次の日…
サイトたちはアルビオン行きの船の燃料に使う風石の採掘のため、ラ・ロシェールの炭鉱夫たちを引き連れて鉱山の坑道を進んでいた。
「助かります貴族様。まさか風石の採掘まで手伝ってくださるとは」
「一刻も早くアルビオンへ行きたくてね。どうしても船を出してもらいたいんだ」
ワルドがそう言うと、炭鉱夫は困った表情を浮かべる。
「貴族様、生意気を申すようで申し訳ないですが、止めた方が身のためですぜ。貴族様もご存知でしょう?今のアルビオンは揉め事が酷いんですぜ。いったいなぜこの時期に?」
この炭鉱夫をはじめラ・ロシェールの住民たちもまた、アルビオンで起きている混乱のことは周知の内であった。大層な大義を反乱軍は掲げて王軍に挑んでいるが、争いごとで一番迷惑をこうむっているのは自分たち民衆なのだ。
「そこまで話すことはできないな。ただ危険を承知の上でどうしても行かなければならない理由があることだけは承知してほしい」
「わかりました。今の質問はお忘れくだされ」
「いつもこの坑道から風石を採掘しているのだね」
「ええ、そうなんですが、どうも最近量が少なくておかしいと思わないっていたのですじゃ」
ギーシュからの質問に、炭鉱夫は首を傾げながら言った。
「たまたま採掘量が少なくなる時なんてあるものじゃないの?」
ルイズが率直な疑問を言う。この炭鉱夫は見た目からして長い間風席を掘り続けていたはずだ。たまに採掘量が減ることなんて珍しくもないはず。
「確かに、わしも長年ここで風石を掘ってきたのでそういったことがなかったわけではないんですが、今回の場合は特に妙でした。
あれは数ヶ月前のことです。わしはいつもの通り風石採掘のためにこの坑道の先の壁を掘っておりました。
ですが知っての通り、いつもなら掘れる場所から風石を掘り起こせなくなりましてな。
わしは風石を掘れる場所を探して行動のさらに奥を掘り進んでいくことにしました。
新たに壁を掘り続けてしばらくしたそんな時、妙な壁がございまして」
「妙な壁?」
「はい、わしら炭鉱夫というものは、長年勤めているとわかるのです。壁を鶴嘴で叩くと、その時の振動で石壁の強度や、何か変わったものが詰まっているとか…」
「もしかして、その何か変わったものが詰まっていたから?」
「いえ、その逆…『何もなかった』のです」
「何もない?どういうことだい?」
何か強度の固い石壁や粘土に差し掛かったとか、そんなことではなく、何もない?サイトたちは首を傾げた。
「例えていえば…中身が空のものを叩いたような、太鼓や空の酒樽を叩いたような感覚がございました。不思議に思って私はその壁を叩くと、壁が崩れ落ちてその向こうを見たのです。
……着きました。あそこですじゃ」
炭鉱夫が坑道の先に口を開けている、ちょうど人が一人分入れそうな大きさの石壁の穴を指さす。
ひゅう…と、洞窟内でありながら風が吹いている。大きな生き物が餌を待って呼吸をしているような不気味さがあった。
炭鉱夫が先へ向かいその穴を潜ると、その後にワルド、サイト、ルイズの順で着いて行く。
「嘘…」
目に映った景色に、ルイズの驚きの声が漏れ出た。
そこで一行が目にしたのは、
鉱山の中とは思えない、広大な空間だった。
そのあまりの広大な空間を見て、野球ドーム並みかそれ以上の
「この妙にただっ広い空間が見つかってからなのです。掘っても掘っても風石が見当たらず、代わりにこの何もない空洞のみが見つかるばかりでして、やっと見つけた風石は…」
炭鉱夫はそう言って、この巨大な空洞内の地面の隅っこに野晒しになっている、小さな透明の石を拾う。
「これのように、食べカスのように小さいものが、ほんの少しだけという有様なのです」
