ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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もう一人の地球人

「ひう!?だ、誰だね!?」

「動くなと言ったはずだ」

「ひぃ!」

「ギーシュ!」

 

謎の男が脅すように言って来てさらにギーシュの後頭部に銃口をゴリっと押し付ける。怪獣がすぐそばに居る恐怖を、見栄を張ることで誤魔化していたギーシュだが、自分の頭に銃口が向けられていることを自覚し青くなる。振り返ることすら許されていない。

 

「どうしたんだルイズ、ギーシュ!そこに誰かいんのか?」

「サイト、まだ出てこないで!ギーシュが危ないわ!」

 

サイトもただ事ではないと察し、ルイズたちに呼びかけるが、今度は外に出るなと来た。一体何が?

 

サイトはじっと目を凝らすと、外の様子が見えた。こちらに背を向けた姿勢で固まっているギーシュの後頭部に、誰かの手に握られている銃が押し付けられている。

 

いや、あれは…銃には見えなかった。時計のように腕に付けている携帯機械に銃口が備え付けられていて、それをギーシュの頭に押し付けているようであった。

 

「…俺の質問に答えろ。ここで何をしている?」

 

男は淡々と冷たくギーシュに問う。

 

「ぼ、僕は…アンリエッタ姫殿下を華麗にかつ優美に救いに来た勇者、トリステイン魔法学院一美し「引き金を引かれたいのか?」……殿下を救出しに来た魔法学院の者でしゅ」

 

ギーシュの要らない名乗り口上にイラっと来た男は、さらにもう一思いに銃口を押し付ける。さすがのギーシュも、もう自分を飾るようなことを言えずただ質問に答えさせられるしかない。

 

「姫の救出?」

「そ、そうだ!決して怪しい者じゃない」

「…」

 

男はそれでも、ギーシュへ不信感を払拭できずにいた。ギーシュの派手な身なりが、本人は至って普通のつもりでも他者から見れば演じているとしか思えないほどの過剰なナルシストキャラが、彼の怪しい者ではないという主張との奇妙な矛盾も生んでいたのもある。

 

「穴の中にいる奴、お前も出てこい」

 

 男は、穴の中で待っていたサイトたちにも呼び掛けた。こっちにも気付いていたのか。だが仲間の命を握られては仕方ない。サイトは言われた通り外に出た。

 

「さ、サイト!」

 

助けを乞うようにサイトたちの名を呼ぶギーシュ。

 

サイトは…その男の姿に驚いた。

 

(こ、こいつ…!)

 

まず気になったのが、その男の服装だ。

 

洒落たベージュの長ズボン、赤いシャツの上に羽織われた黒い半袖薄手のジャケット。何より…その男の頭から生えた、

 

 

自分と同じ黒い髪。

 

 

服装と髪色の特徴から、彼の中にある予想が生まれていた。

 

「なぁ、あんた…」

「ギーシュを放しなさい!」

 

しかしそんな彼の意思を撥ねつけるように、ルイズが男に対して怒鳴った。

 あぁ、せっかく気になることを訊こうと思ってたのに!とサイトは無念に思う。だがギーシュの身がかかっている。文句は言えない。

 

「…」

 

 しかし男は無言で何も答えない。ルイズが妙な動きでも見せないか、それを見極めようとじっと彼女を睨んでいた。

 

「放せって言ってるのが聞こえないの?貴族の言うことが聞けないわけ!?」

 

言うことを聞く気配のない男へ、ルイズは苛立ちを募らせていく。

 

「それともなに?姫様の次はそいつを浚おうとでもいうのかしら?」

「浚う?なんのことだ」

「とぼけんじゃないわよ!こっちの情報では、黒い服の男が姫様をかどわかしたことは掴んでいるわ!あんたもちょうど黒い服を着てるじゃない。今だってギーシュの身を盾にこっちに言うことを聞かせようとして、賊はつくづく貴族に嘗めたことしてくれるじゃない!」

 

彼女の中で疑惑が沸き上がっていた。今のこの男のギーシュへの行動、ワルドが言っていた黒い服…この男が姫を攫った犯人だと言う疑惑がルイズの中で確定した。

 

「…煩いガキだ」

「な、なんですってぇ!?」

 

