した、使い魔なのよ…」
彼が言葉を発する度に感じさせた、彼の心の熱さは…ルイズの胸を燃やす何かを感じた。
「使い魔を見捨てるようなメイジだって…メイジじゃないわ…お願い。行かせて」
「……」
キュルケとタバサは互いに顔を見合わせた。
「どこまでもバカな子。けど…そうね。あたしも彼に助けてもらった身でもあるし、ダーリンの命もかかってるものね。それに…」
やがて、ふぅ…と肩をすくめながらため息を漏らした。
「たまには、あなたに花を持たせるのもいいかも。一個貸しね」
「…!」
さっきまで反対していたキュルケが、自分に同調した。その事実に、ルイズは目を丸くした。
「なぁに?その豆鉄砲でも食らったような顔。ツェルプストーの女がヴァリエールに力を貸してあげるんだから、もっと喜んだら?」
「べ、別に!あ、あんたが私に乗っかるようなこと言ってきたから驚いただけよ!嬉しいとか、そんなこと全然思ってないんだから!」
顔を真っ赤にしてそっぽを向いたルイズに、キュルケはくすっと笑った。本当にわかりやすい子だとつくづく思う。
「タバサ、あなたは学院に先に戻ってて。あたしはルイズと一緒にここでダーリンを探して、ウルトラマンも助けに行ってくるわ」
タバサは、ルイズに乗っかることに決めたキュルケの言葉を聞いて、首を横に振った。
「わかってるわよ。あなたもあたしが、この子のバカに影響されたとでも言いたいんでしょ?」
「バカは余計よ!」
「違う」
タバサはそれに対してではない、と再び首を横に振った。
「三人が心配だから、私も残る」
「タバサ…そうこなくっちゃね」
タバサは他者に興味がなさそうに見えて人が良い。だから今回の任務にも一緒に来てくれた。怪獣と戦うことを決めたルイズたちを前にしても、同じだった。そんなタバサを友に持てた幸運に、始祖ブリミルへの感謝を述べたいものだと思えた。
こうして会話してる間にも、ゼロは苦戦を強いられている。
タバサの意思に従い、シルフィードが急ぎ地上へ、破壊の杖の落下地点へと赴いた。
着地と同時にルイズが真っ先に降りて破壊の杖…MACバズーカを拾い上げる。
確かサイトはこれを肩に担いで…ついさっき、サイトがこれで怪獣を撃った時の記憶を頼りに真似ながら、彼女も肩にMACバズーカを担ぐ。だが小柄で細い体のルイズには、バズーカは重かった。
「も、持ち上げれな…あれ?」
だが直後、ふわっとバズーカが軽くなった。後ろを見ると、タバサが杖を向けている。〈レビテーション〉の魔法で中空に浮かせてくれたようだ。
「ありがとうタバサ!」
「そのまま足で踏ん張りながら持ってて。撃った衝撃で後ろに吹っ飛ぶかもしれない」
「りょーかい」
礼はいいから言う通りに、とタバサは静かに告げる。キュルケが緊張感のない、しかし余裕を保った声で、ルイズが担いでいるバズーカの後ろを支えた。
「後ろはあたしが支えておくわ。あなたはちゃんと怪獣に破壊の杖を向けておきなさい」
「言われなくても!」
ルイズは言われた通り、両足で踏ん張りながら砲口を、ゼロを締め上げるグドンに向けた。
腕と首回り。グドンとツインテールの同時拘束に苦しめられながらも、ゼロは…サイトは起死回生の機を掴もうと、必死にもがいていた。
『ちくしょう、二体同時に締めてきやがって!ゼロ、何か武器とかないのか!』
『んなもん頼れっかよ!テクターギアで俺の体は光線や超能力のほとんどが使えねぇんだぜ!』
ゼロは確かに、武器は持っている。しかし、体の大部分がテクターギアに覆われたせいで、その武器も使うことができなかった。
『使えねぇ!』
『んだとぉ!!』
『おい、相棒たち!言い争ってる場合かよ!』
サイトの辛口評価にゼロが反発すると、そんな二人を諫める声が二人の頭の中に、デルフの声が響いてきた。
『その声、デルフ!?』
『どうも変身してる間、もう一人の相棒の中に俺っちもいるみたいだな。
けど、もう一人の相棒、本当にこの鎧、着心地が悪すぎるな!身を守る鎧としちゃ悪くねぇ防御力だが、お前さんの体を通して重さと硬さがめちゃくちゃ伝わってきやがる!』
デルフにとっても、このテクターギアの着心地は決して良いものではなかったようだ。
『くそが!こいつら、普段は捕食者と獲物の関係だってのに、こんな時に息を合わせやがって!元の姿だったなら、こんな奴ら!』
テクターギアさえなければ、グドンとツインテールが束であっても後れを取ることはない。単なる強気な発言かもしれないが、実際そうと思えてならなかった。
