ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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決闘-ファイト-

 サイトがデザートを運びに行った先の中庭に、用意された白いテーブルがいくつかあった。ここで学院の生徒らは昼のおやつタイムを満喫しているのだろう。人が一時ひもじい思いをしている時に…と思いつつ、サイトはシエスタのお手伝いでデザートを配っていった。

 

「なあ、ギーシュ!お前誰と付き合ってるんだよ?」

 

 二人がケーキを配っているとそんな声が聞こえてきた。

 

「付き合う?バカを言っちゃいけないよ。僕は薔薇。大勢の女性を楽しませるために存在するのさ!」

(うわ、キザな野郎…)

 

 なんかキザったらしい貴族の声が聞こえてきた。サイトは正直この痛いセリフを吐いていた奴に嫌悪感を抱く。

 見てみると、ギーシュと呼ばれたフリルつきの胸元が開いたシャツを着た、顔の整った金髪の男子生徒が薔薇の造花のついた杖を持ちながら取り巻き相手に気取ってた。

 

 この少年こそ『ギーシュ・ド・グラモン』。彼もルイズの同級生だ。トリステインの優秀な軍人『グラモン元帥』の息子の一人なのだが、彼の一家の男子は皆女性好きという困った部分で有名でもあった。

 

 ふと、彼のポケットから何か小さな小瓶が落ちた。気が付いたサイトがそれを拾おうと思ったのだが、シエスタが先にその小瓶を拾った。

 

「サイトさん、これくらい私がやっておきますので」

 

 ケーキ運びの手伝いのお礼のつもりだろうか。サイトとしてはこのケーキ配り事態がお礼なのだが、彼女は小瓶を落としたギーシュの元へ向かう。

 

「ミスタ・グラモン。小瓶を落としましたよ」

 

 親切な子だ、とサイトはシエスタの対応に関心を持ったが、瓶を見た瞬間ギーシュの顔色が変わった。

 

「おい君、その瓶は僕のじゃない。下げたまえ」

「でも、確かに今…」

 

 間違いなくあなたが落としたはずではと、シエスタが問い続けようとすると、小瓶の正体に気づいた同級生の一人が声を上げた。

 

「それって、確かモンモランシーの香水だろ!」

「じゃあお前、モンモランシーと付き合ってたのか!」

 

 しまった。このときのギーシュはそんな顔をしていた。何やらバレてしまったら不味いことを明かされてしまったらしい。さらに彼の視線の先には、自分の元へ歩み寄ってくる栗色髪の可憐な少女が近づく姿があった。

 

「ギーシュ様、噂通りミス・モンモンラシとお付き合いをしていたのですね…私のことなんか、結局ただのお遊びだったと言うわけですか!」

「ケ、ケティ…違うんだ、これは――」

「さよなら、嘘つきのギーシュ様!!」

 

パァァン!

 

 ケティと呼ばれた娘の平手がギーシュの頬を叩いた。さらに入れ替わるように、ケティが走り去ると次に遠くの席から、金髪ロール髪の少女もやってくる。サイトは彼女に見覚えがあった。昨日や今朝の食堂でも顔を見た子だ。

 

「モ、モンランシー違うんだ! 彼女とは近くの森に二人で遠出しただけで!!」

 

パアアアン!!!

 

「最低!さよなら!!」

 

 さっきよりも甲高い音が響くと同時に、ギーシュの頬は真っ赤に染められた手形を描いていた。だがモンモランシーの目尻にも涙が溜り、傷ついた心を表すように目が赤く染まっていた。モンモランシーは目尻の涙をぬぐいながら歩き去っていった。

 

「…どうやら彼女たちは、薔薇の意味を理解していなかったようだ」

 

 自分を振った女の子の心を察知もせず、ギーシュは勘違いなのか、それともフラれたショックを誤魔化しているような…いや自らの過ちから目を逸らすあまり妄言を吐く。

 

(こいつ、本気かよ…馬鹿だな)

 

 サイトは正直目も当てられないほど呆れていた。だが、さらに信じられない言葉を聞くことになる。

 

「君のせいで二人のレディが傷ついた!どうしてくれるんだね!!」

 

 こともあろうか、彼は親切に小瓶を拾ってくれたシエスタに責任転換してきたのだ。どう考えてもギーシュの自業自得ではないか。だが、何一つ悪くないのにシエスタは顔を真っ青にしてギーシュに頭を下げた。

 

「も、申し訳ありませんでした!」

「謝って済む問題ではないぞ!一体どうやって償ってもらおうか?」

 

 手に取った薔薇を象った杖を手に取るギーシュ。魔法を使って何の罪もないシエスタを傷つけるつもりなのか。

 

 

ピキピキ…!!

