ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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姫救出作戦開始

「見たことのない亜人が現れた、じゃと?」

 

ワルドから、姫誘拐の件の詳細を聞かされ、オスマンは目を見開いた。

 

「はっ、なんとかその亜人の縄張りを迂回しようとしたのですが、その際に黒いマントのメイジが現れ、姫殿下を拉致し、姿を消したのです。

遺された我々はなんとかその場を脱出し、トリスタニアに戻って捜索隊を編成、怪獣の目を掻い潜りながら姫殿下と賊を目下捜索中なのですが、捜索も滞りが生じている状況でございます」

 

「なんと言うことじゃ。姫殿下が拉致されてしまうとは」

 

オスマンは右手で顔を覆い、目を伏せた。まだアンリエッタは、この学院にいる子女たちと同じくらいの年齢の年若い少女でもあり、王宮暮らしの身分である以上、危険な目に遭った経験が皆無である分、不安も大きいことは想像に容易い。

 

「魔法学院からも姫殿下捜索のお手を借りるよう、枢機卿から命令が下されております。ただしことがことだけに、決して他言はされるよう、お願い申し上げます」

 

「わかった。教員の者を集め早急にことに当たらせるぞい。姫殿下はトリステイン王国の未来の柱となられるお方じゃ。すぐに探して保護しなくてはのう」

 

ワルドからの要請に、オスマンも前向きに応じる姿勢を見せる。教員や生徒たちは学院長の立場にある自分にとって危険な目に遭わせることは忍びないが、ここで逃げては貴族の名折れ。ましてや国の姫、つまり国の未来そのものの危機だ。

 

「では騒ぎになる前に対処いたしましょう。魔法衛視隊グリフォン隊隊長の名に、始祖ブリミルとトリステイン王国の誇りに懸けて」

 

オスマンに一礼してから学院長室の扉を閉じるワルド。

 

ワルドの姿は、扉を閉じると同時に…

 

 

――――影も形もなくなった。

 

 

 

 

 

 

「ルイズ、いいのかよ。勝手に学院抜け出して」

「ひゃ!いきなり耳元で話しかけてこないでよ!」

「わ、悪い!けどこうしないと聞こえないだろ!」

 

サイトとルイズの二人は、馬に二人乗りで走っている。

馬上なのでいつもの声量で喋っても風で聞こえなくなる。だから顔を寄せて喋りかけなければならないが、結果として異性の耳元で囁くことになった。

 

「いくらこの国のお姫様を助けに行くためって言ったって、お前とは特に接点なんてないだろ。もっと偉い人たちに任せといた方がいいんじゃないか?」

「接点なら大いにあるわよ」

 

少し薄情かもしれないが尤もなことを指摘するサイトに、ルイズはそう言い返した。

 

「え?」

「恐れ多いことだけど、私は幼い頃に姫様の遊び相手を務めてたのよ」

 

あぁ、とサイトは少し納得した。使えるべき主というだけでなく、古い友人でもあったことが結びついていたのだ。

 

「なるほど、幼馴染って奴なのか。すげぇな」

「そ、それほどでもないわよ。

まぁ、あんたみたいな平民と違って私は公爵家だし、たまたまだけど年齢も近かったから、それで遊び相手に選ばれたんだから」

 

少し照れたルイズは、照れを隠すように身分マウントをかけつつ手綱を握りなおし、前を見つめる。

 

「だから…私の国と姫様への忠誠を示すためにも、姫様を助けにいかないといけないの」

 

サイトは、ルイズが本気で姫を助けに行きたいのだと察した。ただ一方で、違和感を覚えた。

 

「…素直に言えよ、ルイズ。そんなの関係なしに、昔の友達を助けに行きたいんだって」

 

そう、言い方がサイトにとって適切なそれではなかった。友達を助けたい。それだけで十分ではないか。忠誠とかそんなことは別に要らないはずだ。けど、この素直じゃない貴族のご主人様はそうもいかない。

 