なんとかグドンたちの鞭と尾を振り解こうともがき続けるゼロの目に、地上に降りたルイズたちの姿が映った。
『ルイズたち、まだ逃げてなかったのかよ!』
サイトが声を上げる。あんなことがあったのに。そう思っていたサイトとゼロだが、デルフが二人に声をかける。
『落ち着けよ相棒たち。娘っ子たちの顔を見てみろよ』
吊られるように、サイトとゼロは、ルイズの顔を見る。
『特にお前さんのご主人、さっきまでみたいな自棄を起こした感じじゃねぇ。今のお前さんたちと同じ、ちゃんとした覚悟を持った目をしてやがる』
確かにデルフが言った通り、MACバズーカを担ぐルイズの眼差しは、先ほど怪獣を倒そうと躍起になっていた時と、何かが違っていた。
『ルイズ…』
ルイズの無謀な立ち振る舞い。サイトも馬鹿なのかと怒ったほどのことで、ゼロから見ても愚かだと思えた。
しかし、その涙を見てサイトが、明確な理由を言葉にできない何か熱い気持ちを沸き上がらせたように…
ゼロにもまた、同じ感情の高ぶりが起きていた。
刹那に、エメラルドグリーンに光輝く故郷の景色が過る。
自分を見る、光の国の同胞たちの声が蘇る。
自分を否定する言葉を。
『ゼロのことですが、どうも危うさを感じるんです。訓練相手をした私としては、訓練のはずなのに、本当に命を狙ってきてるような恐ろしさがありました』
『「敵は一体残らずぶちのめした方がいい。話し合う必要がなんてない、現場にいる知的生命体よりも敵の殲滅を優先」…あいつ宇宙警備隊をなんだと思ってるんだ』
『現地の星の生命を守るために戦うことが我らの使命だというのに、救うべき命を無視して敵の抹殺を優先するとは…』
『やはり、親がいない分、培うべき常識と心根が欠如しておるのやもしれんな』
『それもあるかもだが、彼の…力に対する執着が強すぎることだ。あれは単に孤独な生い立ちによるものだけではない。どんなに優れた師を仰いでも、あいつ自身が力を優先する思考を捨てない限りは…』
『一度、訓練学校に引き戻すべきでは?もし彼が道を踏み外すようなことがあっては、本来宇宙の平穏を保つことを使命とする我ら宇宙警備隊が、自らその脅威を振りまく本末転倒なことになりかねない』
――――あの、『ベリアル』のように…
力の差が歴然でありながら、それでも貴族の意地で怪獣に立ち向かおうとしたルイズ。
馬鹿にしてきた連中を見返したい。ルイズのその感情までは否定できなかった。
自分も…故郷の連中を見返したい気持ちは同じだから。
「………ああもう、じっとしてなさいよ…!!」
MACバズーカの砲口を怪獣に向け、照準を合わせるルイズ。
怪獣もウルトラマンも、ここ数秒はあの場所に留まって取っ組み合っているとはいえ、小刻みにもがき続けているせいで正確な照準を合わせられない。元より気の短いルイズとしても、じれったさや焦りが強くなっていく。
また、彼女は不安でもあった。もしここで、ウルトラマンに当ててしまうようなことがあっては…状況はもっと悪くなるだろう。
それでも、ルイズは逃げなかった。さっき怪獣に押しつぶされかけた時に自覚した恐怖があったが、それ以上に…
「どうしたのかしらヴァリエール?震えてるわよ。今になって怖気づいた?」
「だ、誰がよ!別に…別に怖くなんてないんだから!」
片方は祖先が幾度も戦争で争った家同士とはいえ、今はキュルケとタバサの存在がこの上なく頼もしい。内心では怖いが、それでも…
一度決めたことを全うする。ラ・ヴァリエールの女として、
ウルトラマンを慕う自分の使い魔、サイトの主として。
照準が、グドンの顔面をロックした。
勇気を振り絞ったルイズは、MACバズーカの引き金を引いた。
「きゃ!」
ボン!と爆音が響くと同時に、強い振動がバズーカを通してルイズとキュルケに伝わった。予想以上の反動に、ルイズとキュルケはバズーカから手を放してしまう。だが、照準通りバズーカの弾丸は、グドンの顔を直撃した。
「GUAAAAAAAAAA!!!」
グドンが鞭をゼロの腕から放し、ツインテールも今の一撃に驚いて、ゼロの首から尾を放してしまう。
「デュ!」
二大壊獣の拘束より解放された瞬間、ゼロはグドンの鞭を両手で掴み、思い切り引っ張り上げた。
「ヌウウウウゥゥゥ…!!!」
「GUOOOOOOO!!!」
鞭にも神経が行き渡っているせいで痛みを強く感じたのか、苦悶の悲鳴を漏らしたグドンが、ゼロに鞭から手を放すよう鞭で彼の叩いて来るが、テクターギアで身を覆うゼロには全く堪えなかった。
(っち、ルイズに続いて、こんな重たくて着心地最悪な鎧に助けられるなんてな!)
