デビル・グルメ   作:ナオ3

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今回のお話は性的、猟奇描写があります。
それでも良いならスクロールして下さい。


憤怒のつみれ汁 1 ※猟奇的、性的描写あり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜、世界から色が消えた。

 辺境の小さな村。その外れにある納屋の中は、腐敗した吐瀉物のような臭気と、鉄錆びた血の匂い、そして強烈なすえた臭いで充満していた。

 

 

「あ……が……ッ、え、エレナ……ッ!」

 

 

 少年アレンは泥と藁にまみれた床を這っていた。

 両足は、膝から下が本来ありえない方向にひしゃげている。激痛が脳髄を焼き続けている。

 だが,アレンは止まらなかった。爪が剥がれ、指先から血が滲もうとも、肘だけで体を引きずり,その場所へ向かう。

 部屋の中央。

 そこに、少女が転がっていた。

 幼馴染のエレナ。村一番の笑顔を見せる、太陽のような少女だった。

 だが今、彼女は全裸だった。

 白かった肌は青痣と噛み跡でまだら模様になり、太腿には男の獣欲の痕跡が、汚らわしい粘液となってこびりついている。

 

 

「エレナ……! エレナ、返事をしてくれ……!」

 

 

 アレンは動かない足を引きずり、ようやく彼女の元へと辿り着いた。震える手で、彼女の体を抱きしめる。冷たい。まるで陶器のように冷え切っている。

 

 

「ごめん……ごめんよ……! 僕が、弱かったから……!」

 

 

 呼びかけても、揺さぶっても、エレナからの反応はない。

 虚ろに開かれた瞳は、何もない虚空を見つめたまま、ピクリとも動かない。

 心は、完全に壊され尽くしていた。

 ――数時間前の地獄が、フラッシュバックする。

 魔王討伐の旅の途中だという「勇者」マルスとそのパーティーが村に立ち寄った。

 歓迎する村人たち。だが、マルスの目は獲物を探す獣のそれだった。彼はエレナを見初め、人気のない納屋へと無理やり連れ込んだ。

 異変に気づいたアレンが駆けつけた時、既にエレナは組み敷かれていた。

 

 

『やめろ! 離せ!』

 

 

 アレンは農具を手に飛びかかった。だが、相手は勇者。レベルが違いすぎた。

 マルスはアレンの攻撃をあくび交じりに受け流し、その足を無造作に踏み砕いた。

 

 

『ギャアアアアアアッ!?』

 

『うっせえな、雑魚が』

 

 

 マルスは魔法でアレンを壁に縫い付けた。瞼すら閉じられないように固定し、特等席を用意した。

 

 

『その雑魚くんが大事なら、俺を悦ばせろ』

 

 

 マルスはエレナの髪を掴み、泣き叫ぶアレンを見せつけながら、彼女に強要した。

 

 

『ああ!? 雑魚くんがどうなっても良いのか!? もっと真面目にやれ!!』

 

『やめろ! やめてくれぇ!!』

 

 

 アレンの叫びは、マルスの興奮を煽るスパイスにしかならなかった。

 エレナはアレンを守るために、震える体で勇者の要求に従わされた。その目から光が消えていくのを、アレンは見ていることしかできなかった。

 

 

『ははは、雑魚くん見ろよ! お前のために必死に奉仕してる彼女の頑張りをよぉ!!!』

 

 

 地獄だった。

 肉体的な痛みなど比ではない。魂が、尊厳が、目の前で蹂躙され汚されていく。

 マルスは行為に及びながら、アレンを嘲笑い続けた。

 必死に藻掻き叫ぶアレンにマルスは侮辱する。

 

 

『俺の楽しみの邪魔をするなよ、雑魚』

 

 

 そして、全てが終わった後。

 マルスは服を整えながら、ボロ雑巾のようになったエレナを見下ろし、そしてアレンの前に立った。

 

 

『あ〜、女はイマイチだけど、彼氏くんが居るとやっぱ違うわ』

 

 

 満足げな顔。一片の罪悪感もない、清々しいほどの邪悪。

 アレンは血涙を流して睨みつけた。

 

