ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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王党派の終焉

 周囲の森はラフレイアの吐いた恐るべき炭化効果のある黄色い花粉に包まれ、大火事に見舞われた後のように真っ黒な炭と化していた。

 

サイトは強力な雷の魔法を受け身動きがうまく取れない。避けるだけの余裕などなかった。

 

「剣士の兄ちゃん!ってうおわ!?」

 

 グレンファイヤーもラフレイアからサイトが襲われるのを見つけ、助けに向かおうとしたが、立ち上がった始祖の箱舟に拳を繰り出され、咄嗟に避けた。この僅かな隙が生じたことでサイトを助けるだけの時間も奪われてしまう。

 

(やられる…!?)

 

 いくらウルトラマンと一体化した影響で体が頑丈になったと言っても、問答無用で生物を炭化させるような恐るべき能力の前では…一瞬、死を覚悟した。

 

 その時、サイトの腕に巻かれたリング形態のテクターギアが光り輝いてサイトを包み込んだ。

 

 サイトを包む光はラフレイアと同じくらいのサイズにまで肥大化していき、テクターギア・ゼロの姿となって立ち塞がった。

 

 サイトを追って来ていたウェールズやギーシュたち仲間の一行も、ウルトラマンの出現を見て足を止めた。

 

「ウルトラマンだわ!」

 

キュルケが叫ぶ。

 

「ウルトラマン…ではあれがトリステインに現れたと言う、別の光の巨人か!」

 

「殿下は、もしやウルトラマンをすでにご存知だったのですか?」

 

 ギーシュがウェールズに意外そうな目を向ける。てっきりトリステインにしかウルトラマンが現れていないとばかり思っていたらしい。

 

「知っているも何も、我が軍は彼の同胞らしき巨人に幾度か命を救われたことがあるんだ。グレンも含めて、ね」

 

「同胞の巨人…」

 

おそらくその言い方からしてゼロではない。ゼロとは別の、あの銀色の巨人のことだとタバサは推察した。

 

「ウェールズ坊!」「殿下、もう時間がありません!すぐに襲撃を受けてる友軍の元へ!」

 

 そこへガル船長や王党派貴族ら、結婚式の出席者一同が、ウェールズに進言する。

そうだ、今はウルトラマンの戦いを観戦している場合ではない。

 

 タバサも、すぐに今の状況に意識を戻し指笛を鳴らした。その音色に釣られ、彼女の使い魔シルフィードが空の彼方より舞い降りてきた。

 

「ルイズを迎えに行く」

 

「っと、そうね。迎えにいってあげないと拗ねるでしょうし」

 

 二人が先にシルフィードの背にまたがる。ギーシュもそれを見て「あぁ、待ってくれ!僕も乗せてくれ!」と大慌てで後に続く。

 

「それでは皇太子殿下、私たちはここで失礼いたしますわ」

 

「あぁ、無事を祈る。ミス・ヴァリエールを頼むぞ」

 

 三人を代表してキュルケが別れの挨拶を済ませ、ウェールズもそれを聞き届ける。

シルフィードが飛び立ったのを見届けると、ウェールズは今度こそガル船長や王党派の配下たちに向き直る。

 

「すぐにニューカッスルの友軍と合流するぞ!」

 

ウェールズはガル船長たちを引き連れ、ニューカッスルの方角へフライの魔法で飛び立った。

 

教会からニューカッスルの城まで一気に飛べば間に合うはずだ。

 

だが…

 

 ニューカッスルの城は、ウェールズたちが城のすぐそばの丘の上から見下ろしていたときには、大混乱の中にあった。

城内からは戦闘の音と怒声が響き渡り、火を使ったためか煙も上がっていて、混戦に陥っていた。

 

城外もこちらを逃すまいとレコンキスタ軍の兵士たちが城を包囲していた。

 

「これはまずいな。ガル船長殿、外側より敵軍に奇襲を!そうすれば城内の者と挟み撃ちにできる!」

 

「承知した!すぐに向かおうぞ!