「ギーシュ、これが風石なのか?」
「そうだよサイト。君は初めて見るんだね。
だがこれは酷いものだ。見た目も美しくない。純度の高く美しい風石だったのなら、装飾品にも使えるものなんだが」
綺麗な石…とは言えなかった。透明にしては曇って汚れている。地球出身のサイトから見ると、薄汚れたダイヤモンドのようにも見えた。土のメイジであるギーシュから見てもよほどらしい。
「確かに風の魔力もほとんど感じない。これでは船の燃料としても微々たるものだな」
ワルドもその風石を見て落胆したように呟く。
「それにしてもなんて広さかしら…こんな地下空洞がラ・ロシェールの地下に広がっていたなんて」
ルイズは、地下というには圧倒的に広いこの地下空間に圧倒されていた。
「あぁ、これだけ広けりゃ怪獣だって巣穴として使えるだろうな。見ろよ」
サイトがあるものを見つけ、それをルイズたちに見てもらおうとその方角に指をさす。そこには、壁や天井周りには爪痕のような傷や歯形が残されていた。
「風石ってのがあんま取れてないことも考えると、これは多分怪獣の仕業って考えるべきだろうな」
「すごい爪痕…」
野生のクマがそのまま巨大化し、周囲に自分の縄張りであることを明かすような生々しい傷。それが無数に空洞の壁のあらゆる場所に刻まれている。
「あの爪痕のサイズから見て、ここにいた怪獣は60メイル…と見るべきか」
「ろ…ろくじゅう…」
ワルドの推定体長の読みを聞いてギーシュがぞくっと恐怖を覚える。あぁどうしよう、もし怪獣に出会してしまったら…だの、モンモランシー済まない僕は先に始祖の御許に行くかもしれないだの、あぁでもあんな怪物たちに遭遇せず逃げておくべきかなだのぶつぶつ呟く。
「サイト、どんな怪獣か心当たりある?」
そんなギーシュを無視して、ルイズはサイトの知識に頼ってきた。
「うーん、今のところどの怪獣かまではわからないな。こんなことするのは怪獣の世界じゃよくあるパターンだ。
わかったのは、その風石ってのを餌にしている怪獣だってことだな」
「そう…そこまではまだわからないってことね」
あれ?とサイトはルイズの反応に困惑した。ついこの間は「何よ使えないわね」と辛辣な言葉をぶつけてきたのに。
「ちょっと、何よその意外そうな眼は」
なんか失礼なことを言われてるような気がしたルイズがジトっとサイトを睨んだ。心中を悟られないようサイトはわざと声を挙げながら続きを話すことで気を逸らした。
「あ…あぁ!でも、予想だけならできるぜ!こうして地下のものを食うってんなら、ゴルドンとかガボラとか浮かぶけど」
「…そいつらはどんな怪獣なの?」
「ゴルドンは黄金を、ガボラはウランっていう有害物質を食べるんだ」
「黄金を食べるですって!?」
ルイズが驚きの声を上げた。鉱物を、それも金を食べる生き物なんてものまでいるとは。
「き、貴族様…もしかして、わしらの風石を食い荒らしたのも、最近王都にで出たっちゅう化け物が原因なのですかい?」
恐る恐る炭鉱夫が尋ねる。その問いにワルドが「おそらくは」と答えた。
「で、でしたら貴族様!そやつをどうか退治してくだされ!」
藁にも縋る思いで、炭鉱夫はワルドに頭を下げた。平民にとって畏怖すべき存在である貴族。こうして部を弁えずに頼みごとをすることもおこがましいことと受け止める者もいるだろう。だがそれは同時に、ウルトラマンが現れてまだ日が浅い異世界において、彼らにとって『貴族』ほど最も頼れる存在はいないことも意味していた。
「…済まないが、今の我々にそんな余裕はない」
しかしワルドは、バッサリと断った。