 

 

――――このキザ小僧、調子に乗りやがって

 

 

 サイトはこめかみの血管を膨れさせた。あん時のルイズといい、このキザ野郎といい…貴族ってのは人間的にねじ曲がりすぎた奴らばかりなのか!!?地球人じゃない人は、ウルトラマンを除けばどいつもこいつも人を傷つけるのが当たり前だと思っているのか!?

 もう我慢ならず、ついにサイトはシエスタを背に、ギーシュの前に立ちふさがった。

 

「止めろ!!」

「ん?なんだね君は?僕は今彼女と話をしているんだ。無粋な第三者に用はないよ」

 

 まるで蠅のようにサイトを厄介者扱いするギーシュは、しっしとあっちへ行くように薔薇の杖を振う。だがサイトは引き下がらない。相手が魔法を使う貴族だとか言っているが、サイトはこの目でもっと怖いものをこの目で見てきたおかげなのか、それともルイズを含めた貴族連中への怒りのせいか、ずっと貴族の圧力に怯えてきたこの世界の平民のシエスタと違い、恐怖を微塵も感じていなかった。

 

「シエスタこそ関係のない子だろうが!二股かけたお前の自己責任だってのに、この子に八つ当たりするなんてどうかしてるだろ!」

「そうだギーシュ、お前が悪い!」

 

 ギーシュの取り巻きや、他の生徒達から(特に女子から)批判的な声が上がった。中にはルイズが受けたような、ギーシュを馬鹿にする笑い声もある。しかしそれが逆に悔しく惨めに思えたのか、ギーシュは己の過ちを認めようとせず言い訳を続けた。

 

「僕は君が香水を拾ったときに知らないフリをした。話を合わせるぐらいの転機を気かせてもいいんじゃないかい。おかげで二人の女性が悲しむはめになったじゃないか?」

「は?誰のせいだと思ってんだよ?お前さっきの…モンモンだっけ?」

「モンモランシーだ!君は僕の愛しの人の名前を間違えるなど、彼女を馬鹿にしているのかい!」

「うるせえ!馬鹿にしてたのはてめえだろ!なにが愛しの、だよ!さっきのあの子、去り際に涙を溜めていたのが見えてなかったのか!!それも分からねえなんて、てめえは彼女の気持ちを弄んだ糞だ!」

 

 間違いなくあのモンモランシーという少女は、ギーシュから遊ばれているだけの身だと思って酷く傷ついていしまっているに違いない。見るからに泣くのをこらえていた顔だ。それだけ悲しくて、怒って、そして屈辱的だったはずだ。

 自分の益や欲のためなら平気で人の心を踏みにじる…このときのサイトにとって、貴族とはこれまで地球を襲ってきた侵略星人となんら変わらなかった。

 だが、彼女の涙を話に持ち上げられてなおギーシュは自らの罪を認めようとしない。認めなくなかったのだ。こいつの言い分は正しいと頭でわかっていても、こんな平民ごときに引き下がっては貴族の名が廃ると、かえって己の品位を落としていると言うのに、彼はサイトの言葉を受け入れようとしなかった。

 

「どうやら君は貴族に対する礼儀というものを知らないようだ」

「あいにく貴族なんていない所から来たんでね」

「ふっ、いいだろう。君に礼儀を教えてやる。

 

決闘だ!!!」

 

 決闘と聞いた途端、周囲がざわつき始めた。ギーシュの決闘という名の責任転換がよほどのことに聞こえたのだろうか。

 

「決闘?」

「そう、決闘だ。君と僕、一体一でのね!」

 

 つまり、僕を納得させたければ実力で勝って見せろと言うことか。単純な話だ。だったらこいつをとことんボコせばいい。

 

「おもしれえ、やってやるよ!後で吠え面かくなよ?」

「サ、サイトさんすぐに謝ってください!」

 