 男の言い方に貴族のプライドの高さもあって、ルイズは怒りで顔が真っ赤になる。

 

「ああもう!サイト、こいつをとっちめなさい!」

「ルイズうううう!!!ぼぼ、僕のことを忘れてるんじゃないのか!?いやそうだよな!!?サイト、助けてくれぇ!君だけが頼りだ!」

 

ギーシュはすっかり自分の命をそっちのけにされて悲鳴まじりに声を上げた。

 

「ルイズ…?」

 

すると、傍の草陰からがさっと音がした。ルイズはもしや仲間が他にいるのかと疑って杖を構えようとした。

 

「あぁ、やはりルイズだわ!久しぶりね、ルイズ・フランソワーズ!」

 

構える前に、草の中から一人の人物が姿を現した。やはり誰か隠れていたのか?仲間がいたのかと警戒を抱くルイズ。

 

しかし、その人物を見て、ルイズとギーシュは目を丸くした。

 

「え、嘘…?」

 

純白の高貴なドレス、王族であることを明かす極上のダイヤモンドのティアラ、セミロングの紫色の髪。

 

行方不明になっていたはずの、アンリエッタ姫その人であった。

 

 

 

 

 

 

アンリエッタはルイズをひしっと抱きしめた。本人が花だと民衆から形容されている通り、花のような香りがルイズの鼻腔をくすぐる。

 

「姫様!もしかして私のこと覚えておいでに…」

 

「忘れるはずないじゃない!私にとって数少ないお友達だもの!あなたと過ごした幼い頃の記憶、昨日のことのようにはっきり覚えてるわ!

ああ、懐かしいわルイズ!またこうして、懐かしい友人であるあなたと会えるなんて!!」

 

 まさか自分のことを覚えてくれていたなんて。ルイズはいちトリステイン貴族、それも公爵家の娘ということもあり、アンリエッタに対し忠誠の他にも強い憧れも抱いていた。

そんな彼女が自分を友人として覚えていてくれたなんて…

 

だが、公爵家と王家では立場が違うことも理解している。幼い頃、遊び相手になった時とは違うのだ。

 

「いけません姫様!こんな下賤な私にそのようなこと…」

 

ルイズは、すぐさま彼女を引き離して神妙な面持ちで跪く。そんなルイズをアンリエッタはせつなげな眼差しで見つめる。

 

「そんな堅苦しい挨拶は止めて頂戴ルイズ。私たちはお友達じゃない。ゲルマニアからの帰省を利用して今日魔法学院に来ようとしたのも、あなたの顔を見たかったからなのよ。今のあなたを見たとき、元気そうで安心したわ」

 

「私とお会いになるためだけにそんな…感激ですわ」

 

 この国の姫が、自分に会いたいがために今この国を取り仕切っている枢機卿に懇願までしてくれたことにルイズは感激する。

 

「お、おお!アンリエッタ姫殿下…!ご無事だったのですか!このギーシュ・ド・グラモン歓喜の…!」

 

アンリエッタの何事もない健勝な姿、それ以上に街で盛大なパレードが行われても遠目で見ることしか叶わなかった可憐な姫を、こうしてすぐ近くで拝見出来ただけでも気絶しそうなくらいの喜びがギーシュの中で溢れる。

 

「グラモン?もしや、あのグラモン元帥の息子なのですか?優秀なご子息が幾人かいらっしゃると聞き及んでおりましたが」

「は、はい!四男にございます!」

 

父や兄たちの存在もアンリエッタに認知されている。それが一層、グラモン家の者であることが誇らしくなったギーシュ。

 

「ルイズには頼もしいお友達がいるのね。この危機を察して、私を助けに来るその勇気、王女として鼻が高いわ。その忠義、これからも貫いてください、ギーシュさん」

「…!!!!ひ、姫が…僕の名を呼んで…」

 

アンリエッタににこっと笑顔を向けられ、ギーシュは危うく昇天しそうになった。願わくは彼女に触れ、この薔薇のギーシュの力を持って彼女を魅了して…などと、自分でも不遜だと思いながらも下種な欲望を抱く。

 

「おい」

「……光栄の極みでございます」

 

無粋にも人質として自分を見張っている男がいるため、喜びは半減し阻止されたが。

 