「そんな!どうか、どうかお願いします!生意気言っていることは重々承知でございます!しかしわしらのような炭鉱夫にとって、この鉱山で仕事ができないってことは、飢え死にしろと言っているようなものでございやす!」
断られた炭鉱夫だが、貴族と平民の壁の隔たりよりも生存本能が勝ってか、なおも引き下がらなかった。
「ワルド…」
さすがに冷たすぎるのではないかと、ルイズはワルドを見つめる。貴族の腐敗が次第に進んでいるこの時代、貴族が平民を虐げることがざらになってきているとはいえ、貴族なら民を窮地から救うこともまた使命であることに変わりないのだ。
視線で彼女の心情を察したワルドが言った。
「ルイズ、君の言いたいことは分かるよ。だが、我々の任務はここで魔物退治を行うことではない。
それに残念だが、今の我々貴族に、怪獣を倒せるだけの力はない。なのにたった4人で怪獣を倒せると思うのか?」
「それは…」
確かに、今の自分たちはアルビオンのウェールズ皇太子から、アンリエッタがかつて贈ったという手紙を預かることだ。怪獣との戦いなんて避けなければならない。それに戦力差が圧倒的に違いすぎることも念頭におくべきだ。
苦々しいが、炭鉱夫の頼みを聞き入れる余裕などない。
「済まない。ただ、君たちのことを助けたくないわけではないんだ。それだけはわかってくれ」
炭鉱夫は、もううなだれるしかなかった。貴族に頼ろうにも無茶な頼みまでは聞き入れてもらえるわけもない。
「だがせめて風石のありかだけでも探っておこう。どのみちあれがなければ僕らも任務を果たせない」
「…ありがとうございますじゃ。無理なお願いをした手前、それだけしてくださるだけでも、十分です」
これ以上は貴族様に無茶はさせられないと、炭鉱夫は妥協し感謝を述べた。
「ギーシュ君、君の使い魔のジャイアントモールは?」
「はは!常に僕の傍におりまする!」
「そのジャイアントモールに風石の残っている場所まで掘ってもらおう。頼めるかい?」
「子爵の頼みとあらば喜んで!…あ、でももし…」
「わかっている。怪獣に遭遇したらすぐに引き上げて構わない。敵わないと分かってる相手に無策に立ち向かう方が愚策だ。逃げても文句は言わせないさ」
「り、了解しました。それくらいならばお安い御用です!」
怪獣と戦わなくても良いと聞いて、ギーシュはほっとしたと思いきや、やる気を出してきた。
思えば前回のアンリエッタ姫捜索の時も、こいつ…正確にはこの男の使い魔のモグラが役に立ってくれただけに、妙にこの男の見せ場が増えてる気がする。それは悪いことではないのだが、なぜだろう。
((なんか不本意だな/だわ/だぜ))
サイト、ルイズ、そしてゼロはそれぞれ同じ心境を抱いた。
ギーシュが浮かれて「さあ、きてくれヴェルダンデ」と大袈裟に、かつ妙にウザいポージングをとって使い魔を呼んでいるのが癪に障る。さっきなんて怪獣と遭遇するかもしれないと聞いて、この場を脱する言い訳をぶつぶつ呟きながら考えていたりもしたのに。
ギーシュの呼びかけに答えてヴェルダンデが地面から顔を出す。
「ヴェルダンデ、風石の匂いを辿れるかい?この炭鉱夫殿の願いを」
ギーシュがヴェルダンデに命じようとした時だった。
「そんなに風石がたらふく欲しいのかい?」
何者かが口を挟んできた。
女の声だ。しかしルイズのそれではない。それにこの声には、ごく最近聞き覚えがあった。
声が聞こえた方を向くと…
「フーケ!なんでこんなところに!」
そこにいたのはフーケだった。岩の上からこちらを見下ろしている。
「また会えたね、ミス・ヴァリエール、それに使い魔君」
「どうしてあんたがここにいるのよ!」
ルイズがフーケに怒鳴った。
怪獣との戦いの方に苦労したとはいえ、あれだけのことを経てようやく捕まえたはずの盗賊がなぜここに?
