そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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宣誓!全国のギザ歯は僕に連絡くだッ(((殴

 時の流れは早いもので、1週間はあっという間に過ぎていった。

 あれ?これ前にも言ったけ?

 まぁいいや。

 とにかく、今日は待ちに待った雄英体育祭当日。

 僕たちは選手入場までの時間を、控え室で過ごしていた。

 

「皆、準備は出来ているか!?もうじき入場だ!!」

 

「コスチューム着たかったな」

 

「公平を期すために着用不可なんだよ」

 

「峰田くん、今日の僕のビジュ何点?」

 

「18禁」

 

 皆は緊張やワクワクでいっぱいいっぱいになっていると、轟くんが緑谷くんの前に近いた。

 ……壁ドンとかするのかな?

 

「なぁ瀬呂くん……あれって告白だったりする?」

 

「ハルは空気読もうな」

 

「ヒドイね、読む時は読むよ……多分」

 

 気になったから、近くにいた瀬呂くんに聞いてみたら、言葉のナイフで刺してきた。

 僕だって今のが、告白じゃないことくらいわかってたさ……ただほらこのシーンとした空気が嫌だからさ、読んだ上で壊そうとしたんだよ。

 

「客観的に見ても実力は俺の方が上だと思う。……お前、オールマイトに目ぇかけられてるよな。詮索するつもりはねぇがお前に勝つぞ」

 

「おお!?クラス最強が宣戦布告!!?」

 

「急にケンカ腰でどうした!?直前にやめろって」

 

「仲良しごっこじゃねぇんだ別にいいだろ」

 

 轟くんの突然の宣戦布告に、上鳴くんは驚き、切島くんは体育祭前に揉めごとはダメだと止めに入った。

 

「……今からボケたらウケるかな?」

 

「オイラお前の鋼メンタルはすげぇと思うけど、今ボケたら絶交するからな」

 

「じゃあやめた……こんなことで友達減らしたくないし」

 

 轟くんたちに聞こえないように、隣の峰田くんと話す。

 なんというか前回、箸休め回だったから、いきなりのシリアスに体が痒くなる。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか……わからないよ。そりゃ実力は君の方が上だよ、実力なんて大半の人に敵わないと思う」

 

 それにしても、緑谷くんって自己評価低いよね。

 まぁこの体育祭で活躍すれば、ちょっとはマシになるかな?

 今の緑谷くんを、前までの緑谷くんと思ってたら痛い目見るよと、轟くんに目で訴える。

 

「緑谷もあんまネガティブなこと言わねぇほうが」

 

「でも!皆……他の科の人も本気でトップを狙っているんだ!!僕だって遅れを取るわけにはいかないんだ」

 

「僕も本気で獲りに行く」

 

「……そうか」

 

 緑谷くんのかっこいい宣言を聞いた轟くんは、どういうわけか僕の方に近づいてくる。

 あらやだ!イケメンからのお誘いだったりする!?でもごめんなさいね!アタシには心に決めた人たちがいるの!

 

「お前……USJでオールマイト対策と戦ってたよな?正直、こん中で油断ならねえのはお前だ。……俺はお前にも勝つぞ」

 

 ……知ってたよ。

 せっかく人がシリアスな空気を変えてやろうと、色々考えてたのにさ……やっぱりこうなるのか。

 

「ハァ……がっかりだよ轟くん」

 

「お、おいどうしたんだよいきなり!?」

 

「ハルくん……?」

 

「轟くんさぁ……油断ならないのが僕だけだって?君の目にはなにが見えてるんだよ。ここにいる皆……それだけじゃない、B組も他の学科も全員油断ならない相手なんだよ」

 

 轟くんの失礼な言葉にカチンとなって、つい言い返しちゃった。

 シリアスは嫌いだけど、皆が軽く見られるのはもっと嫌だからさ……ちゃんと言っとくとしますか。

 

「これまでいい成績収めてるから天狗になってたりする?それはさ君の“個性”が偶々、活躍できる場面が多かっただけ……わかる?この体育祭に向けて皆特訓してきてるの、それなのに警戒してません眼中にありませんって……舐めてんの?

