そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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もう大丈夫!私が来た!!

「次はお前だぜ……構えろよ、第2ラウンドだ!」

 

 脳無とかいう大男をぶっ飛ばした俺は、手マンと黒モヤの2人にかかってこいと挑発する。

 

 ……今の一撃で右腕にヒビが入ったから、さっきのはあと二発いや三発が限界だ。

 黒モヤはワープ的な“個性”で手マンは不明、さっきの一撃……《バリアブルスマッシュ》は出来れば至近距離で打ちたい。

 

 

 

 俺の“個性”は周囲にオーラを放ちバリアを展開すると説明しているが、実際は少し違う。

 

 俺の“個性”は、常に自身の周り(半径2.5m)にオーラと呼んでるエネルギーを放出している。そのオーラを攻撃に併せて、自動または任意で圧縮し、高密度のエネルギー空間を生成することができる。

 このエネルギー空間をバリアと呼んでいる。

 圧縮するエネルギーの量を調節することで、強力な攻撃すら防ぐことが可能になのだ。

 当然、放出しているエネルギーは俺の体力を消費して生成されるから、無限にバリアが出せるわけじゃないが、燃費はいいほうなので、今まで困ったことはない。

 

 さっきの一撃は、そのバリアを破壊することで中に圧縮されていた、高出力エネルギーを拳の軌道上に放つ技だ。

 どういう理屈かは分からないが、俺以外に破壊された時は、エネルギーは攻撃の軌道上に放たれず、霧散するようになっている。だから、俺にエネルギーが返ってきてダメージを受けることはない。

 

 さて、守ることに特化した俺の“個性”で、唯一高火力がだせる技だが、当然デメリットもある。

 高密度のエネルギー空間を破壊する際、突き出した拳はダメージを受けるというものだ。

 相手に破壊された場合は、エネルギーでダメージは負わないが、自分で破壊した場合は傷ついてしまう。都合がいいのか悪いのか分からないが、とにかくそういうものだと納得して欲しい。

 

 

 

「さてどっちから来るんだ?俺は両方相手してもいいんだぜ」

 

 ハイになった俺は、相澤先生達を逃がすための時間を稼ぐために、2人と対峙する。

 

「クソッ!脳無!!」

 

「あの筋肉達磨がいなきゃイキれないのか?それで雄英に襲撃するなんて笑えるな!」

 

「黙れ!」

 

「冷静になってください!死柄木弔!」

 

「黒霧ィ!」

 

「我々二人なら、子供一人簡単に殺すことができます。あなたが冷静であれば、手こずることなどないのです!」

 

「……そうだな……相手はガキだ……脳無をぶっ飛ばしたのは想定外だったけど……そう何発も打てないよなぁ」

 

「試してみるか?」

 

「右腕……震えてるぜ」

 

「武者震いだよ!」

 

 互いに軽口を言い合うと、同時に飛び出した。

 手マン……死柄木は俺に掌を向けて接近する。

 俺は警戒しつつも、至近距離で最大威力を放つために敢えて距離を縮める。

 

「死ねぇッ!?……クソが俺の“個性”も守れんのかよ」

 

「何がしたいか知らんけど、残念だったな!」

 

「死柄木弔!」

 

「黒霧だったか?良かったなお仲間がいて!」

 

 俺に触れようとした死柄木だったが、展開したバリアに阻まれ、隙ができてしまう。

 俺はそこを狙い蹴りを放つ。

 脇下を狙った鋭い蹴りは、死柄木に当たることなく、割り込んできた黒モヤ……黒霧によって無力化されてしまう。

 

「お前こそ危なかったんじゃないのか?黒霧!」

 

「はい」

 

「させねぇよ」

 

「ぐッ!?」

 

《バリアブルスマッシュ》

 

 俺の足を飲み込んだ黒霧は、体を収縮し始めたので、目の前でバリアを展開し破壊する。

 黒霧は凄まじい衝撃に吹き飛び、俺の足は解放される。

 

「黒霧!」

 

「仲間の心配してる場合か?次はお前だ!」

 