「土くれのフーケ…そうか。彼女が。
なぜチェルノボーグに収監された貴様がここにいる。杖を没収され、あれだけの警備の中をどうやって抜け出した?」
ワルドがレイピア型の杖を構え、フーケと視線が重なる。フーケはワルドを無言でじっと睨むと、ふんと鼻息を飛ばす。
「…あたしを必要としてくれたお人好しのおかげさ。それだけだよ」
いちいち話してやる必要はないと、フーケは吐き捨てた。そしてローブの下から光る鉱石を取り出した。
「あいつ、もしかして今回は風石を狙って!」
ルイズは、その石が風石と見た。
風石が掘れなくなったほどに枯渇した現場に国を騒がせた盗賊であるこの女が、光る石を持って現れた。そう考えると今の状況と符合してる気がしてくる。
だがフーケは、自分が風石をも盗んだ容疑者と断定されて、呆れたようなため息を漏らした。
「何よその溜息!風石をどこへやったの!?どうせあんたのことだからどこかに隠し持ってるんじゃないの!」
「相変わらずすぐに決めつけるねぇ。ムカつくくらいに」
ルイズの言い分にフーケは表情こそ微笑を浮かべているが、こめかみに青筋が立っていた。とはいえ、それだけのことをしてきたので信用されないのも当然。それ以上深く言い返さないことにした。
「そもそもこの石は、風石なんかじゃないさ」
「…確かに、風石にしては色が異なる」
ワルドが、フーケの持つ不思議な石を見て呟く。
風石は、風の魔力が込められていることもあってか、空気中を漂う風と同じく透明色だ。でもあの石は、怪しげなオレンジをしていて、形もバナナや三日月のような形状をしている。
「本当だったら、あんたたちにこんなことするつもりはなかったさ。けど…折角また出会えたんだ。たっぷり受け取りな」
フーケはその石を頭上に放り投げた。
「素敵なバカンスのお礼をね!」
宙を舞うオレンジ色の石が赤く光輝き出した。
すると、空洞内に大きな揺れが走り出す。地震のように大きく、天井から砂や土が雨のように降り始めた。
「いかん!崩落し始めた!」
「くそ!何をしやがったフーケ!」
サイトがフーケに怒鳴った。
「強いていうなら…仕事だよ」
「仕事?」
「それじゃあね使い魔君。せいぜい、生き延びなよ」
フーケはそういうと、崩落した天井の土を掻い潜りながらフライの魔法で飛び去っていってしまった。
「待ちなさいよ!」
「追うなルイズ!早く脱出しよう!」
追って捕まえようとしたルイズをワルドが止めた。
「ひいいい!!」
同行していた炭鉱夫が怯えてその場で頭を覆いながら縮こまっている。ルイズは悔しさを覚えつつも、思いとどまった。
サイトたちは出口に向かって走り出した。
だが、崩落による揺れは激しくなり、炭鉱夫、ルイズ、ギーシュ、そしてワルドの順で坑道の通路に再び入ったところで、坑道と空洞を繋ぐ穴が崩落によって岩陰に呑まれてしまった。
「サイト!」
ルイズが立ち止まって、崩落で埋まった空洞の入り口へ引き返そうとするが、ワルドがルイズの肩を掴んだ。
「ダメだルイズ!」
「けどサイトが!」
「もう時間がない!」
ワルドが言った通り、もうサイトを助けるために岩を退けるほどの余裕はなかった。砂だけでなく大きな岩や石が頭上から落下し続けている。
「先に行け!」
サイトはただ一言だけ叫んだ。
「何言ってるのよ!」
ルイズは文句を言わずにいられなくなった。人が貴族として敵に背を向けまいとしていた時は文句を言うくせに自分の無茶は棚に上げるのか。こっちはあんたのことを心配してやってるのに!
しかし文句を言う前にふわっと自分の体が浮く。ワルドレビテーションの魔法で、自分と炭鉱夫を普通させていたのだ。既にワルドとギーシュもフライの魔法で浮遊している。
離してワルド!そう叫ぶもワルドたちに引っ張られる。
「大丈夫だルイズ!こっちは空洞になって広い分、そっち側よりもまだ安全だ!
後でギーシュのモグラに掘り起こしてもらうから、行け!