「あ、ああああんた、それは大それた言い方ってものよ!わ、わわ私はただ」

「別にいいだろ。人を助けるのに理由なんかなくったって。ましてや、友達なんだろ」

「…いいこと?私は」

「俺は、いちいち理由をこじつけるより、素直に助けたいって言う方がいいと思うぜ」

 

 なおも、自分はあくまでトリステイン貴族、ひいては姫の臣下としてあるべき姿勢を貫くためにとサイトに主張しようとするが、サイトの裸の心のままの言葉に遮られる。

 

「…あああもう!さっさと行くわよ!姫様の命がかかってるんだから!」

 

居た堪れなくなり、ルイズは顔をますます赤くして馬に鞭を打つ。二人を乗せた馬はさらに馬力を増して速くなり、サイトはうおぉ!と悲鳴を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

現場に残り続けている魔法衛士隊は、王宮から派遣された捜索隊と合流し、アンリエッタと誘拐犯の捜索を続けていた。

そこへ、オスマンへの報告を済ませてきたワルドがグリフォンに乗ってやってきた。ルイズたちの乗る馬よりもずっと早い到着だ。

 

「ワルド隊長!」

「殿下はまだ見つからないのか?」

「申し訳ありません!くまなく探しているのですが…」

 

跪いたグリフォン隊の隊員は、成果を上げられていないことを詫びるしか無い。

 

「もう付近の捜索は完了しており、そのうえで賊も姫殿下も発見できておりません」

 

あぁ、殿下…おいたわしや、とその兵士は姫の安否を思って深いため息を出した。

 

今の魔法衛士隊はその時の事件で兵力が減り、今も謎の亜人によって姫護衛の任に付いていたメイジが更に減ってしまっている。これ以上の消耗は避けなければならなかった。その上での姫の救出や誘拐犯の討伐…難易度がかつてないほどに高すぎる事態であった。

 

「姫殿下の行方が分からなくなってもう数時間です…大丈夫でしょうか」

「…」

 

ワルドは黙った。

怪獣の方を見つめ、苦々しい表情でそれを見つめていた。

 

すぐに返事を返さない隊長を、その兵士が訝しむ様に顔を覗き込む。

 

「隊長?」

「…あぁ済まない。少し私も考えていたところでな。

 

なんにせよ、今のうちに殿下を見つけ出せ。見つけたら即刻私に報告せよ。今からこの森を封鎖する。近くを通る一般の者がいた場合は決して通すな」

 

「は!」

 

 ワルドの命令を受け、部下たちは森の周辺を囲う形で陣取りに各地へ散った。

 さて、とワルドは一人残ったのを確認すると、森の外の…魔法学院の方を遠い目で、何かを待ち望むように見つめた。

 

 

 

 

(『奴』め、一体何をしている…)

 

 

 

 

 

 

 

 さて、その頃のサイトたちはというと、その森の前に生い茂る茂みに身を隠していた。

 

「宮仕のメイジが封鎖してるようだな。

大方、怪獣を森から逃げぬようにするため、森に外部からの人を近づけないためというところかね」

 

 サイトの背負われたデルフが鞘から顔を出してそう言い、やっぱりとルイズが呟く。

今の彼らの視線の先には、森を包囲している魔法衛士隊の姿がある。行方不明になった姫の捜索に進展がないことが予想できた。

 

「ねぇサイト、確か姫様を攫ったのって、黒衣を纏った男と、見たこともない姿をした亜人だってワルドが言ってたわよね。心当たりないの?」

「うーん、正直なんとも言えないな。怪獣とか異星人つったって、すげぇ数の種類がいるんだ。黒服とか亜人って言われても、それだけじゃどんな敵なのかわからねぇ」

「なによぉ、使えないわね」

 

あんまりな言い方をされてサイトはカチンときた。

 

「おい、使えないはないだろ!相手の特徴が少ししかわかってないんだぜ!

じゃあお前だって何ができるってんだよ!お前の失敗魔法で怪獣や宇宙人を倒せるのかよ!