 不敵に笑うサイトの傍にいたシエスタは、顔を青くしていた。

 

「どうして?悪いのはあいつだろ?」

 

 そんなことを知らないサイトには何を言っても無駄だった。もう彼の運命は一つしかない。そうとしか思えなくなったシエスタは青かった顔を白くし震えだした。

 

「―ちゃう…」

「?どうしたシエスタ…」

「あなた、殺されちゃう!」

 

ガタガタと震え、彼女はバッ!と身を翻して走り去ってしまった。

 

「おいシエスタ!!…どうしたんだ?」

「あははは、あのメイドは賢いね。メイジである僕の力を恐れて引き下がった。それに引き換え君はなんと愚かなことか。まぁもっとも君の主人はあの『ゼロの』ルイズだ。なら仕方ないかもしれんが」

 

 ギーシュはわざわざ『ゼロの』を強調してルイズの名を口にした。サイトの眉間にしわが寄った。

 

「おい、ルイズは関係ねーだろ! つかアイツ頭いいんだろ!!成績優秀って聞いたぞ」

「おやおやなにを言いだすかと思ったら…

確かに座学の成績は良いが、魔法が使えない時点で彼女は優秀どころか、最低の落ちこぼれだよ。そんなことも分からないとは、さすがゼロの使い魔だ」

 

 ギーシュの言葉に同意して、他の生徒達も笑い声を上げながら好き勝手言い始めた。

 内容は主人共々無能だの、あの能なしの貴族の面汚しの使い魔だから下等なのは当たり前だの。サイトとルイズに対してあまりにもひどい言いようだった。サイトは怒りに震えた。

 

 こいつら貴族は人をどこまでもバカにしやがって!しかもこの騒動に関係ないルイズのことまで!

 

ルイズは…こんな感じにゼロって言われてバカにされてたのか。一方的に。

 

 サイトは自分がルイズをバカにしたことを思い出した。確かシュヴルーズという先生が仕切っていた授業では、座学で頂点に上っていたと言うルイズ。男子生徒に絡まれたというシエスタを助けたルイズ。その点については誰よりも褒めるべきだし、彼らよりもまともだろう。でも、こいつらは…!誰にだってできることとできないことくらいはある。それはこいつらにだって言えることだ。それも分かろうともせず、人のことをとことん見下す。ほんのちょっとの欠点をいやらしく責めては罵って侮辱する。

 あの時は、ルイズに苛められたことに対しての仕返しのつもりだったが、今までの彼女の受けた屈辱について考えたら罪悪感が芽生えてきた。後でちゃんと謝ってやろうかな。でも、まずはこいつらのことが許せない。

 

見せつけてやる。ルイズの分もこいつをボコって見返す。

 

「おい、キザ野郎!どこでやるんだ?」

「キザ野郎では無い。ギーシュ、ギーシュ・ド・グラモンだ。名前を覚えておきたまえ。

決闘はヴェストリの広場で行う。逃げずに来たまえ」

 

 二人の決闘が決まり、ギーシュは体を翻し先に広場へと向かった。と、同時に人込みを分けルイズが、ギーシュと入れ替わるように寄ってきた。

 

「何やってんのよ、あんた!」

 

見るからにまた怒っている。

 

「よおルイズ」

「よお、じゃないわよ!何事かと思って来てみれば!そこですれ違ったメイドから全部聞いたわよ、何勝手に決闘の約束なんてしてんのよ!!」

 

 先ほど逃げたシエスタからここに至る経緯は既に聞き及んでいたらしく、ルイズはサイトに怒鳴りつけ彼の手を引いて歩きだした。

 

「どこ行くんだよ?」

「ギーシュに謝りにいくのよ。今なら許してくれるわ」

「嫌だね、なんで俺が謝るんだよ」

 

 ルイズの手をふりほどいて、サイトは自分の非を認めなかった。そもそも、この二股騒動の件についてギーシュ以外に非など誰として何一つなかったが。

 

「あんた何も分かっていないわね。平民は貴族に勝てないの、怪我で済めば運のいい方なんだから!」

「うるせぇな、そんなことやってみないとわからないだろ!