ワルドさん、ギーシュ、ルイズたちを頼む!」
岩の向こうからサイトは二人に呼びかける。
「あぁ、わかった!サイトよ!岩に潰されたりなんてするなよ!」
最後にギーシュが、後ろ髪を引かれる思いを押し殺してワルドと共にルイズと炭鉱夫を引っ張って坑道の通路を飛んで脱出した。
空洞に残されたサイトは、フーケが捨てたオレンジ色の石を拾い上げる。
「なんだ、この石?」
「見たことねぇな。宝石っていうには確かに綺麗だが…妙に気味が悪いぜ」
デルフのいう通り、その石は綺麗な輝きを放ってこそいるが…
ドクン、ドクンと脈を打ったような音と共に、心臓の鼓動のような振動が、サイトの手のひらを伝って来ていた。
まるで内臓を握っているような嫌な感覚だ。
『この石…』
サイトの目を通してその石を見ていたゼロも注目していた。ウルトラマンとしての超感覚から、何かをこの石に感じていた。
だが、ゆっくり石を鑑賞するほどの余裕は今のサイトたちになかった。崩落の影響で頭上から次々と土や石、岩が雪崩れ落ちて来た。
「くそ!」
石を捨て、落ちてくるデルフを引き抜いて、それらを斬って対処するがキリがない。
すると、オレンジ色の石が転がり落ちた箇所の地面が一気に盛り上がっていき、突き破ると同時に、大きなドリルがサイトの前に現れた。
「ガアアアア!!!」
そのドリルのようなものの高速回転が止まり、花が開花するように開かれると、その中に隠れていた怪獣の顔が露わとなった。
「こいつ…ガボラか!?」
その怪獣は、『ウラン怪獣ガボラ』だった。
まさかこいつまでもこの異世界にいるなんて!
ガボラは地面から顔を出した途端に、自分の出現と同時に宙を舞っていた、フーケが持っていたオレンジ色に光る石を、大きく開いた口でキャッチしそのまま飲み込んだ。
しかしまだ食い足りないと、周囲の壁に爪を立てて掘り始める。勿論周囲に土飛沫やら岩がたくさん飛び散り、サイトは土に塗れていく。
「うわ!っぺっぺ!んの野郎…!」
飛んできた土の一部が口に入り、サイトはすぐさま吐き飛ばした。周囲を顧みずに迷惑なやつだと思っても、そんなことお構いなしにガボラは壁を掘り続ける。だが、掘っても特に何も出てこない。それに痺れを切らしてか、ガボラは目の前の壁に狙いを定め…
首周りの外甲が高速回転、強烈な突風となって壁を攻撃した。
「うわあああああ!!!!」
台風、あるいは竜巻のような目も開けられない程の強烈な風が、壁に跳ね返って空洞内全域に行き渡った。無論怪獣と比べて小さいサイトの体も宙に投げ出された。
「ど、どうなってんだ!こんなの、俺の知ってるガボラの能力じゃねぇ!」
ガボラは二つ名の通り、ウランを食べる怪獣だ。風を起こす力など聞いたこともない。
思い返せば、この科学文明の無い異世界に、放射線物質であるウランがあるというのか?
それに…宙を放り出されたサイトの目に映ったガボラの姿…
どちらかと言うと赤い色を基調としていたガボラの見た目が、主にドリル状に変形するあの外甲が、色素を落としたようなダークグリーンのカラーリングになっていた。
それによく見ると顔つきも、サイトたちが知るガボラのような従来の怪獣然としたものではなく、死後何万年も経過した屍のように骨がむき出しになったような顔になっている。地面から現れたことといい、まるで死後の世界から蘇った印象であった。
『サイト、あのガボラはおそらく亜種だ!ウランの代わりに風石を食べるようになって、あんな見た目や能力になったんだ!』
「そういうことかよ…!」
それはガボラであってガボラではない。後に通常のガボラとの区別のためにつけられた名前は…
『風石怪獣ストームガボラ』。
『サイト、とにかく俺に変身しろ!このままじゃ俺たち全員がやばい!』
「仕方ねぇか!」
サイトはデルフを鞘にしまい、左手首のテクターギア・リングを掲げる。
彼の体は光と共に超合金の分厚い鎧…テクターギアに包まれていき…
鎧を纏った光の巨人、テクターギア・ゼロへと変身を遂げるのだった。