 

『ごろ……じでやるぅぅぅっぅぅ!!!』

 

『あ〜はいはい、定番の台詞ありがとう雑魚くん』

 

 

 マルスはアレンの殺意を、道端の犬の遠吠え程度にしか受け取らなかった。

 

 

『彼女を守れなかった自分を呪うんだな。……あばよ』

 

 

 そう言い捨てて、勇者は去っていった。

 アレンの拘束が解けたのは、それから数十分後のことだった。

 現在。

 アレンはエレナを抱きしめ、慟哭した。

 

 

「ゴメン……エレナ……」

 

 

 壊れた彼女に謝り続ける。

 そして、その謝罪はすぐに、どす黒い憎悪へと変わった。

 

 

「憎い!」

「憎い!!」

「憎い!!!」

 

 

 勇者マルス。その仲間たち。

 こんな外道を勇者として選んだ女神。

 理不尽を許容する世界。

 そして何より、何もできずにただ見ていただけの、無力な自分が。

 

 

「勇者共が、女神が……守れなかった僕が憎い!!!!!」

 

 

 アレンは吠えた。喉が裂けんばかりに。

 その声は、夜の闇に吸い込まれ――そして、一人の「客」を招いた。

 

 

「ふう……。底無しの絶望が僕を呼ぶ条件とはいえ……この光景は気が滅入ります」

 

 

 不意に、納屋の闇から声がした。

 アレンが顔を上げると、月明かりを背負って一人の男が立っていた。

 漆黒の髪、大理石のような白い肌。そして、鮮血のように紅い瞳。

 その美貌は、この惨劇の場にはあまりに不釣り合いだった。

 

 

「だ、誰だ……」

 

「通りすがりの悪魔、悠夜です」

 

 

 男――悠夜は、汚れた床を気にすることなく、アレンの傍らに跪いた。

 

 

「少年。君の絶望、そして煮えたぎるような憎悪……実に芳醇だ」

 

 

 悠夜はアレンの頬に手を添えた。氷のような冷たさが、復讐の熱を帯びた肌に心地よい。

 

 

「契約しませんか? 君に、あの勇者どもを皆殺しにできる『力』を与えましょう。そして……この少女に起きた惨劇を、『無かったこと』にしてあげましょう」

 

「な……!?」

 

 

 アレンの目が大きく見開かれた。

 復讐だけではない。エレナを救えるというのか。

 

 

「彼女の心と体、そして記憶を、今日という日が始まる前の状態に戻します。……代価は二つ。君の死後の『人生の記憶』。そして……勇者マルスの『遺体』です」

 

「やる……! 頼む、僕の全てをくれてやる!」

 

 

 アレンは即答した。迷う理由など一ミリもなかった。

 自分の魂など、エレナの指先一つにも劣る。

 

 

「契約成立です」

 

 

 悠夜が指を鳴らす。

 アレンの腕の中にいたエレナが、光の粒子となってふわりと消えた。

 

 

「彼女は僕が責任をもって預かります……だから、気兼ね無く復讐に注力して下さい」

 

「ああ……ありがとう……!」

 

 

 アレンは涙を流した。安堵の涙ではない。これで心置きなく修羅になれるという、決意の涙だ。

 

 

「さて、訓練期間は余裕をもって……」

 

「どれだけ痛くて苦しくても良いから早くしてくれ!」

 

 

 悠夜の言葉を遮り、アレンが叫んだ。

 

 

「あいつらが1秒でも人生を謳歌しているのが耐えられない!! 今すぐにでも殺したいんだ!」

 

 

 悠夜は少し驚いたように瞬きをし、そして静かに忠告した。

 

 

「……それだと、地獄を見なければなりませんよ?」

 

 

 通常の人間が勇者を殺せる力を得るには、かなりの歳月が必要だ。それを短期間で、しかも確実に得るとなれば、肉体と精神の崩壊ギリギリの負荷となる。

 

 

「ははは、おかしな事を」

 

 

 アレンは壊れたように笑った。

 その瞳は、既に狂気を宿していた。

 