とにかく見てろ、これに勝って俺とお前の汚名を挽回してやる!」

 

 

その言葉に呆けているルイズをよそに、サイトはちょうど目に入った金髪太っちょの生徒…シュヴルーズの授業でルイズに一言馬鹿にしたセリフを吐いたマリコルヌに広場の場所を尋ねていた。

 

「なあ、ヴェストリの広場ってどこだ?」

「ああ、あっちだよ」

「ちょっとマリコルヌ!?」

 

 サイトは広場の場所を知るや否や、ルイズの手を振りほどきギーシュの取り巻きに連れられ広場に向かっていった。

 

「もう、使い魔の癖に勝手なことするんだから!」

 

怒りながらもサイトを放っておくことはできず、彼女はサイトを追い始めた。

 

…とりあえず突っ込まないでほしい。サイトの言った『汚名挽回』は間違いで、本当は『汚名返上』というのが正しい表現ということについては。

 

 

 

 

こうして、サイトはギーシュからの決闘に臨むことになったのだが…

 

 

 

 

 

「終わりかい?なんだったらごめんなさいの一言で手打ちにしてやってもいいんだぞ?」

 

ギーシュの降参を促してくる声に、サイトの意識は現実に戻ってきた。

 

 

(ってぇ…やっぱ夢じゃ、ねえんだな…)

 

やや意識が朦朧としている。痛めつけられたせいだろうか。それとも、地球ではない異世界に来てたくさん嫌な思いをさせられたせいだろうか。

いや、恐らく全部だ。

ここで降参すれば、確かに楽になれるかもしれない。これ以上痛めつけられることもないかもしれない。でも…

 

目の前にいるギーシュの不敵な顔がやたらムカついていた。この異世界に来る直前に、あの人間を人間とも思わない非道な宇宙人たちと、ギーシュの姿がダブって見えてきた。

力で、自分より弱い奴を痛めつけ弄ぶ…これまで自分の故郷、地球に襲い掛かってきた『宇宙人』たちは、その手の非道な輩が大多数だった。

 

そんな悪を許さない…正義の宇宙人もまたいた。その代表と言えるのが、『彼ら』だった。

 

その『彼ら』の、神々しく雄々しい背中が、サイトの目の前で、毅然とした姿勢でギーシュと対峙していた。その姿は、瞬きすると同時に消える。

 

あぁ、きっと彼らも自分と同じ立場なら、きっとそうするだろう。絶対に許さない、正義の使者の名のもとに悪と戦う…それが、自分の憧れたヒーロー…

 

 

 

ウルトラマン』なのだから。

 

 

 

 

そんな彼らの姿を、サイトは幾度も目にした。どんな絶望にも決して光を見失わずに、地球の平和を悪の存在や怪獣たちから幾度も守ってきてくれたその姿を。

 

人間とは、自分にとってのヒーローに憧れるもの。そのヒーローに守られ今日を生きている以上、

 

自分も、彼らに恥じない姿を見せなければと、サイトは踏ん張った。

 

「うるせぇ 、休憩中だ……」

 

 鼻を押さえながらサイトは鼻血を拭く。

 

「お願い、もうやめて。もういいじゃない、あんたはよくやったわ。こんな平民見たことないわよ」

 

 サイトの血を見てゾッとしたのか、心配して彼の傍に駆け寄ったルイズの桃色の瞳には涙が浮かんでいた。会ってから高慢な態度をとり続けてきた彼女の泣き顔に、サイトは動揺しただけでなく、思わず何かに引き込まれる感覚を覚えた。

 

「泣いてる…のか…!?」

「な、泣いてなんかないわよ!」

 

気付いたら涙目だったことにルイズは恥ずかしくなって顔を真っ赤にするとサイトの頭をバチンと叩く。

 

「あいて!!…ったく、叩くことないだろ」

 

 ルイズに文句を言いながらも、サイトは再びギーシュと彼の使役するワルキューレを睨む。

 

あのワルキューレとやらは、剣を持っている。ギーシュは余裕の表れのつもりで使わせていないようだが、まずはあれを奪い取ってやれば、こちらも武器を取ることができる。そうなれば少しはこちらが有利になるはずだ。

 

「っつ!」

 

