ウルトラマンゼロ~絆と零の使い魔~   作:???second

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傲慢なる戦士

 ウルトラマンメビウスが地球で最初に戦った敵、『宇宙斬鉄怪獣ディノゾール』。

 

 トリスタニアの街に降り立つや否や、ディノゾールは鋭い雄叫びを上げて口から細く目に見えない何かを吐きだした。すると、それに当たった建物が、次々と屋根の角の部分などを中心に切り落とされていった。

 

「な、なんだありゃ…」

 

 サイトの背中から、デルフがあんぐりとした声を漏らす。

 ディノゾールの口から放たれた鋭い鞭状の舌『断層スクープテイザー』。それは、目に見えないほどの速さで振り回すことであらゆる物体を瞬時に切断する。舌の総延長は1万メートルだが、直径は1オングストロームという異常な細さで、視認は非常に困難な凶器だ。

 

「う、うわああああああ!!!」

 

 その悍ましく恐ろしい姿と、その攻撃を見たトリスタニアの住人達は恐れおののいて、ディノゾールから離れようと逃げ出していく。

 

「ディ、ディノゾール!?」

 

 サイトは見覚えがある。何せこの目で最初に見た怪獣だったのだから、その当時の光景を色濃く覚えていた。

 

「サイト、あの魔物を見たことがあるの!?」

「ああ…俺の知ってる対怪獣防衛隊を、全滅に追い込んだほどの怪獣…でも、どうしてこの世界にディノゾールがいやがる!?」

 

 当時の光景を思い出すと、足が震える。また、あの恐ろしい悪夢を生み出した奴をまたこうしてみることになるなんて思っても見なかった。

 サイトが震えている。地球の存在について半信半疑なルイズも彼の言うことが真実味があることを悟った。でも、だったらなおさら!

 

「あの怪獣を倒さないといけないってことじゃない!」

 

 ルイズはこれ以上、自分の誇りある国の柱たる街を壊されてなるものかと、杖を手に取ってディノゾールに立ち向かおうとした。無論これをサイトたちが止めないわけがない。相手が悪すぎる。

 

「何考えてるのルイズ!やめなさい!」

「止めろルイズ!お前ひとりで敵いっこないだろ!」

 

 正直言ってディノゾールは愚か、先日のクール星人も含めて敵う要素なんかこの世界には皆無だとサイトは思った。よほどのファンタジックなチート能力でもなければ、あの怪獣に対抗することなどできはしない。ましてルイズ一人で倒せる相手なら、地球人は誰一人苦労することなんかなかった。地球にディノゾールが現れたあの日、GUYSの現隊長であるリュウを除いたクルーたちが戦死することだってなかった。

 

「離して二人とも!あんたたちは自分に馴染みのある街が教われて黙ってられるの!?」

「確かに嫌だってのはわかるさ…でも相手が悪すぎる!大人しく逃げるんだ!」

「でも!!」

 

 ルイズが抗議しようとした途端、彼女たちの傍らにある店がディノゾールに切り裂かれて崩れ落ちた。一同はそれを目の当たりにして恐怖を覚える。さすがにルイズも黙らされた。

 

「ここは危険。いったん安全な場所に避難した方がいい」

 

 タバサは指笛を吹いてシルフィードを呼び出し、ルイズたちを全員乗せた。ルイズたちの隙を見たサイトは、シルフィードが街の郊外に飛び立とうとした寸でのところで降り、街の中に走り出した。ルイズたちは一秒でも早くこの場を離れることに気を取られていたためかそれに気づかず、シルフィードに乗ったまま街の郊外へ飛び立ってしまった。

 

 

 

 

 

 その頃、トリスタニア城から出撃した魔法の先頭エリート部隊『魔法衛士隊』が、竜に乗って街を蹂躙するディノゾールに立ち向かって行く。

 

「なんて巨大な魔物なんだ…こんな化け物がこの世にいたなんて」

「臆するな!しょせんは獣、貴族の敵ではない!」

「トリステインの平和を汚す化け物め!始祖ブリミルの名において、裁きを下してやる!」

 