 サイトは、元より思春期の少年で彼女募集中の身であることもあり、アンリエッタの美貌には見惚れるものがあることを自覚していた。

 

(ギーシュみたいに言うつもりじゃねぇけど、確かに可愛いな…うちの学校にいたら絶対モテるぜ。それも…)

 

しかも…サイトの好みである豊満な果実の持ち主。シエスタも大きいがそれ以上、一方でキュルケ未満。だが十分過ぎるほど。

 

『なーに考えてんだよ。いけないんだー』

 

水を差すようにゼロの声が聞こえてくる。っぐ、人がちょっと良いものを見れた時に…プライバシーもへったくれもない自分の中の同居人にサイトは苦虫を噛む思いを抱いた。

 

でも、ある意味アンリエッタよりも気になる存在がいる。

 

自分と同じ、この黒髪の青年のことだ。

 

「じゃあ、この男は…」

「大丈夫よルイズ。彼は勇敢にも私を助けてくれた命の恩人よ」

 

ルイズは改めて、誘拐犯だと思っていた男を見やると、アンリエッタは笑みを浮かべて言った。

 

「助けて、くれた…?こいつが姫様を?」

「ええ、学院へ向かう途中、私の一行は見たこともない亜人と黒マントのメイジに狙われたの」

 

 

 

 

 事は、アンリエッタが謎の亜人の襲撃を受け黒マントに攫われた時から、ルイズたちがヴェルダンデの嗅覚を頼りに穴を掘り進んでいる最中に至るまでに遡る。

 

 亜人の襲撃のどさくさに紛れて、黒マントの男がアンリエッタを誘拐、抵抗する彼女を大人しくさせるべく、黒マントが彼女に杖を振り翳して来た、そのタイミングだった。

 

 一発の青白い光の弾丸が、黒マントのレイピア型の杖を弾き飛ばし、黒マントは直後、何者かに蹴飛ばされた。

 

「ぐ…!?だ、誰だ」

 

 草の上を転がされた黒マントは、アンリエッタから十数歩ほど離れた場所まで転がったところで持ち直し立ち上がり、自分の邪魔をして来た者の姿を目で追う。

 

「…」

 

 その人物こそ、あの黒髪の青年だった。白と紺色、2丁の銃を持って黒マントに銃口を向けてアンリエッタの前に立っていた。

 

「ふん、見たところただの平民のようだな。失せろ、魔法が使えない平民ごときが」

 

 さっさと消えろと告げる黒マントだったが、返事は弾丸だった。

 黒髪の青年の発砲で脚を撃ち抜かれた黒マントが顔を上げて青年を睨む。

 その表情は…見えなかった。その黒マントは素顔を、まるで奇術師が被るような仮面で覆い尽くしていた。

 

「貴さ…」

 

 でも忌々しそうな低い声が出ている通り、その下は苦悶と怒りに満ちたものだろう。

レイピア型の杖を構えて魔法を放とうとするものの、その前に赤く光る弾丸が黒マントと仮面の男を襲う。

 未熟なメイジならば、詠唱する暇も与えられず青年の撃つ弾丸に倒れるだろうが、この仮面の男は違った。

 青年の打ち込む赤い弾丸を、レイピア型の杖で弾き飛ばした。まさか弾丸を弾き飛ばされるとは思わなかったのか、青年は一瞬目を見開き、すぐに細める。

 

 仮面の男は、しめたと仮面の下でほくそ笑んでいた。銃口の向きさえわかれば、弾丸を弾き飛ばすなどたやすい。

 もはや怖くないと思ってレイピア型の杖を構えて一息に駆け出した。だが青年は動じることなく、今度は白い銃の引金を引き弾丸は仮面の男に打ち込んだ。

 やはり撃ってきたかと仮面の男は、自分の勝利を確信した。こんな弾丸、自分の魔法で貫いてくれる!と意気込みながら。

 仮面の男は呪文の詠唱を完了し、放たれた青白い弾丸に向けて放った。

 だが仮面の男は見くびっていた。今の白い銃による弾丸は、ただの銃弾ではなかった。

 

「〈エア・ニードル〉!」

 

 名前の通り、針のように鋭い、貫通力に優れた風の魔法。それが青白い弾丸を貫き、そしてそれを撃ってきた青年の胸をも貫こうとした。

 