行くぞ野郎ども!」

 

ガル船長とその指揮下の空賊たちが、丘下のレコンキスタに一気に奇襲を仕掛けに向かった。

 

奇襲はうまくいったようであった。敵の兵士たちが、ガル船長たちが攻撃を加えた箇所から瓦解しはじめている。

だが奇襲の効果は最初のうちだけだろう。敵の兵士たちが多い。

 

父は老齢で、今もきっと城内で無理をして指揮をとっているはず。グレンファイヤーが今別の場所で暴走している始祖の方舟を食い止めている今、自分が王党派の旗印としてなすべきことをなさなければ。

 

自分も残った配下を連れ、援護に向かおう。

 

そう思っていたのだが…

 

ドスっ!

 

「っが…!」

 

背後から飛んできた鋭い風の針が、ウェールズの胸を貫いた。

ウェールズは胸元を抑えながら崩れ落ちた。

 

「皇太子様!」「ウェールズ坊!」

 

ウェールズの危機を見て、ガル船長やともに交戦していた王党派メイジたちが駆けつけた。

 

「すぐに水のメイジを!」

 

回復魔法が使えるメイジをすぐに呼ぶよう命令が下されたが、この混戦状態では回復魔法を使うことも呼びつけることも、その間にウェールズを守ることも至難であった。

 

「殿下、どうか気をしっかりなされよ!ここであなたに倒れられては、我が軍は!」

 

「あ、ああ…まだ、僕は…死ぬわけには…」

 

王党派メイジの一人が、ウェールズに呼びかけ彼の意識を維持させようと努めるが、出血が酷く容態は悪化の一途をたどっていた。

 

さらに状況が悪くなる事態が起きる。

 

猛烈な強い風がウェールズの周囲に吹き荒れ、彼の周りにいたガル船長たちを吹き飛ばしてしまった。

 

皆がウェールズから引き離されたところで、人影が空から舞い降りる。

 

サイトに魔法による奇襲を仕掛け始末しようとした、あの仮面の男だ。

 

「な、何者だ!」

 

「始祖の降臨せし聖地を解放する者…レコンキスタの者と言えばわかるか」

 

仮面の男の返答に、ガル船長たちは警戒する。

 

「ほっほぉ、お前さんも連中の一人か。随分舐めてた真似してくれるじゃねぇか。そんな胡散クセェ仮面付けてのぉ」

 

ガル船長がじろりと仮面の男を睨みながら銃口を向ける。

 

「貴様、殿下を放せ!」

 

メイジの一人が、仮面の男にウェールズを返すよう要求する。

 

「ウェールズ、そして炎の空賊よ、グレンファイヤーもウルトラマンも携えていない今の貴様らなど裸も同然だ。その気になれば貴様らを踏み潰すなど容易い」

 

仮面の男は、三日月型の赤く光る石を頭上に掲げると、地面よりまたもう一体の怪獣が姿を現した。

 

「だが貴様らのような虫ケラでも利用価値がある。特にウェールズ、貴様の場合はな」

 

その巨大な影がウェールズたちの頭上を覆い尽くし…

 

「さあ、選ぶがいい。ここで無様に亡国の徒となるか、それとも、我らレコンキスタのはえある一員となるか」

 

ウェールズの記憶と意識は、そこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

「ったく、だから言ったんだ。てめぇだけの力で何ができるんだって」

 

 変身し、ゼロの中に入れ替わるように引っ込んだサイトは、自分の願望と裏腹の現実に『くそ…』と言うしかなかった。

 

「不貞腐れてんじゃねぇよサイト。こうして俺が本来のサイズで表に出られたんだ。ってことは、もうさすがにわかり切ってるってことだろ」

 

『…あぁわかったよ!やってやるよ!こいつらぶっ倒してルイズを助ける!』

 

 ヤケクソ混じりにサイトがやる気を見せたことで、本来の50m級のサイズを維持した変身はできた。後はここの花の化け物を仕留めるだけだ。

 

 ラフレイアがゼロに向かって体当たりしてくる。ゼロは正面からそれを受け止め、押し出し、蹴りを叩き入れる。

 

 ラフレイアも反撃に出てゼロに突進する。ガン!と大きな音を立ててゼロは仰け反るもすぐに持ち直し、ラフレイアを殴り返した。

テクターギアを身に纏っている分、防御が頑強になっているのだ。

 

ゼロは回し蹴りを放った。一度だけでなく、二度、三度、連続で放ち続けていき、ラフレイアの体を駒のように回転させていった。

 

 ゼロが蹴りを終え、ラフレイアは体が回転続けた果てに目を回したのか、ふらっと倒れた。

 

よし、効いている!