 ここは国の政治の中心であり、この国を治める王族たちがいる。何が何でも、この魔物を倒さなければならない。

それに自分たちには魔法がある。始祖ブリミルが自分たち貴族をメイジたらしめる偉大な力をもってすれば、こんな醜くおぞましい魔物ごときに後れを取るはずがない。

…そう思っていたのも束の間だった。

火や風、氷の矢、雷、ありったけの魔法や、地上から大砲による砲撃が繰り出されたが、ディノゾールにはびくともしなかった。

 

「ま、魔法が効いてない!?」

「怯むな!このまま魔法で…へ?」

 

全く堪えもしないディノゾールに恐れを抱く兵士たちに、まだ果敢に立ち向かおうとする別の兵士が檄を飛ばすが、その兵士は…次の瞬間に上半身と下半身が別れてしまった。それを見た他の兵士たちは、恐怖した。

 

「な…!」

「ひ、ひいいいい!!」

 

風の魔法〈エア・カッター〉を思わせたが、メイジが放つそれとも比較にならない…あまりにも速く、目にも見えない音速の斬撃。しかもメイジと違い詠唱に必要な一時の間すらもない。

 次々とディノゾールの、目に見えにくい切り裂き攻撃によって倒されていった。

自分たちが魔物なんかに後れを取るはずがないと息巻いていたメイジたちの戦意は、著しく低下していた。

 

「わ、ワルド隊長!もう勝てません!逃げましょう!」

 

 傷ついた兵士の一人が、巨大な鳥グリフォンに乗っている銀髪の貴族の男性に言った。『ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド』。魔法衛士隊のグリフォン隊の隊長。外見は老けて見えるのだが、若干26歳のスクウェアクラスの優秀なメイジだ。

 

「馬鹿者!我々が民を守らなくて誰が守るのだ!?ましてや後ろには…!」

 

 レイピア型の杖を振りながら、ワルドは部下に怒鳴る。

 

「しかし、戦力差の大きさはワルド隊長もお察しのはず!」

「ぬう…」

 

 ワルドだって、ここで死ぬことはできなかった。彼には死ぬに死ねない大きな理由があった。それを果たすまでは、彼も死ねない身だった。

 

「せめて民や怪我人を待避させろ!まず王宮にいる王族の方々を最優先だ!」

 

 ワルドの決断は犬死にではなく、救出だった。しかし、民より王宮の者たちを優先、どこか微妙なものに聞こえるかもしれない。だが民よりも貴族の方が政治の手腕に富んでいる。事後のことは彼らでなければ解決できないことが多いのだ。兵士たちは城の貴族たちをまず安全の場所に避難させた。

 

 

 

 

「サイトは!?サイトはどこに行ったの!?」

 

 シルフィードに乗っていたルイズたちだが、サイトの姿がなかったことに気づく。

 

「ダーリンがいないですって!?なんでこんな時に…?タバサ、もう一度降りて探したら…」

「だめ、危険」

 

 キュルケがサイトの捜索をすべしと提案したが、タバサはそれに反対した。ディノゾールの攻撃がいつこちらに向くかわからない。その状況下でサイトの救出は困難だった。探している間にこちらがやられてしまう。

 

「でも、使い魔を見捨てるなんてできない!」

「それでもダメ、あなたが死ぬだけ」

 

 それでも下ろすようにルイズがタバサに言うが、タバサは聞き入れてくれない。

 彼女たちがもめている間にも、ディノゾールの攻撃によって町が荒れていく。神聖な始祖より与えられたと言ってもいい美しかった町並みが、醜い怪物によって打ち壊されていく。

 その魔の手は、トリスタニアの城の方面にまで及ぼうとしていた。城から出撃した竜騎士のメイジたちがディノゾールに向かってありとあらゆる魔法を使って攻撃を仕掛けるが、ディノゾールは全くものともしない。風の魔法で切り裂かれても、炎の魔法で体を焼かれても全く持って動じなかった。お返しにディノゾールは逆に彼らに斬鉄を放って切り落としてしまう。斬鉄は、城の周りの地面さえも抉った。

 

「城が!姫様!」

 

 城の付近まで攻撃され、ルイズの冷静さを奪い去る。

 

「ルイズ落ち着きなさい!」

 

 キュルケがルイズに落ち着くように言った。

 

「だけど…!!!」

「あなたが一人熱くなったって状況は変わらないわ!ここはタバサの言う通り、避難しておきましょう」

「………………っ」

 