 だが…そうはならなかった。

 

 青白い弾丸は、エア・ニードルとぶつかった瞬間それをかき消し、逆に仮面の男に直撃した。

被弾した仮面の男は、青白く発光していく。

 

「が!?…ば、バカ…な…」

 

 なぜ、魔法も使ってもこない相手に、メイジである自分が敗れるのか。それを理解できぬまま、消滅していった。

 

「消えた?もしや『偏在』の分身…!」

 

 だが消滅の仕方が奇妙であった。空気中に溶け込むように消えたその様は、言葉通り風そのもののようであった。

 アンリエッタはこれを、魔法によるものだと見抜いた。

 スクウェアクラスの風系統の魔法、〈ユビキタス(偏在)〉。自分の分身を作り出すだけでなく、それらは自分と同じ思考を持ち、装備品ごと分身するものであるため、魔法も撃つことができる上、本人の意志の強さに比例して行動範囲も広がる、スクウェアクラスのメイジでも使うどころか習得すらも相当の天才的メイジでなければ不可能な上級魔法だ。

 

「やはり幻影だったか」

 

 青年も、少なくとも仮面の男が本人ではなく、存在そのものが幻であったことを察していたようさ。

彼はアンリエッタの方に向き直った。

 

「怪我は?」

「あ、ありがとうございます。おかげで助かりました」

 

 手を伸ばしてきた青年の手を取り、アンリエッタは立ち上がり、上品にドレスのスカートの裾を持ちながら優雅に挨拶する。

 

「差し支えなければお名前をお訊きしても?私はこのトリステインの姫、アンリエッタですわ」

 

「…これは失礼した。自分は…」

 

 青年も相手が姫だと分かり、その礼に自分の習おうと自己紹介しようとしたところで、彼は何かに気づいてハッと顔を上げると、

 

「走れ!」

 

 姫の手をガシッと掴んで引っ張っていた。

 

「え?」

「早く!!」

 

 困惑する姫を青年は強引に引っ張った。瞬間、二人が経っていた場所の背後の大木が、スパッと豆腐のように切り裂かれ、根元から倒れた。

 

「まさか、さっきの仮面の男の本体か他の分身が…いえ、もしや!?」

 

この時のアンリエッタの悪い予感は、当たっていた。

切り倒された木々の向こうに、数刻前に自分の一行を襲ってきた、あの凶刃を誇る恐ろしい亜人が立っていた。

 

「走れ!」

 

青年はアンリエッタに向けて怒鳴った。

 

「ええ!森の外に私の護衛の者たちがいるはずです!そちらへ合流しましょう!」

「わかった!どっちへ向かえばいい!?」

 

それに頷き、彼女は青年と共に、とにかく走って逃げた。

 

 あの凶刃を振るう亜人と、黒いマントを着ている仮面の男の追撃を逃れるために。

 

しかし、亜人の追撃は執拗だった。

 

アンリエッタの護衛の任についていた者たちと合流しようにも、その前に亜人と度々接触、青年が銃撃でアンリエッタを守りながら撤退を繰り返していたが、まるで亜人にこちらの動き、撤退の方角が読まれていたかのように、幾度も亜人との接触と逃亡を繰り返した。

 

接触と戦闘と撤退。これを繰り返し、アンリエッタに疲弊の色が見えた。

下手に動くよりも身を隠せるだけの深い森や茂みに待機して機を待つ方が生き残りやすいと青年が判断し、二人は逃げるのを中断して茂みに身を隠した。

だが、二人が茂みに身を隠している間も、亜人はアンリエッタを見つけ出そうと躍起になってか、森の草や木々を度々切り倒していた。

 

いずれまた見つかるのも時間の問題だった。しかもあの亜人だけではなく、あの黒マントもアンリエッタを狙っている。青年が倒した黒マントは、あくまで魔法で作り出した分身、他に本人がいるはずとアンリエッタが青年に明かし、やむを得ず次の手が思いつくまでは身を隠す以外になかった。

 

事実上の挟み撃ち状態。アンリエッタを無事に逃がすためには、もう一人だけでも囮役が必要だったが、青年一人だけでは不可能。迂闊に自分が囮となっても、それでは別行動になったアンリエッタを狙う亜人と黒マントにみすみす彼女を差し出すようなものだ。