何もやってない自分のこと棚に上げやがって!どうせあのワルドとかいう婚約者にデレっとしてたんじゃねぇのか?」

「う、うっさいわね!期待させるだけさせといて、あんたこそ人を無闇に落ち込ませたいの?!姫様の命がかかってる大事な時に!だいたいあんただってキュルケやあのメイドにデレデレしてるじゃないの!」

 

『お前らな…』

 

サイトの中でゼロは状況も弁えずやがて口喧嘩に発展した二人にはぁ…と呆れた。うるさくて敵わないし、これでは森を見張っている兵たちにもバレてしまうではないか。

 

「おい、向こうが騒がしいぞ」

 

そんな時であった。ついに兵たちが二人の喧嘩を聞いて、こちらに歩いて来た。

 

やばい!気づかれたか?

 

「あーあ、相棒たちが揃って痴話喧嘩なんざすっから」

「誰が痴話喧嘩だ/よ!」

 

呆れたデルフに、サイトとルイズの声が揃ってしまう。

 

「今の声、あの茂みからだな。急げ!殿下を拐かした賊かもしれない!」

 

 まだ百数メイル分の距離だが、兵たちがここへ来るまでに1分もかからないだろう。フライの魔法でも使われたらさらに早い。やばいからと背を向けて一目散に走っても、尚のこと姫誘拐の犯人として疑われてしまう。

 

「おい、どうすんだよルイズ」

「…あああもう…!わかったわよ…じゃあ私が」

 

 ルイズは自分の実家の名と,ワルドの婚約者としての立場を名乗ることで疑いを晴らすしかないと思った。だがこの手段は、実家やワルドに余計な迷惑をかける手段であり避けるべきことなのだが、背に腹は変えられない。

そんな時だった。

 

 

「はーっはっはっは!お困りの様だね!」

 

 

 彼らの後ろから聞き覚えのある少年の声。

振り向いたそこにいたのは…

 

 

「ギーシュ!?お前なんで来てんだよ!」

 

「やぁサイトにルイズ。君たちの轟く叫びを耳にしてやって来たよ」

 

 魔法学院のプレイボーイ、ギーシュであった。

彼は馬から降りてキラッと白い歯で薔薇を加えるポーズを取る。うわ…とサイトたちは引いた。

 

 ギーシュの乗る馬…本人の趣味が反映されているためか、薔薇の飾り付けがド派手に付けられている。腰掛けている鎧も薔薇の意匠があつらえてあり、正直センスが酷い。馬が可哀想に思えた。

 

「話なら聞かせてもらったよ!アンリエッタ姫殿下が賊に攫われたと聞いたなら、この学院一華麗な青銅のギーシュも向かわずしてなんとするか!」

 

「あんたが来たってどうにもならないでしょうが!」

 

「そうは言うがルイズ、そんな君とてできることがあるのかい?殿下の居所について当てはないのだろう?それに今は、近づいてくる兵たちをやり過ごした方が良いのでは?」

 

 うぐっとルイズは息を詰まらせる。悔しいことに事実なのだが、指摘を入れたのがこの男だというのが癪に触る。

 

「そこの指摘を包囲しろ!逃すな!」

 

実際今もサイトたちのいる茂みはグリフォン隊の兵たちが取り囲みつつある。完全に疑いをかけられている状態だ。

 

「安心したまえ!そんな君たちに僕が頼もしい助っ人を呼んでおいた!」

 

「助っ人?」

 

「さあ、おいで!僕のヴェルダンデ!」

 

 ギーシュが呼びかけてると、ずずっと地面が盛り上がっていき、そこから大きなモグラが顔を出してきた。

 

「おぉ!来てくれたねヴェルダンデ!その宝石のように輝くつぶらな瞳、相変わらず綺麗だね!」

 

馬から降りたギーシュはひしっとその大きなモグラを抱きしめる。

 

「でっけぇモグラだな…怪獣?」

「失礼だな。彼が僕の使い魔ヴェルダンデだよ。ジャイアントモールという生き物なんだ」

 

 愛するモグラを怪獣扱いされたことにギーシュは不満を顔に出す。ルイズはそのモグラ…ヴェルダンデを見て目を細める。

 