 シルフィードによって避難先の街郊外へ向かうルイズたち。ルイズは悔しかった。使い魔であるサイトを見つけてあげられない上に、この国の窮地を救えない無力な『ゼロ』の自分を、酷く恨んだ。

 

 

 

 

「逃げろおおお!!」「ママああああ!!」

 

 民たちは一目散に逃げ出した。しかし、中にはディノゾールの斬撃により、無残に命を落とした者もいれば、命の惜しさのあまり他人を見捨ててしまう者もいた。

 

「あ!」

 

 ディノゾールの攻撃から逃げる小さな男の子が、躓いて転んでしまう。ちょうどその時、子供だろうがお構いなしにディノゾールの口から斬鉄が飛ぶ。少年はもうだめだ!そう思って目を閉じた。しかし、自分が誰かに持ち上げられ、運ばれていくのを感じた。

 青い模様の、変わった服を着た青年…サイトだった。街の人たちの避難を少しでもと、そして何より戦うために一人ここに残っていたのだ。

 

「大丈夫!?」

「う、うん!」

 

怪我がないか、サイトは尋ねると少年は頷く。

 

「さ、早く逃げて!」

 

背中を押すように少年の背を軽く叩くと、少年は「ありがとう!」とサイトに礼を言って駆け出して行った。

 

「…」

 

 自分にとってディノゾールは、自分に地獄を始めて見せた恐るべき怪獣。見逃せば、あの時の自分と同じ痛みを味わう人が増えていくばかりだ。

 

『サイト、覚悟はできてるよな』

 

覚悟を問うゼロの声が聞こえてくる。

 

「ああ、ゼロ。力、もう一度貸してくれ」

 

 そう、今ディノゾールに立ち向かえるのは自分たちだけだ。意を決したサイトは、左手を胸に当てると、天を仰ぐように掲げた。すると、あの時と同じように左腕のブレスレットの形をとっていたテクターギアが本来の形へ変形しながらサイトの体を包み込んでいった。

 

 

 

 

 

「あなたたちは先に城から脱出なさい!王女たる私がこの城を離れるわけにはまいりません!」

 

 トリスタニア城。アンリエッタは自室のバルコニーから、火の手の回る城下町を見つめ、自分だけ安全な場所に移動するわけには行かないと、この場に残ることを選んだ。

 

「しかし、姫様はこの国になくてはならぬ存在なのです!ここに残るなど、危険極まりない行為ですぞ!」

 

 マザリーニは必死の説得を試みたその時、目映い光が突然現れ、一瞬彼らの視界を奪い去る。

 

「え?」

 

 恐る恐る目を開くと、光の柱の中に城を背に立つ鎧を着こんだ巨大な背中が目に入った。光の柱はたちまち、テクターギアをまとったウルトラ戦士『テクターギア・ゼロ』の姿となって城の前にその雄々しい姿を現した。

 

「もしや、あの巨人が…魔法学院を救ったと言う巨人…!」

 

 

 

 

「デュ!」

 

 ガッチリと、左拳を左脇腹にひっこめ、人差し指と中指を突き立てた右手を突き出す形でファイティングポーズをとる。

 

「キシャアアアアアア!!!!」

 

 ディノゾールは、突如現れこちらを見るゼロを敵と判断し、先手を打つと言わんばかりに舌による斬鉄攻撃でゼロを切り裂こうとした。スパッ!とものを斬る音が鳴り、ゼロはとっさに避けた。

 間一髪か。ゼロに傷はなかった。しかし、ゼロの背後に建っていた城のバルコニーが、ポトリと落ちて砕けた。これは城にお勤め中の貴族にとって冷や汗をかかされるものだった。

 

「な、なんと…この国の象徴たる城に傷が…!!」

「城の石はスクウェアクラスのメイジを何人も動員させて作り上げたものだぞ!。その一部分を切り落とすとは…!!」

 

 しかも危ないことに、姫君であるアンリエッタがそのバルコニーの近くでゼロとディノゾールの戦いを見ていたものだから、危うく命を落としかけたとも言えた。

 再び、ディノゾールの舌を使った切り裂き攻撃が炸裂する。前転して避けたり、バック転しつつ避けたり、時に飛び上がったりしながら回避していくゼロ。だが、それを続けていくうちに街が瓦礫の山になっていく。

 

『ちょ!ゼロ!街のことも気に掛けろよ!』

 