 

こいつは植物怪獣だ。炎を纏った攻撃には弱そうだ。

 

だったら目一杯ダメージを与えた後で、唯一この姿で使える必殺の蹴りで止めを刺す!

 

だが、ラフレイアはまだまだ余力を残している様子だ。もっとダメージを与えてから仕掛けてやる。

 

ゼロは、ラフレイアに向けて更なる追撃を続けた。

 

 

 

 

 

「ルイズ、無事だろうか?」

「ダーリンも今のところ姿が見えないわね、ルイズはああ見えて意外としぶとい子だからまだしも、心配だわ」

 

 シルフィードの背中からウルトラマンたちの戦いを見守りながら、地上のどこかにいるであろうサイトを探し回った。けど、彼の姿がどれ程目を凝らしても見当たらない。

 

「けど、あれだけの激闘の中をかい潜りながらの捜索は困難を極めるんじゃないかい?さ、さすがに僕たちが下手に首を突っ込んで行ったらかえって危険だと思うのだが」

 

 臆病さゆえに口走ったことだがギーシュの言う通り、この状況でサイトたちを探すのは無謀である。

 

「無理のない範囲で隙を見て、ウルトラマンとグレンファイヤーを援護して戦いを早めに終わらせる」

 

「それが無難かしらね。ダーリン、無事でいて頂戴ね」

 

 仕方ないが、ここはゼロたちの戦いを静観していた方が良いとして、サイトたちの無事を祈るキュルケたち。

 

 全員シルフィードの背に乗り、ウルトラマンたちの戦いを見守ることにした。

 

 

 

 

 アルビオン王家の秘宝たる始祖の箱舟を己の制御下におくのみならず、怪獣ラフレイアを呼び出しサイトの抹殺を謀る仮面の男は、炎の巨人グレンファイヤー、そしてテクターギア・ゼロ二人の巨人の戦いを離れた場所から眺めていた。

 

「グレンファイヤーに続き、ウルトラマンまでも現れたか。噂の銀色の巨人は…まぁいい。『奴』が相手をしている頃かもしれんな。

それに二人同時に始末できるまたとない機会だ。あの小僧も適当に巻き添えを食らって勝手に死ぬだろうよ」

 

 仮面に刻まれた釣り目状の穴の奥から、獰猛な目を研ぎ澄ませながら、ほくそ笑む。

 

「グレンファイヤーとやら、せいぜいそのゴーレムと遊んで熱く燃え上がっておくがいい。そしてその怪獣を自慢の紅蓮の炎で燃やし尽くせ。なんならウルトラマン…貴様の手で倒してもかまわないぞ?

 

その時が…貴様らと、あの小僧の最期だ」

 

 サイトやグレンファイヤーのみならず、ウルトラマンさえも殺害対象として見ている、仮面の男。

 

 しかもこの男、つい先ほどまでニューカッスルの城に急ぎ戻っていたウェールズたちの目の前に現れていた。ここからウェールズたちの元へ向かう気はそれなりの時間を要するはず。にもかかわらず瞬間移動でもしたかのような…

 

果たしてこの男は何者なのか。そしてその目的は一体なんなのか…

 

 

 

 

 

「止せ…!」

 

それを遠くから、テレパシーで見ていたのは…もうひとりのウルトラマンの男、シュウ。

 

 始祖の箱舟に捕まっていたルイズは無事グレンファイヤーによって助け出されたのはよかったものの…彼の中には強い不安がよぎった。

始祖の箱舟と激戦を繰り広げるグレンファイヤー、そしてラフレイアに果敢に立ち向かうゼロ。

その双方の姿を見て、どういうことか彼は二人に戦うことを止めるよう言っていた。

 

(まずい!あいつらがもし、ラフレイアを火力のある技で倒したりなどしたら…!!)