複雑な心境を抱きながらも、ゼロはグドンの鞭を力いっぱいに引っ張り…
ぶちっ!と引きちぎった!
「GAAAAAAAAAA!!!!」
グドンの苦しみもだえた悲鳴が響いた。自慢の鞭を失い、両腕に走る痛みにグドンは一時後ろへ下がるも、鞭を奪われた怒りをゼロに向け、鞭を失った腕を振り上げてゼロに復讐しようとする。
そうしようとした際にゼロから頭を掴まれ肘打ちを顎に受け、さらに頭上からの鋭いチョップにより、グドンは激しい脳震盪を起こしてふらついた。
グドンがふらふらになったところで、今度はツインテールがゼロに向かってきた。
「ディヤ!!!」
ツインテールもまた、歯の大部分を変身前のサイトに奪われてなお、残った牙を食いこませようとゼロに向かって口を開いて接近してきていた。
ゼロは、自身に向かってくるツインテールの口に、自らの脛を差し出すように足を突き出した。ツインテールはその足に嚙みついた。だが…牙は食いこまなかった。それどころか、嚙みついた途端にツインテールの牙がボキッと砕けた。ツインテールに噛みつかせた箇所は、高密度の金属である宇宙金属製のテクターギアで覆われた個所だった。
「KUAAAAAAA!!」
残った牙も失い、歯抜けとなったツインテールは、歯を失った口に走る激痛にもだえた。そんなツインテールの尾の付け根に向けて、ゼロが手刀を仕掛ける。
だが尾の力は強く、ゼロのチョップを跳ね返した。ならばと胴体に直接拳を叩き込むと、ツインテールはお留守になったゼロの足に噛みついてきた。だが歯を失ったせいで、噛む力が弱い。
「ちっ、性懲りも無く…」
ゼロは強引にツインテールの尾から抜け出し、足に噛みついてきた顔も蹴りつけた。
ゼロはツインテールに飛びかかる。だが、ツインテールはしゃがみと似た要領で体を丸め、ゼロの飛びかかりは空振りに終わり、結局背後に回り込んだ程度に終わる。すると、咄嗟にこちらを向いてきたツインテールが尾でゼロをぶっ叩いてきた。ゼロはツインテールから一度離れ、再び仕掛けようとしたが、ツインテールがしつこく尾を振い続けてきて近づきにくくなった。もう一度背後から仕掛けるか。ゼロは宙に舞いあがってツインテールの背後に回り込むと、後ろからツインテールの尾を掴みだす。
「KUAAAAAA!!!」
「グ…ウオォ!!…」
ツインテールはゼロの手を振りほどくと背後のゼロに向けて、二つの尾を伸ばす。再び首を掴まれてしまうゼロだったが、逆にその体勢のまま、ツインテールを巴投げで背後に叩きつけた。すかさず、地面の上に倒れたツインテールの胴体に抱きついて体を締め上げていく。ツインテールはゼロの呪縛から逃れようと必死にもがき続けていると、ゼロとツインテールは同時に地面に倒れこみ、そのままゴロゴロと転がっていく。少し転がった後、ゼロは立ち上がり様にツインテールの尾を掴み、ぶんぶんと振り回し、投げ飛ばした。ツインテールもついに、限界に達していた。
止めだ、ゼロは足を燃え上がる炎を纏わせ、空中へと舞い上がる。そして、地上にいるツインテールに向けて必殺の蹴りをお見舞いした。
〈ウルトラゼロキック!〉
「デエエエエエヤアアア!!!」
蹴り飛ばされて炎に焼かれていくツインテールは、地面に落ちた途端に爆発して消え去った。
「…デュワ!」
それを見届けたゼロは、空へ飛び去っていった。
「サイト!どこにいるの!」
「ダーリン!返事をして!」
ウルトラマンが怪獣を倒したことで、ルイズたちはフーケと、サイトの行方を捜索した。
だが、見渡してもサイトの姿はない。
破壊の杖を取り戻せても、サイトがいない。それではこの危険な任務を果たしたところで、虚しいものを感じ得ない。
「おーい!みんな!」
だが、そんな最悪な予想を砕くだけの、求めていた声が聞こえてきた。
「サイト!」
サイトが手を振りながら、こちらへ駆け寄ってきた。
「ダーリン、良かった。心配してたのよ!」