サイトがゼロの中からダメ押しする。

 

「仕方ねえだろ!第一ぶっ壊れたんならまた直せば済む話じゃねえか!」

 

 そんなあっさりと言い捨てていいことでもない。サイトは抗議しようとしたが、ゼロは話を聞かず、反撃の機会を狙いつつ、ディノゾールの斬鉄攻撃を避け続けていく。

 

「ちょと!少しは街に気を遣いなさいよ!」

 

 ルイズがキュルケやタバサと共にシルフィードの上で戦いを見ていたが、ゼロの荒い戦い方で街が壊れていくのを見て憤慨した。

 街の人々は巨人と怪獣の戦いにハラハラしながらこの戦いが早く終わることを願い続けた。

 

『待ってくれゼロ!まだ逃げ遅れた子供がいる!』

 

 サイトがそう言った時、ゼロの戦いの場のど真ん中に、まだ幼い少女が恐怖のあまりその場に膝をついて泣き続けていた姿が目に入った。必死こいて逃げることさえも、足がすくんで動けず、しかも一人ぼっちの状態。無視してはならない…と普通なら思うだろう。

 

「今はそれどころじゃねえ!後にしろ!」

 

なんとゼロは、その少女の存在を無視しようとしたのだ。

 

『何言ってんだ!あの子の命がかかってるんだぞ!』

 

 サイトが信じられないと声を上げたその時だった。ディノゾールの攻撃が、その動けない少女にまで及ぼうとしたのだ。もう放っておくことはできない。

 

『間に合えええええええ!!』

「な!?」

 

 サイトはゼロの中で、その手を伸ばそうとした。

 

すると、彼と同化していたゼロの体が、ゼロ本人の意思と関係なく動き出した。超特急で走り込み、地面を転がりながら少女をその手の中に放り込んだ。

 

「デュ!?」

 

 予想通りゼロは子供を庇ったことで、左頬に切り傷を負ってダメージを受けてしまう。

 傷の痛みをこらえながらも、サイトの意思で動くゼロは、その子供を手に乗せ、避難していた人々の前へ飛び降りて、その少女を地面の上に下ろした。

 

「ママ!!」

 

その子供は、母親の胸の中へ一目散に飛び込んだ。

 

「たかが平民のガキのために…」

 

 幾人かの貴族たちは驚きを隠せなかった。得体の知れない巨人が、たった一人の子供のために命を張って守ってくれたなど、にわかに信じがたい現実だった。

 アンリエッタも白のバルコニーからその光景を目にした。

 

「たった一人の子供のために、自ら傷つくことを厭わないなんて……」

 

 アンリエッタはこの光景に対して、巨人が敵ではないと言う確信を抱いた。国の次代を担う者としてはいささか軽率かもしれない。それでも彼女はそう思ってしまったのだ。

 

「ち…くしょうが…痛てえ」

 

 傷ついた左頬を抑えながらゼロはディノゾールの方を振り返る。一撃をもらった箇所が、偶然にもテクターギアに覆われていない箇所だった。

 

 ディノゾールは暴れることしか能がないようで、吠え続けてこちらに殺意をむき出しにしている。

 このまま避け続けても埒が明かない。一気に止めを刺そう。

 ディノゾールが再び細く見えない舌を振い、切り裂き攻撃をゼロに仕掛ける。それを掻い潜って行ったゼロは、鎧で重くなった体をものともせずに助走をつけながら駆け出す。

数回ほど切り裂き攻撃がゼロの身を襲ったが、いずれも被弾した箇所はテクターギアに守られていたおかげでノーダメージだった。

 

 ゼロは空中回転しながら、ディノゾールに向かって炎を守った右足を突き出しながら急降下した。

 

〈ウルトラゼロキック!〉

「デアアアアアアアアアア!!!!」

 

 ロケットのように降ってきたゼロの必殺の蹴り技は、ディノゾールの背中をボカッ!!と抉るように深く陥没させた。ゼロは後ろ向きに回転しながら地面に着地したと同時に、ディノゾールは力尽きてその場に倒れ伏したと同時に、体内の起爆物がはじけたかのごとく大爆発した。

 

「や、やった…!」

「おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 街を蹂躙した悪魔が、謎の鎧の戦士によって打ち破られた。トリスタニアの街の人々は飛び上がるほど大いに喜んだ。悪夢のような時間は、もう終わったのだ。