 

そんな彼に向けて、黒く染まった光弾が飛んできて、走っているシュウの足を止めた。

 

「逃げても無駄さ。なぜなら私は、お前たち光の存在の…影なのだから」

 

 シュウの心を先読みするかのように言い当てたダークファウストが、一歩シュウの前に歩いて言った。

 

「貴様が、俺の影だと?」

 

 目を細めるシュウに、ファウストは暗くて低い、しかし女性と男性の声が入り混じった声で続ける。

 

「そう、貴様ともう一人…光に選ばれし者が宿す光が、私と言う影を作り出した」

 

「……」

 

「理解してない、あるいは理解などしたくもないと言った様子だな。だが、いずれ思い知ることになる」

 

 強い光は、同時に強い影を生む。その法則は何となくシュウにも理解できた。目を閉じて、彼は自分の記憶を辿る。どれもこれも、色濃く残っているのは、

 

…思い出したくもない、赤い血と真っ黒な闇の立ち込めた記憶ばかりだった。

 

「…確かに、俺の心には拭い去れない影がある。だが!」

 

シュウは白い短剣…『エボルトラスター』を懐から取り出し、鞘から引き抜いた。

 

鞘から引き抜かれた光が、シュウを包み、等身大サイズの銀色のウルトラマンへ変えた。

 

「フ…さあ、楽しませてくれよ?」

 

 ファウストはこれを待ち望んでいたようで、満足げな声を漏らす。すっと身構え、銀色のウルトラマンと対峙する。

 

(既に倒されたはずのこいつがなぜここにいるのかも気になるが、今はこいつに構っている暇はない)

 

 ウルトラマンと瓜二つな見た目もあるし、『データ』でも奴が度々ウルトラマンを苦しめてきたとある。間違いなく強敵の部類だ。だがそれでも、一気に勝負を付けるか、隙を見てこの場を脱してラフレイアと戦うゼロたちの元へ行って止めなければ。

 

なぜなら、あのラフレイアは…!

 

 

 

 

 

 

 始祖の箱舟にサイトの救出を妨害され、グレンは苛立った。

 

「この野郎、どうしても邪魔するってんだな、上等だ!

てめぇを焼き鳥にして食ってやんよ!」

 

 おらぁ!の怒号と共にグレンは炎を纏った拳で始祖の箱舟を殴りつけた。一度のみにとどまらず、一気に勝負を付けようと殴り、殴り、蹴り、幾度も殴打を繰り返した。

しかし、始祖の箱舟は攻撃を受けた箇所から火花を起こし怯みこそするが、感情的な反応は全く見せなかった。

 

「っつ…固ってぇ…!!」

 

 それどころか、殴り続けたグレンの方が痛みを覚えていた。

一方で始祖の箱舟は反応なし。

その無反応さが、感情が表に出やすいグレンにとって腹立たしい。尤も、機械だからどうと言えるものではない。

 

「っくしょう、ムカつくぜそのリアクションの無さは…よぉ!」

 

 それでも力を頼りに、グレンは始祖の箱舟を退けるべく怒涛の乱撃に出ようとした。

 

 だが、始祖の箱舟はただで殴られるのをそれ以上良しとしなかった。

繰り出されたグレンの拳を、その鋼鉄の左手でガシッと受け止めてしまった。

 

「何!?うおぉ!?」

 

 驚いた時にはもう遅し。その一瞬の隙を突かれ、グレンは明後日の方向へ投げ飛ばされてしまった。

 

 地面に背中を打ち付ける形で落下したグレンに向け、始祖の箱舟はエメラルドグリーンに光るレーザー光線を発射した。その光線を受けてちょうど立ち上がりざまだったグレンは、再びダウンさせられてしまうのだった。

 

そこからは始祖の箱舟側のターンとなった。グレンが怯み、反撃の機すら与えまいと、レーザーを乱射し続けていった。

 

「やられて、たまるかよぉ!」

 

グレンファイヤーは、燃え滾る炎のごとき不屈の精神…気合で立ち上がる。激しくその身を燃え上がらせながら始祖の箱舟に向かって走り出した。

 