「危ないところをウルトラマンゼロが助けてくれてさ。いやぁ、死ぬかと思ったよ。たはは」
後頭部を撫でながら呑気に笑うサイト。
「もう!どこ行ってたのよこのバカ犬!」
ルイズはそんなサイトに腹が立って、ドスっと腹に鋭いパンチを見舞った。
「痛!ちょ、殴ることないだろ!?」
「ご主人様に偉そうな口答えや説教までして、頬をぶったあんたが言えることじゃないでしょう!」
「う…いやでもあれは…」
言われてみると、確かに人のことが言えなくなるようなことをしたかもしれない。でも、ルイズの泣き顔を思い出すと、どうしても体が動いてしまう自分を偽れなかった。
「…わかってるわよ。言いたいことは。でも…」
ルイズは、コンと、自分の額をサイトに当てて
「…心配したんだから」
彼女の顔からキラッと何か光るものが流れ落ちたのを、サイトは見つけた。
「ごめん、ルイズ」
女の子の涙を見た以上は、サイトは謝るしかなかった。そんな彼の腕に、今度はキュルケが自分の腕を絡ませた。
「ダーリン、あたしだってダーリンが怪獣とウルトラマンの戦いに巻き込まれてたらって気が気でなかったのよ。だからぁ、ダーリン成分を補給せさせぇ♥」
「ぬほぉ!?」
左の二の腕や肘、上腕二頭筋に温かで柔らかい感触が伝わり、サイトの口から情けない声が漏れ出た。
「キュルケ、くっつきすぎよ!」
一気に涙が引っ込んだルイズが声を荒げた。サイトからキュルケを引きはがそうと強引に引っ張る。
「やーん、ダーリーン、ルイズがあたしのシャツ引っ張ってくるうぅ~、あたしのシャツが破けて全部さらけ出しちゃいそう~」
「なにい!?」
「サイトおおおお!!あんたってやつは!」
「待ってって!俺何もしてないだろ!」
三人がわちゃわちゃしてる様を、タバサは特に何の反応もせずにじっと見ていた。口で言っても止まる相手ではない。ならほとぼりが冷めるまで待った方が良さそうだ。
「きゅい」
そんなタバサにシルフィードが頭で小突いて来る。お腹が空いたから早く帰ろうと催促している。
シルフィードのこれを無視してタバサは三人のわちゃわちゃを静観し続ける。
「…?」
ふと、タバサは何かに気づいて目を細める。
少し離れた木陰に、人影のように見える黒い影が一瞬だけ見えた。
見た目的に、どこかサイトと似たような…しかしその人影は、パッと見えなくなった。
幻だったのだろうか。でも確かに今…
「やーんタバサ〜、ヴァリエールがダーリンを独り占めしてるわ〜」
「ちょ、引っ張るなって!!」
「ひひ、独り占めって何よ!!ご主人様なんだから当然でしょ!あんたが勝手にじゃれついて来てるだけで…タバサ?」
タバサに助けを求めて来たキュルケと、それに続いてルイズとサイトも、タバサの様子に変化があったことに気づいて、揉み合いをやめた。
「誰かに見られてる」
「え?誰かって?」
サイトが周りを見てみる。ルイズとキュルケも見渡すが、誰もいない。
「誰もいないじゃない。何よ、てっきりフーケの仲間がいたのかと思ったじゃない」
人騒がせね、とルイズタバサに苦言を漏らす。
「ま、まぁいいじゃん。
フーケも捕まえて、破壊の杖も取り戻した。学院に戻ろうぜ」
「そうね、色々あって疲れたわ…」
ルイズがここに来て疲労感を自覚してシルフィードの背中に乗る。キュルケも双丘が揺れるくらいに背筋を伸ばしながら後に続いた。サイトも破壊の杖を担いでシルフィードの背中に乗ろうとした時…
「…!?」
視線を感じて足を止めた。
今の視線もルイズたちのものではない。まるで遠くからこちらを見る捕食者か監視者のような、鋭く刺さる視線だ。
サイトは再び周囲を見渡してみるも、やはり自分たち以外の人影など見当たらない。
「サイト、何してるの!」
「あぁ悪い!」
ルイズに詫びながら、サイトもシルフィードの背に乗り、彼女らと共に学院へ戻っていった。
(なんだ…?気のせいじゃないのか?)
そんな三人を…
伯爵家の屋敷の敷地内にもいた、白い短剣を持つ黒髪の青年が見つめていた。