アンリエッタは自分のことは構わず逃げて欲しい、青年を慮って逃げることを勧めたが、青年は、それでは助けた意味がないと、これを拒否した。

 

アンリエッタの護衛との合流を果たせず、他に人手もいない。

 

青年が、『最後の手』を使う以外にないと思ったその矢先だった。

ギーシュの使い魔のモグラが、二人の近くの地面を突き破って顔を出したのは。

その後は知っての通り、穴から出てきたギーシュを青年が警戒して銃口を向けて…今に至る流れだ。

 

 

 

「…っというわけなの。

 特に亜人の方は、魔法衛士隊の選りすぐりのメイジたちの魔法をも寄せ付けない恐ろしい力を持った存在だったわ。あぁ、思い出すだけで怖くて堪らないわ。そんな亜人のせいで皆の隙を突かれ、もう一人の黒マントの男に連れ拐われたの。そこを助けてくれたのが彼なの」

「じゃあさっきの悲鳴は」

「あぁ、それはそこのモグラさんが急に私たちの前に現れたからびっくりしちゃっただけなの。さっきまであの恐ろしい亜人に追われていたから、追いつかれたのかと思って…驚かせてごめんなさい」

 

 アンリエッタからの説明を聞いたものの、ルイズは疑り深く青年をじろっと見た。今の状況とこの男の雰囲気から、彼女はどうもこの男に信を置けなかった。

アンリエッタはこの男を信用しているようだが、脅されてこの男を庇うように言わされているだけかもしれない。今の悲鳴も、襲われそうになって出た者ではという疑念が拭えなかった。

 

「さ、ミスタ。彼を放してあげてちょうだい。ルイズの学友に悪い人がいるはずがないもの」

「…」

 

 謎の男はギーシュの背中を、銃口で押し出した。

 ギーシュがピンチを脱したことで、ヴェルダンデが主人にダイブするように飛び掛かった。

 

「おぉヴェルダンデ!愛しきわが使い魔よ!」

「もきゅ。もきゅ」

「おぉそうかそうか!僕のピンチを目の当たりにして心配をかけてしまったね!だがもう大丈夫だ!迎えてくれた君の抱擁は僕の心を何者よりも癒してくれるよ!持つべきはやはり愛しき使い魔だ!」

 

 ギーシュもヴェルダンデを抱きしめ、お互いに熱い抱擁を交わし合う。

 ひとまず彼が無事だったのはほっとした一方、その様を見てサイトは思った。こいつ自分で言うほどモテてないな、と。

 

「…殿下、迂闊だ。相手が顔なじみだったから良かったものの、もしよからぬ輩だったらどうしていた」

 

一方、ギーシュを解放した謎の男は、もうやる気が失せたとでも言うように腕を下ろし、ため息交じりにアンリエッタに苦言する。

 

「ちょっとあんた。貴族に向けて銃を向けた詫びくらい入れなさいよ。本来なら万死に値するのよ!今だって姫様に無礼な口きいて!」

 

「ルイズ!」

 

 青年の身分をわきまえない言い分に、ルイズは、その男がやったことの重大さも理解してない無礼な印象を抱き不快さを露わにする。だがそんな彼女をアンリエッタは咎めるような口調で言い放った。

 

「言ったんでしょう?彼は命の恩人なの。もし彼がいなければ、今頃私は例の亜人か、黒いマントと仮面の男に何をされたものか…

きっと私の身の安全を思って、あなたたちが仮面の男や亜人の仲間かもしれないと警戒してるだけで悪気はないわ。だから許してあげて。そこの方々もどうか…」

「…姫様がそこまでおっしゃるなら」

 

 青年のことを広い目で寛容に受け止めてほしいと懇願する姫。王女直々にそう言われては、納得がいかずともルイズは従うしかない。

 

「あのさ!」

 

 サイトは今しかないと思った。

この男はもしかしたら、そう思うと今自分の中で渦巻く疑問を吐き出せずにいられなかった。

 

「あんた、俺と同じ地球人だよな!?」

 

「…!」

 

 男の表情に驚愕が僅かに現れる。

やはり!サイトの中の予想が確信に変わった。

 

 

 

この男…自分と同じ『地球人』だ!