サイトは狙い通り、ワルキューレの持つ剣へ手を伸ばし、それを掴みとり、強引にそれを奪い取った。すると、サイトの今の行動におお!とヤジから歓声が上がる。

 

「ほう、剣を取ったか。だが剣一本手にしたくらいで、僕のワルキューレを倒せると思うな!」

 

 ギーシュも素直にやるなと思ったが、それでも自分が優位に立っていると自覚していた。

 たかが剣。それも自分が作り出したものだ。今よりももっと固く丈夫なものを作ればいい。ギーシュは新たに青銅の槍を作り出し、それをワルキューレに持たせた。

 

「もう止めなさいサイト!あんたが武器を取った以上、ギーシュは絶対容赦しないわ!これは命令よ!」

「…なあ、ルイズ」

 

 命令してくるルイズに背を向けたまま、サイトは静かに語りかけてきた。

 

「俺を、元の世界に帰すことってできないんだろ」

「そうだけど…今は関係ないでしょ!」

「とりあえず俺のことは使い魔でいいさ。やってやるよ…生きるためだからしょうがねぇ……でもな!」

 

 サイトはルイズの手を振りほどき地面に刺さった剣の柄を両手で握る。なぜ俺がビクビク怯えて『お願い貴族様助けて』って感じに負けを認めなければならないんだ?

 こんな奴にだけは、頭を下げるわけにはいかない。もしここで頭を下げてしまったら…。

 

「『彼ら』に何度も、俺は…俺たち地球人は命を救われたんだ。だから俺だって、彼らに守ってよかったって思われるような奴ならなくっちゃいけないんだ。

 

だから!!」

 

俺を、俺たち地球人を凶悪で卑劣な侵略者や凶暴な怪獣たちから守ってきた、

 

GUYSやウルトラマンたちに申し訳が立たなくなってしまう。

 

だから!!

 

下げたくねぇ頭は、下げられねええええええ!!

 

ブン!!

 

サイトはワルキューレから奪い取った剣を両手で持って構えた。

 

 その時だった。

 

彼の左手の甲に刻み込まれた使い魔のルーンが、青く光り出した。

 

 

 

 

 

 一方…。地球からもエスメラルダからも遠く離れた宇宙空間。

 

「せっかく捕えた地球人を取り逃がしただと!!我らの計画に支障が出るではないか!」

 

 ルイズの召喚のゲートとは別の発光体の手から逃げ切伸びることができたクール星人の円盤だが、別働隊と思われる宇宙船に回収されたのだが、任務完了の必要な標本となる人間をほとんど回収できずに終わったことで、その部隊の同胞たちから厳しい叱責を受けていた。

 

「す、すみません!」

 

叱責を受けたその個体のクール星人はペコペコしていた。この扱いから見て、立場も下の方らしい。

 

「まったく、以前我らの同胞がやった時と比べて小規模で行いさえすれば、昆虫も同然の地球人の目も、あの厄介な『宇宙警備隊』の目をも搔い潜って、今度こそ我らの計画を、『人間標本化計画』を進めることができたはずだというのに…」

 

 地球人に後れを取るとは、と苛立ちを摘み隠さず吐き続ける別個体のクール星人。

 

「待ってください」

 

 ふと、いくつもの星の位置を映し出しているモニターを見ているクール星人の一体が口を挟んできた。

 

「我らが取り逃がした地球人ですが、転移先の座標を割り出したところ、実に興味深い星に落ちていたそうです」

「興味深い星だと?」

 

 地球から逃げてきた同胞をさっきまで攻めていたクール星人が気になって説明を求めた。

 

「ええ、その星の知的生命体ですが、監視衛星を飛ばしてモニタリングしたところによれば…文明レベルは地球と比べて原始的な域です。しかしその対価によるものか、地球人の持っていない特殊な力を持っているのです」

「ほう…」

 

 それは興味深い、とそのクール星人はどこか嬉しげに声を漏らす。

 

「地球人よりも、より調べ甲斐のある存在だとは思いませんか?」

「うむ、計画変更だ。その星へ向かうぞ」

 

 地球から何光年離れた場所にあるだろうか、それさえ分からない。クール星人のモニターに表示された、地球とは別にもう一つ、一本のラインで地球と結ばれている、二つの月を表された惑星を見てクール星人はその星へ向かうことに決めた。

 

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