 

 

 

 苦戦するグレンファイヤーとは異なり、ゼロの方はどちらかというと優勢にあった。

ラフレイアはヒューマノイド的な体格ではない分、どうしても動きが単調でパターンも狭まる。物理的な攻撃手段は体当たりやしゃくりあげくらいだ。

 

 ゼロに向けて、ラフレイアは突撃する。ゼロはそれを真正面から両手で受け止める。少しばかり地面をえぐるくらい後ろにずらされるも、彼は踏ん張り持ちこたえた。

 そこからゼロの膝蹴りが食い込み、ラフレイアが怯んだ。

 

「ダァ!」

 

 ゼロはラッシュパンチを繰り出し、飛び掛かりながらラフレイアの体に腕を回し、叩きつける。プロレス技で言うネックブリーカー・ドロップだ。

土飛沫を上げながら叩きつけられたラフレイアに、ゼロは拳を、踵落としを叩き入れてさらにダメージを加えていく。

 

「ギイイイイ!!」

 

だが、ラフレイアも更なる技を行使することで反撃に映る。

 

「ドワ!?ゲホッガハッ!」

 

それは、大量の花粉。顔である花の中心よりそれをゼロに向けて放射した。

視界を真っ黄色に染めるほどの多量の花粉は、ゼロを怯ませた。

宇宙環境に適応した生態であるウルトラマンは酸素呼吸を必要としないとはいえ、有機生物を炭化させるこの花粉が彼らにとって有毒であることに変わりないのだ。

 

 酷くせき込んだゼロに、ラフレイアは数度体当たりでゼロを痛めつけた。

 

「ぐ…んの野郎!」

 

 仰け反ったゼロはすぐに持ち直して殴り返しに向かうも、ラフレイアはそんなことはお見通しだとばかりに、殴られる前に花粉をゼロに浴びせてしまう。

 

 花粉を吸いこんでしまったゼロはまたもせき込んで怯み、その間にまたラフレイアから蹴とばされ、痛めつけられていく。

 

『げほ!…くそ!この花粉をなんとかしないと!』

 

 ゼロの体を通して、それを吸ったサイトも酷く苦しみを感じた。喉に多量の粉をぶちまけられたようで息苦しい。

 

『サイト、ここは一気にケリをつけるぞ!』

『仕方ねぇ、あれだな!あのレオキックみたいなやつ!』

『あぁ、テクターギアを纏った今の俺たちが唯一使える必殺の技だ!』

 

 二人の意志が、この苦難を経て一つに纏まった。

 奴が植物怪獣なら、炎を纏った一撃を込めればひとたまりもないはず。

 このタイプの敵ならグレンファイヤーが優位だろうが、生憎今の彼は、始祖の箱舟を食い止めるのに精いっぱいのようだ。なら自分たちがやるしかない。

 

 行くぞ!気合を入れて、ゼロは両足に炎をたぎらせた。

 

 ラフレイアが、花粉をまき散らしながら迫ってきている。

 よし、奴は格好の的だ。このまま正面から、この必殺の蹴りをお見舞いして一気に勝負を付けてやる!

 

 そうすることで、少なくとも俺のことをワルドは見直さざるを得ないはずだ!

 

 

「ウオオオオオオオ!」

 

 

ゼロの炎を纏った蹴りが、ラフレイアの体に食い込んだ。

 

 

 

 

カッ!と、強い光が、全てを飲み込まんとする勢いで爆炎が周囲に広がった。

 

 

 

 

 

「フン!」

 

 ファウストが闇の光弾〈ダークフェザー〉を放って銀色のウルトラマン…変身したシュウを狙撃する。

 

 戦闘を開始してから幾何かの時間が過ぎた今、シュウは未だにファウストを振り切ることができなかった。こいつは見逃すには危険すぎる敵であるが、それ以上にラフレイアと、奴と戦っているゼロの方が気がかりであった。

 だからこちらは奴に構っている暇などないのに、ファウストはしつこくこちらと戦うことを迫ってきている。

 

 何としてでも振り切って、ゼロを止めなければ。もし彼の戦いにグレンファイヤーも参加したらさらにまずいことになる!