 

 

 

 

でもなんで、自分以外にも地球人がいるのだろう?

 

 ちきゅうじん?アンリエッタやギーシュはなんのことかと首を傾げている。

 

「え?ちきゅうって…確か」

 

 記憶が正しければ、初めてサイトと出会った際、彼がいた元の世界だと言っていた世界の名前だったはず。ルイズはまさか、あの男もサイトの世界の人間だとでも言うのかと唖然としていた。

 

 青年は、自分とは同胞だと明かすサイトに(表情変化が乏しかったのでわかりにくいものではあったが)驚いてこそいたが…

 

その返事に対して、彼はサイトに向けて銃口を向け出した。

 

「!?」

 

 どうして!?なぜ銃を向けてくる。サイトは青年のとった行動に理解が追いつかない。

 

「あんた、やっぱり!」

 

 ルイズは、姫の言葉で一瞬でもこの男を信じても良いと思った自分を恥じ、青年への敵対心を蘇らせる。

ギーシュも思わぬ青年の行動に固まり、アンリエッタも呆然とした様子だ。

 

 …が、青年が次に出したのは、弾丸ではなく、

 

「逃げろ!」

 

サイトたちの逃亡を促す言葉だった。

 

「え?」

 

 瞬時に、デルフも見かねて鞘から顔を出した。

 

「相棒、伏せろ!」

 

同時に青年はサイト…ではなく、その後ろの方角から迫って来た、木々を薙ぎ倒しながら迫る、かまいたちのような斬撃に向けて白い銃から発砲した。

 

 斬撃と弾丸はぶつかり合い、互いに消滅した。

 しかし、続けてもう一発の斬撃がすかさず飛んできて、青年を含めた全員が反応しきれなかった。

 斬撃は、不運にもヴェルダンデの方に向かった。ヴェルダンデもモグラなだけあり、すぐに反応できなかった。

 

「ヴェルダンデ!危ない!」

 

ギーシュがヴェルダンデに向かって飛び出し、突き飛ばした。

ヴェルダンデに当たるはずだったその斬撃は、ギーシュの肩とすれ違った。

 

「ぐあぁ!」

「ギーシュ!」

 

サイトたちはすぐにギーシュの元へ駆けつけた。

彼の肩を見ると、そこから深い裂傷が刻まれ、血が多量に流れ落ちていた。

 

「いだだだ!痛い痛い痛いいだいいいいいいい!!!」

「ギーシュ落ち着け!しっかりしろ!あんま暴れると余計に傷に障るぞ!」

「モキュウウ…」

 

元々見栄っ張りで気の弱いギーシュは、痛みのあまり冷静さの欠片も失って泣き喚いた。ヴェルダンデも主の傷を負った姿を我が事のように悲痛そうな鳴き声を漏らすばかりだ。

 

「エア・カッターを呪文を唱えもしないで…いえ、それよりもなんて酷い傷…!」

 

おびただしい血を流すギーシュの傷を見て、その痛みを自分のことのように受け止め、ルイズは今の斬撃の恐ろしさに戦慄した。

 

「今の攻撃は、もしや…!」

「ちっ、喋りすぎて見つかったか」

 

 アンリエッタがギーシュを傷つけた今の一撃に反応し、青年は斬撃が飛んできた方角に向けて舌打ちした。

 同時に伏せていたサイトたちが顔を上げると、叩き切られた無数の木々の向こう側に、

 

アンリエッタの一行を襲撃して来た、二本の血濡れた刃を持つ亜人が立っていた。

 

 

「な、何よこいつ…!?オーク鬼…?」

 

亜人を見てルイズは息を呑んだ。

 

「やはり…皆さん!奴です!奴が私の護衛たちを襲った者ですわ!」

 

アンリエッタが亜人に怒りを込めた目で睨みながら叫んだ。

 

 

 その亜人を見て、サイトは本日何度目になったかわからない驚きの声を上げた。

 

「つ…『ツルク星人』!?」

 

そう、亜人の正体は、かつて地球で通り魔の如く恐ろしい惨殺事件を起こし、ウルトラマンレオと死闘を繰り広げた恐るべき宇宙人…

 

『奇怪宇宙人ツルク星人』だったのである。

 

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