 

「ありがとう!ウルトラマーーーーン!!!!」

 

 ゼロへの感謝の言葉が飛び交う。ゼロ自身、この声は決して嫌いではない。自分をよく思ってくれる奴がいるというのは心地よいものだと知っているから。

 だが、彼はそれ以上に不機嫌だった。

 

「サイト、てめえなんで邪魔しやがった!?お前が余計なことしなけりゃ、もっと早くあの怪獣を倒せたってのに!」

 

 自分の中にいるサイトに向かって、彼は不平を吐き飛ばした。余計なこと…それはさっき彼と同化していたサイトの意思がゼロよりも強く働いたせいで、ゼロはさっき逃げ遅れた子を庇って傷を負ってしまった時のことだ。大概のウルトラマンは身を挺してまで小さな目の前の命を助けるのが必然的に思えるだろう。

 だがゼロはそうではなかった。それが、サイトには許せなかった。同化しているゼロを巻き込み、迷惑をかけてしまったと言う罪悪感は確かにある。だがそれ以上にゼロへの不満が募っていた。

 それは、地上からゼロの勝利に大喜びを示したキュルケと、そんな彼女に抱きつかれるタバサとは打って変わって、ルイズもどこか不満げな表情だった。

 

『バカヤロー!!!』

「あ?」

 

 ゼロの脳内に、我慢ならなくなったサイトの怒鳴り声が響く。

 

『ゼロ、お前なんて下手くそな戦い方だ!!周りを見てみやがれ!!』

 

 サイトに言われた通り、ゼロはトリスタニアの一帯を見渡した。

 街は、ゼロとディノゾールの激闘の影響で酷く荒れていた。しかも、その爪痕の大半は、ディノゾールが町の建物を壊したこと以上に、ゼロが建物を踏み壊すことも躊躇わずにいたことが最大の原因であった。

 

『それでもウルトラマンかよ!!何も…なんも守れてないじゃないか!』

 

 悲痛に怒りを叫ぶサイト。過去の怪獣災害で彼をはじめとした地球人は心に傷を負い、それでもその痛みを背負いながら生きてきた。その気持ちを、ゼロのような怪獣と戦う者はくみ取らなければならないはず。

 

しかし…。

 

「…は!そんなの俺の知ったことじゃねえ。

 

逃げ遅れた奴らは、状況を弁えずに残った馬鹿か、力の差もわからず立ち向かった馬鹿か、運がなかった奴らだ。んな奴らまでいちいち構ってたら、こっちがやられて本末転倒だろうが。

 

ウルトラ兄弟たちはそんな連中すらも救うべきだとか抜かしてやがったが、そんなの俺から言わせれば、

 

人間の都合のいい道具に成り下がるイカれた連中でしかねぇんだよ」

 

『!?』

 

 人の…道具、だと…?こいつは、自分の同胞を…尊敬すべき先輩たちのことを『人間の都合のいい道具に成り下がるイカれた連中』だと?

 

「俺は俺の意思で戦い、『力』で全ての悪をぶっ潰す!

 

それを成し遂げるこの俺こそが、真のウルトラマンだって証明してやるぜ!!」

 

 信じられなかった。ウルトラマンが…自分たち地球人にとって英雄たる存在である種族の戦士が、力こそが正義だと主張する、こんな非情なことを平気で言い放つなんて…。

 

『―――なんて野郎だ…!!』

 

 こいつは地球を守ってきた英雄たちを平気な顔で見下している。

 信じていたのに、見事に裏切られた気分だった。サイトは、ゼロに対して凄まじい失望感を抱いた。

 

―――こいつは、『ウルトラマン』なんかじゃない、と。

 

 

―――俺は、こんな最低な宇宙人と合体したと言うのか、と…。

 




ここまで読んでくださった皆様からすれば、今回のゼロは受け付けづらいキャラクターになってるとは思います。改悪…と言えるかもしれません。

原点でのゼロも持っていた、力への執着心の強さの他、自分を光の国から追放した他のウルトラ戦士たちへのコンプレックス等を自分なりに形にしようとした結果が今回のお話です。

勿論サイトは、ウルトラマンたちに幾度も命を救われた地球人の一人である以上、ゼロの今の在り方に強く反発しております。
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