 

 シュウは襲い来る光弾を左手首の腕輪で防ぎ、即座にもう片方の腕輪を重ね合わせ、高速移動〈マッハムーヴ〉で接近。同時にファウストに右足で蹴りを繰り出した。

ファウストはその一撃を左腕を盾にして防ぎ、続いて繰り出されたシュウの回し蹴りを、身を低くして回避し、シュウの顎をアッパーで殴り上げた。

 

「グァッ!」

 

「ディヤ!」

 

 続けてファウストの肘がシュウの腹に食い込む。

 腹を抑えて悶えるシュウの首を、ファウストがガシッと掴み持ち上げる。

 ぐぐぐぐっと今にも首の骨をへし折らんとする力強さで、ファウストはシュウの首を締め上げていき、勢いよく地面に彼を叩きつけた。

 

「グ、ア…!」

 

「ふっふっふ……フン!」

 

 地に背中を打ち付けられ苦しむシュウを、手を放したファウストはより深く痛めつけようと蹴りをもう一撃見舞う。

 

「っが…!!」

 

「こんなものか、ウルトラマン?そんなものではないはずだ、お前の振るうその力は!」

 

「グアァ!」

 

 まだ満足していない。そんな不満をぶつけるように、ファウストは彼の腹を踏みつけて苦しみ悶えさせる。

 

「さあどうした。貴様の力を存分に振るって私を退けて見せろ。それとも、このまま痛めつけられることが望みかい?」

 

「ぐ、が…!」

 

 痛めつけられている間にも、シュウの視界にはここではない別の場所の景色が映る。

 

 鋼鉄の巨人の姿をしている始祖の箱舟と戦うグレンファイヤー、その近くの戦場でラフレイアと戦うゼロの姿が見える。

 グレンファイヤーはまだ苦戦を強いられているようだ。

 あれから炎を纏った乱撃をぶちかまし続けたものの、始祖の箱舟は生物ではないこともあって、いまいち堪えた様子がない。あの全身を覆うボディが頑丈すぎるせいで勝機を見いだせていないでいた。かくしてゼロの方は、花粉を浴びせられて苦戦を強いられつつあった。

 

…怯んでいる場合か!早く立ち上がれ!

 

「シュワ!」

 

 シュウは自身に鞭を打って、自分を踏みつけてくるファウストの、顔に向けて光刃〈パーティクルフェザー〉を放った。

 

 光刃は、ファウストのこめかみをかすめた。

 

「ッグオォ!?」

 

 ファウストが顔を抑えながら怯んだ。今だ!

 シュウは即座に立ち上がり、抜刀術に似た構えでエネルギーを両手に1秒だけ溜め、十字に両手を組んで光線を打ち込んだ。

 

〈クロスレイ・シュトローム!〉

 

「ディア!」

 

「ヌオオオオオ!!」

 

 光線の直撃を受けたファウストが大きく吹っ飛んだ。

 今だ!シュウは地面に向けて〈パーティクルフェザー〉を放ち、砂煙を周囲に巻き起こした。

 

 立ち上がったファウストは、掌底を一突き打って砂煙を吹き飛ばす。だが、その時にはウルトラマンの姿は影も形もなかった。煙に紛れ、〈マッハムーヴ〉で一気にこの場を去ったのだろう。

 

「ち、逃がしたか」

 

 獲物を取り逃がしたことで、ファウストは舌打ちした。

 

「だが…まぁいい。時間稼ぎとしては十分か。

またいずれ楽しませてもらうよ、ウルトラマン…」

 

 シュウが去って行ったと思われる方角を見つめ、ファウストはそれ以上深追いして彼を追うようなことはせず、紫色に発光した後、その姿を消したのだった。

 

 

 

 

 なんとかファウストを振り切ることができた銀色のウルトラマン…もといシュウ。

ファウストと戦っていたせいで、時間は一刻の猶予もなかった。

 

 早くゼロを止めなければ。

 

 だが、彼の願いと裏腹に、ゼロはラフレイアに向けて、炎を纏った蹴りを見舞おうとしていた。

 

まずい!間に合え!