 

「今以上の地獄はありますか?」

 

「……」

 

 

 悠夜は沈黙した。

 愛する者を目の前で壊され、無力を嘲笑われた少年。彼にとって、今の世界こそが最下層の地獄。

 これ以上の苦しみなど、存在するはずがない。

 

 

「僕が馬鹿でした」

 

 

 悠夜は深く頭を下げた。

 

 

「わかりました。貴方を最短最速で連れていきましょう。……あの勇者を、虫けらのように殺せる領域まで」

 

 

 悠夜が手をかざすと、空間に亀裂が入った。

 その向こう側から、濃密な魔力と、死の気配が漂ってくる。

 

 アレンは立ち上がった。折れていたはずの足は、契約の力で仮止めされている。

 それでも激痛が走るが、アレンの怒りへの水冷ましにもならない。

 彼は迷わず、闇の亀裂へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 一ヶ月後。

 古代遺跡の深層、ボスの間に続く巨大な扉の前。

 勇者マルス率いるパーティーは、ダンジョン攻略の成功を確信してはしゃいでいた。

 

 

「へっ、楽勝だったな。ここのお宝はすげえらしいぜ」

 

「今回の依頼人、ユーヤって言ったか? 気前のいい貴族様だよな。前金であれだけ払うんだから」

 

 

 マルスは大剣を肩に担ぎ、ニヤニヤと笑っていた。

 彼らは「ユーヤ」と名乗る謎の貴族から、このダンジョンの最奥にあるアーティファクトの回収を高額で依頼されていたのだ。

 

 

「おい、誰かいるぞ」

 

 

 魔法使いが声を上げた。

 扉の前に、一人の人影が立っていた。

 ボロボロの黒い外套を纏い、全身に無数の古傷を刻んだ少年だ。

 その佇まいは、歴戦の戦士というより、死の世界から戻ってきた亡霊のようだった。

 

 

「……待っていたぞ」

 

 

 少年――アレンが、地を這うような低い声で言った。

 

 

「あん? てめぇ、俺様に向かってなんだその態度? 勇者様だぞ?」

 

 

 マルスは不快そうに顔をしかめた。

 見覚えがあるような気もしたが、思い出せない。彼にとって、踏み潰した蟻の顔などいちいち記憶していないのだ。

 

 

「ん〜、何処かで見たような……まっ、いっか」

 

 

 マルスは興味を失った。

 

 

「どけよ雑魚。死にたくなかったらな」

 

 

 アレンは無言のまま、拳を強く握り締めた。

 爪が肉に食い込み、血が滲む。

 目の前に、憎い男がいる。

 エレナを壊した男。自分を嘲笑った男。

 今すぐ飛びかかって喉笛を食いちぎりたい衝動を、必死に抑え込む。

 

 

「…………」

 

「チッ、死ねよ雑魚」

 

 

 マルスは面倒くさそうに大剣を抜いた。

 自分の敵ではない。ただの障害物だ。

 彼は無造作に剣を振り下ろした。岩をも砕く一撃。アレンの細い体など両断されるはずだった。

 

 ドヂャアッ!!

 

 鈍い音が響き、何かが弾け飛んだ。

 アレンの体ではない。

 マルスの頭部だ。

 アレンは大剣を紙一重でかわし、カウンターで右拳をマルスの顔面に叩き込んだのだ。

 人間の頭蓋骨が熟した果実のように粉砕され、脳漿と血しぶきが舞い散る。

 

 

「え……?」

 

 

 パーティーメンバーたちが凍りついた。

 首から上が消滅した勇者の体が、ぐらりと揺れて倒れる。

 だが、次の瞬間。

 

 シュウウウ……。

 

 倒れたマルスの体から聖なる光が溢れ出す。

 失われた頭部が高速で再生し、マルスは何事もなかったかのように息を吹き返した。

 『女神の加護』による自動蘇生。彼が勇者と呼ばれる所以だ。

 

 

「はぁ!? お、俺は……死んだのか?」

 

 

 生き返ったマルスは、自分の顔をペタペタと触り、状況を理解して狂ったように笑い出した。

 