「そんなモグラがなんの役に立つのよ」

「ちっちっち。わかってないな君は。僕が無策にこの子を呼んだとでも思ったのか?」

 

 指を振りながら余裕ムーブをかますギーシュ。やはりウザいなとルイズは思った。

 

「ヴェルダンデは宝石好きでね。僕のために地面を掘ってはそれを見つけてくれるのだよ。土のメイジである僕にとってこれ以上ない能力だ」

「趣味の悪いモグラだな」

 

馬に煌びやかに薔薇飾りを纏わせる趣味の悪さといい、使い魔も中々の趣向の持ち主様だ。

しかし、ヴェルダンデの特技を聞いてルイズは閃いた様に手を叩いた。

 

「いえ、でかしたわギーシュ!そいつの嗅覚があれば、姫様の身につけてる装飾品の匂いを辿れば…!」

 

「…!そうか、こいつにお姫様の宝石の匂いとかを追ってもらえりゃ、攫われたお姫様がどこにいるのかわかるってことか!

なんだよ、お前やるじゃねぇか」

 

「はっははは!そうだろうそうだろう?もっと褒めてくれても構わないぞ!」

 

ルイズとサイトの二人から褒められ、ギーシュはすっかり調子づいてしまう。

 

「よし、ヴェルダンデ!この近くに上等な宝石の匂いを追うんだ!そこに我らが可憐なアンリエッタ姫がいるかもしれない!」

 

主人に命じられ、張り切ったヴェルダンデは再び地面の中に潜っていった。

 

「頼むぞヴェルダンデ。なんとしても殿下を見つけるんだ」

 

使い魔が潜っていった洞穴の中を覗きながら、ギーシュはヴェルダンデの検討を祈る。

 

「この馬も逃してやらねば。これだけ美しく着飾った君を野に放つのは気がひけるが、これも姫殿下と友を救うため。どうか許しておくれ」

 

 続いて、自分が乗って来た馬の尻を叩き、ギーシュの乗っていた馬は、薔薇の飾りを散らしながら遠くへ逃げていく。それを見た兵士が「追いかけろ!」と叫んで馬を追っていく。姫を攫った犯人が乗って逃げたと思ったのだろう。

 

ルイズは、ギーシュへの認識が改まっていった。

 

「ギーシュ、私あんたのことみくびってたかも。あんたの姫様への忠誠心、同じ貴族として…」

 

「これで姫殿下を見つけた暁には、このギーシュ・ド・グラモンは殿下とお近づきに…むふふふ」

 

 前言撤回。やはりギーシュはどうしようもない女好きの色情魔であった。本音では、アンリエッタにお近づきになりたかっただけであった。それも相変わらずの劣情で。

 

「サイト、こいつが姫様に手を出したら殺しておいて」

 

「りょーかい」

 

後でモンモンにもチクッとこうとサイトは誓った。

 

 

 

 

 

地面を掘り進んだギーシュの使い魔ヴェルダンデは、その嗅覚を頼りに地面を掘り進んでいく。

即興で作った洞穴であるため、道は整っていない。しかもろくな灯りもない。なんとか人が通れる程度の広さだが、やはり狭いし天井も低めだ。

 

「きゃ!」

 

そのため足を取られて転ぶこともあった。ルイズはこれで三度ほど転んでしまい、制服は土まみれになった。

 

「おいおい大丈夫かよ?さっきから転びまくりだな」

 

気を遣いながらも、また転んだルイズにサイトはおかしくなってつい吹き出しかける。

 

「へ、平気よこれくらい。って言うか、転ぶ前にちゃんと受け止めなさいよ!何度も転んでるんだから!」

「だったらもっと気をつけて歩けよ」

「またそんな口きいて!」

 

使い魔から生意気な口を叩かれて(ルイズの主観からによるものだが)、ルイズはますます不機嫌になる。

 

「んもう!ギーシュ、使い魔にもっと整った道を作るよう言えないわけ!?」

「頼み方がなっちゃいないなルイズ。今の我々は姫殿下救出という緊急を要する使命を負っているのだ。その気になれば確かにヴェルダンデに綺麗に美しく整った街道を地下に築くなど造作もないが、そうしている間に殿下にもしものことが起こりうるのではないかね?