 

 シュウは目一杯飛ばした。飛ばしに飛ばして…炎を纏った蹴りを加えようとしていたゼロの足へ手を伸ばした。

 

 しかし…ファウストと戦っていたせいもあって、

既に遅かった。

 

 

 ゼロの蹴りを、防ぐことは叶わなかった。

 

 シュウがゼロの足を掴みきる前に、ゼロの炎を纏った蹴りは、ラフレイアの花粉に引火し、

 

 

周囲を強烈な爆炎で包み込んだ。

 

 

 

 

「ちくしょう、地上からだけなら防ぎようもあったが、なんで地下の隠し港の場所までバレちまってたんだ!」

 

ニューカッスル城にて留守を任されていたグル船長たちは、襲ってくるレコンキスタ兵を殴り飛ばし銃撃で倒しながら歯噛みした。

 

「ええい、時代遅れの王政府のカスどもが!」

「空賊に身を奴してでも生き恥を晒すその浅ましさ、身をもって知れ!」

 

レコンキスタの兵たちは、完全に自分たちが始祖ブリミルの加護を受けた身だと主張し敵を見下しながら攻撃を加えてきている。

 

「始祖の名を騙る貴様らがいえたことか!貴様らこそ始祖の身許で、許しを乞う側だろう!」

「なぁにが始祖の加護じゃ!ようは好き勝手する言い訳に始祖の名を利用しとるだけじゃろうが!これだから口先だけの貴族ってのは!」

 

「貴様ぁ!我らを侮辱するか!」

 

それに応じて王党派側も言い返しながら反撃し、互いに攻撃の応酬を繰り返していく。

 

「船長、妙ではないか?式に出た面子がいまだに戻ってこないぞ!」

 

共闘している王党派のメイジがグル船長に、ウェールズたちがいまだに戻って来ていない疑問をぶつけた。

 

「伝令は出したんじゃろうな!?」

「当然だ!」

「なら戻ってくるまで耐え抜くんじゃ!兄者たちもまだ戻って来てねぇ今、わしらがここで踏ん張る以外にねぇ!

不安を覚える暇があんなら気合いを入れ直せ、野郎ども!」」

 

グル船長の鼓舞が、炎の空賊のクルーたちに、そして共に戦う王党派に伝染していく。

危機に陥っても炎のように熱く燃える。それが今日まで戦ってこれた理由の一つだ。

 

しかし…

 

「背、船長!あれ、一体なんすか…!?」

 

空賊の一人が、窓の外…ちょうどルイズの結婚式が行われているはずの教会の方角を指さしながらグルに呼びかける。

グルや他の面々もそちらに目が泳いだ。レコンキスタ側はこれを見て隙を突こうとする者もいたが、ちょうど教会の方角の景色を映す窓より、強い光が城内に差し込んできていた。

 赤く燃え盛る炎と、その中心から広がっていく閃光。

 

それがニューカッスルの城内をも白く染め上げた。

 

 

 

 

 ゼロは、ラフレイアの花粉への引火で起きたこの爆発に、真っ先に飲み込まれた。爆発の勢いに飲まれる中、彼の左目に別の景色が映る。

 

 使い魔と主人の、契約による視界の共有。それによるルイズの見ている景色だ。始祖の箱舟の中にいる彼女の目にも、外から降り注ぐ強い閃光が、彼女のいる内部にも行き渡っていた。

 

 たった一瞬のことだったが、サイトの中に絶望が走った。

 

 ルイズの方へ手を伸ばしても手が全く届かない。

 

 始祖の方舟と、それと戦うグレンファイヤーも、その炎の中へと消えていく。

 

 

 ゼロも、サイトも、キュルケたちも、爆炎の中へと消えていき、視界が真っ白な光の中へ飲み込まれていった。

 

 




今回の王党派壊滅に至るまでのエピソード、改変の際にかなり力を入れたつもりですが、その一方でもっと面白くできたのでは?と、自分の力不足を強く感じてます。劇中のサイトが、ウルトラマンでなければ自分はどれだけ無力な人間なのだろう、と思っている様に。
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