 

「は、ははははは!!! 見たか雑魚! せっかくのチャンス残念でしたぁ!!」

 

「俺様は死なねぇんだ! 女神の加護がある限り、俺は無敵なんだよ!!」

 

 勝ち誇るマルス。

 だが、アレンの反応は彼が予想したものとは違っていた。

 

 

「……良かった」

 

 

 アレンは、心底安堵したように、深く息を吐いた。

 

 

「彼から加護の事を聞いてたけど、不安でしょうがなかった」

「もし、あの一撃で本当に死んでしまったらどうしようかと怖かったんだ」

 

 

 アレンの瞳には、慈悲も恐怖もない。あるのは、無限の殺意と、終わらない復讐への渇望だけ。

 

 

「一度殺しただけじゃ、全然足りないよ」

 

「……あ?」

 

 

 マルスの背筋に、氷柱を突き刺されたような悪寒が走った。

 

 

「やっちまえ!!」

 

 

 仲間たちが一斉に襲いかかる。

 炎の魔法、聖なる光、疾風の斬撃。

 だが、アレンにとっては、止まって見えた。

 悠夜ですら驚愕するほどの執念で、数十年分に相当する地獄の訓練を一月で踏破したアレン。

 彼の目には勇者パーティーなど、這い回る虫けらと大差なかった。

 

 

「邪魔だ」

 

 

 アレンの手刀が閃く。

 魔法使いの首が飛び、僧侶の心臓が抜き取られ、剣士が両断される。

 一瞬の出来事だった。

 

 

「ひっ……!?」

 

 

 マルスは腰を抜かした。

 仲間たちが、ゴミのように転がっている。

 

 

「さあ、始めようか。勇者様」

 

 

 アレンがゆっくりと歩み寄る。

 その影が、マルスを飲み込んだ。

 そこからは、一方的な蹂躙だった。

 いや、それは「虐殺」ですらなかった。「遊戯」であり、「消費」だった。

 

 

「ギャアアアアアアッ!?」

 

「うっせえな、雑魚が」

 

 

 アレンは拳で、足で、指で、マルスを破壊した。

 腕をへし折り、内臓を蹴り破り、首をねじ切り、眼球を抉り出す。

 その度にマルスは絶命し、そして光に包まれて蘇る。

 十回、二十回、三十回。

 

 

「やめろ! やめてくれぇ!!」

 

 

 蘇るたびに、マルスの精神は摩耗していく。死の苦痛はリセットされない。恐怖は蓄積されていく。

 

 

「俺がお前に何したんだよぉ!? 人違いだろ!?」

 

 

 マルスは泣き叫んだ。

 彼は思い出せない。自分が踏み躙った数多くの「雑魚」の一人が、これほどの怪物になって戻ってくるなど、想像もできなかった。

 

 

「……別に、何も」

 

 

 アレンは無表情で、マルスの指を一本ずつ逆に折った。

 

 

「ぎいいいいいいい!!?」

 

 

 アレンはエレナのことは伝えなかった。

 「復讐」という大義名分を、こいつに与える必要はない。

 こいつは、理由もわからず、どうしようもない変態によって理不尽に嬲り殺されるべきだ。

 それこそが、こいつがエレナにしたことと同じだからだ。

 

 

「お前を殴るのが楽しいんだ」

 

 

 バキッ!

 

 

「お前の悲鳴が心地良いんだ」

 

 

 グシャッ!

 

 

「お前の涙が見たいんだ。お前の惨めな姿に興奮するんだよ」

 

 

 ドガッ!