「死ねよクソガキ!」

 

「さっきもやったろ?無駄なんだよ!」

 

《バリアブルスマッシュ》

 

「ゔッ!!」

 

 黒霧が吹き飛ばされ、焦った死柄木はまた同じように掌を向けてくる。

 冷静さを失った死柄木の攻撃は、バリアに防がれ俺が反撃する隙を与える。

 衝撃を受けた死柄木は地面を転げ回るが、意識は失っていないようで、俺にいいようにやられた現状に怒りを露わにする。

 

 ……左腕は限界か。

 

 今ので二発目……骨は折れてないはずだが、左腕ではこれ以上打てない……いや、打つことは可能だが、緑谷のように酷い状態になるだろう。

 痺れる左腕に力を込めて、見せかけの余裕を装う。

 

「……クソ!クソ!クソ!こんなガキにいいようにされるなんて……ふざけんなよ!!」

 

「起きろ!!脳無!!このガキを殺せェ!!!」

 

 訓練施設の奥の奥から何かが近づいてくる。

 見なくてもわかる、脳無だ。

 黒霧や死柄木には殺さないために、手加減して放ったが、脳無は違う。初撃で打撃が効かないことがわかったから、全力で放った。

 なのに気を失うどころか、さっきと変わらず驚異的な身体能力で、俺を殺そうと接近する。

 

「……痛みを怖がって何がドMだ……」

 

 痛みを感じるとハイになる俺の体質は、人として欠陥がある証拠だった。

 “個性”によって守られ続けた俺は、人よりも痛みに敏感だ。友達にふざけて輪ゴムで腕を打たれた際、俺は全身が針に刺されたような痛みに感じる。

 脳はその痛みによって俺が失神しないように、アドレナリンやドーパミン等を過剰に分泌して、痛み以上に快楽を感じさせ守ってくれている。

 

 だからこそ怖いんだ。

 今、この瞬間右腕を破壊したら、どれ程の快楽が俺を包み込むのだろうか……想像しただけで恐ろしくなる。

 戻って来れなくなるのが怖い……切奈やトガちゃんの歯で噛まれた時になにも感じなくなるのが怖いんだ。

 

「やってやるよ」

 

 それでも俺はヒーローになるために、ここに来たんだろう……俺の全てを賭け金にこの一撃に未来を託す。

 

 骨にヒビが入った右腕をバリアで固定する。

 恐ろしい速さで俺を殺そうとする脳無を、迎え撃つために構えをとる。

 

「殺れ!脳無!!」

 

「……バリアブル……スマッシュ!」

 

 俺の拳と脳無の拳がぶつかるその時だった。

 

バァン!!

 

 施設の扉が吹き飛び、土煙とともに英雄が現れた。

 

「もう大丈夫!私が来た!!」

 

 オールマイトが助けに来てくれた。

 不安は一気に吹き飛び、希望が俺たちを照らす。

 

「オールマイト!」

 

「張理有少年……あとは私に任せなさい」

 

「はい」

 

 脳無の拳をバリアで防ぐと、オールマイトが俺の前に降り立つ。

 

「敵共……私が相手だ!」

 

 そこからは一瞬だった。

 黒霧と死柄木を無力化したことで、脳無と1対1になったオールマイトは、緑谷からの情報で“ショック吸収”を脳筋ゴリ押しで突破し、遥か上空に吹き飛ばした。

 

 主犯格の二人は脳無がやられると、オールマイトに呪詛を吐きながら逃亡して行った。

 二人が逃げてすぐ、飯田が教師陣を連れて施設に戻ってきてくれたため、残りのチンピラたちはすぐに捕まっていった。

 

 俺も腰のケースに入ってある医療キットから、鎮痛剤を取り出し服用する。

 腕の痛みや、引きかけていた額の痛みもすぐにマシになり、アドレナリン等の分泌が収まりテンションも元に戻っていく。

 

 

 

 

 

 近い未来で起きる大きな戦いの始まりとなった事件は、こうして幕を下ろした。

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