まして、君は僕と違いドットクラスの魔法も使えないではないか。文句を言うなら僕の代わりに松明の火を起こすくらいしてみせたまえ」

 

ギーシュから尤もなことを言われてルイズは推し黙る。

 

「お前じゃ火は出せねぇのか?」

「残念だが僕は土のドットクラス。他の系統魔法も、ラインクラスの土魔法もまだ未習得だ」

 

まぁいずれ会得して見せるさと、ギーシュはサイトに、自信ありげに気取った。なんだよ、こいつも火を起こせないのか、魔法使いのくせにとサイトは心の中で悪態をついたが、そもそも自分なんてルイズと異なり失敗魔法すら使えない異世界人だから何も言えないので、胸の内に仕舞った。

 

「まぁ灯りもなく整備されていない荒れた道だが安心したまえ。ヴェルダンデはまっすぐ殿下の装飾品らしき高貴な宝石の匂いをまっすぐ追っている。殿下の元に辿り着くのも時間の問題さ」

 

さあ、華麗なるこの僕に着いて来たまえ!と、薔薇の造花の杖を前に突き出して先陣を切るギーシュ。何仕切ってんだよと思いながらも、その言葉を飲み込んで、ルイズとサイトは後に続く形で洞穴を進んでいった。

 

やがて闇の向こうから、一筋の光が見えてきた。そろそろ出口のようだ。

 

「やっと出られるのね!もう土まみれになるのはうんざりだわ」

 

ルイズがやっとこの荒れた地下道の旅が終わることに安堵する。

 

「あぁよくやったぞヴェルダンデ!これで華麗なる我らの姫殿下への、トリステインへの忠誠を示すことができる!」

 

きっとヴェルダンデは出口付近で待機しているはずだ。

 

「きゃあ!!」

 

だが、そんな彼らの意識を現状に引き戻す声が耳に入る。

今のは外からの、それも女性の声だ。

 

「今のは、殿下の悲鳴だ!」

 

つい穴の外へ飛び出そうとするギーシュだが、がしっとサイトがその肩を掴んで引き留める。

 

「ちょっと待った。俺が見てくるよ」

 

「君という奴は野暮な男だな。姫殿下を救出する役目はこの僕、ギーシュ・ド・グラモンだぞ。さては僕より先に殿下を救い、手柄を独り占めする算段かね?」

「んなわけあるか。穴の外で何かやばい奴がいるかもしれないから、俺が見てくるって言ってんだよ」

 

往生際悪く自分が真っ先に外に出ようとするギーシュを止めるサイト。ここまで自分たちを連れてきてくれたことは感謝すべきだが、こいつを先行させてお姫様に手を出すことがないようにしなければ。

 

「それを野暮と言うんだ。いいかね、僕は姫殿下を」

「男ども邪魔。言い争うくらいなら私が見てくるわ。ここに来るまで何もしてないし」

 

 二人が言い争ってる間に、見ていられなくなったルイズが強引に外に出た。

 

「あぁ、ずるいぞルイズ!」

 

穴の中からギーシュが非難の声を上げるがどうでもいい。

 

穴の外に出ると、フーケ事件の時よりも薄暗く鬱蒼とした森が周囲に広がっていた。穴の傍らではヴェルダンデが待っている。早く自分の主人に褒めてもらいたいのか、もきゅもきゅと高揚感のある鳴き声を漏らしている。

 

「モグラ以外いないわよ」

 

異常はないことを、穴の中にいる二人に知らせるルイズ。ギーシュはさぞ無念そうに、後に続く形で穴の外に出た。

 

その直後だった。

 

 

「動くな」

 

 

 知らない男の声が、サイトたちの耳に入った。

 同時に、ギーシュの後頭部に銃口らしき固い何かが当てられた。

 

 

 

 銃を向けていたのは、サイトたちとは別に、モット伯爵家の屋敷を訪れていた、白い短剣を持った青年だった。

 

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