 

 

「ひぃッ……! 誰か助けてくれぇ!」

 

 

 マルスは這って逃げようとする。

 アレンはその足を、あの日自分がされたように踏み砕いた。

 

 

「ぎゃあああああああ!!!」

 

「……僕の楽しみを邪魔するなよ、雑魚」

 

 

 それからはアレンは嬉々としてマルスを壊し続けた。

 だが、五十回を超えたあたりからマルスの再生速度が明らかに遅くなってきた。

 女神の加護にも限界がある。魂のエネルギーが尽きかけているのだ。

 光が弱々しくなり、傷の修復が不完全になる。

 欠損した指が戻らない。潰れた目が治らない。

 

 

「あ……が……」

 

 

 マルスはもはや悲鳴を上げる力もなく、ピクリとも動かない。

 アレンの顔から、加虐の笑みが消えた。

 代わりに浮かんだのは、焦燥だった。

 

 

「おい! しっかりしろ! まだだろ!?」

 

 

 アレンはマルスの胸倉を掴み、激しく揺さぶった。

 

 

「お願いだ! 死なないでくれ!!」

 

 

 それは心からの叫びだった。

 まだ足りない。全然足りない。

 エレナが受けた苦しみ、自分が味わった絶望。それを清算するには、たった五十回の死では釣り合わない。

 もっと、もっと、永遠に苦しんでほしい。

 

 

「僕にお前を殺させてくれ!!!」

 

「勇者なんだろ!? 僕みたいな雑魚に負けるな! 頑張れ!!」

 

 

 アレンは拳を振るいながら叫び続けた。

 殴れば死ぬ。死ねば蘇る。蘇ればまた殴れる。

 だから、蘇ってくれ。

 

 

「死ぬな」

「死ぬな」

「死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな死ぬな」

 

 

 狂気的な祈り。

 アレンは今、世界で誰よりも、この憎き男の生存を願っていた。

 生きて、苦しんで、僕に殺され続けてくれ。

 

 

「生きてくれ!!! 勇者マルスぅぅぅぅぅ!!!!!」

 

 

 その叫びと共に、アレンは渾身の拳を振り下ろした。

 

 ぐしゃあ。

 

 マルスの胸部が陥没し、心臓が破裂した。

 

 パキン。

 

 その瞬間、何か決定的なものが砕ける音がした。

 

 

「あっ」

 

 

 アレンの手が止まった。

 マルスの体から、光が出ない。

 傷が塞がらない。心臓が動かない。

 肉塊となった勇者は、ただ沈黙していた。

 

 

「お、おい」

 

 

 アレンはマルスの頬を叩いた。

 

 

「悪かった。次はもう少し優しくするから、起きてくれよ。なっ?」

 

 

 返事はない。

 体温が急速に失われていく。

 しばらくの沈黙の後、アレンは理解した。

 終わってしまったのだと。

 

 

「あ、あああああああああああああ!?」

 

 

 アレンは頭を抱えた。

 

 

「ちくしょう! この程度で死んでんじゃねえよ!!」

「ふざけるな! 起きろ! まだ許してないぞ! 起きろよォォォ!!」

 

 

 アレンは死体を何度も殴りつけた。

 だが、死体はただ崩れていくだけで、二度と動くことはなかった。

 勇者マルスは、完全に、永遠に死んだのだ。

 

 

「……はぁ、はぁ……」

 

 

 アレンの息遣いだけが、ダンジョンに響く。

 彼は血まみれの拳を下ろし、天井の崩れた隙間から見える星空を見上げた。

 

 

「ああ……終わった……終わったんだ」

 

 

 復讐は果たした。

 憎い敵は消えた。

 だが、胸に残ったのは、晴れやかな達成感などではなかった。

 底なしの空虚と、行き場のない怒りの残り火だけ。

 かつて、村でエレナと見上げたのと同じ夜空。

 けれど、今の彼の目には、その星々は冷たく、遠い光にしか見えなかった。

 汚れた手を見つめる。

 もう、あの頃の自分には戻れない。

 アレンは静かに目を閉じ、闇の中で立ち尽くした。




補足
勝負はアレンくんが圧倒してましたけど、実は結構ギリギリです。
リレイズする度にパワーアップして耐性を得るというヘラクレスっぽい超チートな加護です。
ですが、アレンくんの狂気と数回死んだ時点で心が折れました。
戦い続けたらアレンくんは負けていましたが気迫の勝利ですね。
アレンくんの心の強さとマルスの精神の脆弱さを考慮して悠夜はGOサインを出しました。
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