 

「ッ!?」

 

「……首席だからさ……選手宣誓任されてんの、小粋なジョークで盛り上げようと思ったけどやめるわ。少なくとも今、この瞬間に限ってトリックスターは僕だ……彼らを焚きつけることにするよ」

 

 控え室の空気が一気に重くなる。

 だからシリアスなんてやりたくないんだけどね。

 

「それじゃ入場しよっか」

 


 

『1年ステージ生徒の入場だ!!』

 

 プレゼント・マイク先生の声が響く。

 張り切って盛り上げてるなぁ……僕も負けないようにしよ。

 

『雄英体育祭!! ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!! どうせてめーらアレだろこいつらだろ!!? 敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!!!』

 

『ヒーロー科!! 1年!!! A組だろぉぉ!!?』

 

「おいハル!焚きつけるって何すんだよ!?」

 

「ん〜アドリブ?」

 

「オイラ不安しかねぇぞ」

 

「安心しなよ……悪いようにはしないって」

 

「嘘だよな、その顔は嘘ついてる顔だ」

 

「ソンナコトナイヨ」

 

「こっち見ろよ!」

 

『B組に続いて普通科C・D・E組……!! サポート科F・G・H組も来たぞー! そして経営科……』

 

「俺らって完全に引き立て役だよなぁ」

 

「マジだるい……」

 

 明らかに差をつけた紹介に、A組ヘイトが向く。

 

「選手宣誓!!」

 

「おお、今年の1年主審は18禁ヒーロー『ミッドナイト』か!」

 

「校長は?」

 

「校長は例年3年ステージだよ」

 

 一年全クラスが整列すると、大変エッチな格好のプロヒーロー、ミッドナイト先生がムチを振りながら選手宣誓を宣言する。

 ……あと五分くらい、このローアングルで先生を見ていてもいいですか?あとムチのオプションって幾らですか?

 え?お前はさっさと、スピーチしに行けって?

 

 急にやる気が無くなってきた……焚きつけるとか言ったけど、今からやっぱなしってできない?こんなエッチな女性がいたら、争いとかどうでもいいでしょ?

 

「18禁なのに高校にいてもいいものか?」

 

「いい」

 

「写真撮ってもいいですか?」

 

「静かにしなさい!! 選手代表!!」

 

「1-A張理有(ばりあ)ハル」

 

 ミッドナイト先生に興奮した僕たち(僕と峰田くん)を黙らせるように、ムチを鳴らすと僕の名前を呼ぶ。

 ……危なかった、今ので僕のハルくんが起きるところだった。

 今からかっこよく決める奴が、前のめりで登壇とか雄英の品位を問われるよね。

 

「やっぱハルか」

 

「入試1位だもんな」

 

()()()()()()()()な」

 

 僕の後ろから、普通科の生徒が言葉で刺してくる。

 ちょうどいいし、軽いジャブでも打っておこうか。

 

「君たちが落ちた入試ね」

 

「は?」

 

「ハルゥ!?どうしたんだよお前ぇ!?」

 

 峰田くんが頭を抱えてるけど、僕は知らない。

 

 マイクの前に立つと一気に緊張してきた。

 今からでもネタに振り切ってやろうかな……やめとこそっちの方がダサいわ。

 

「宣誓!僕たちはスポーツマンシップに則って正々堂々戦うことをここに誓います!」

 

「ありがとう張理有くん」

 

「ミッドナイト先生、もうちょっと喋っていいですか?」

 

「えぇ大丈夫よ」

 

「ありがとうございます」

 

 念の為にミッドナイト先生に許可を取ると、快くOKが貰えたので、やるとしますか。

 

「さてと……皆に一つ聞きたいんだけどさ?今どんな気持ちぃ?僕たちA組は、先生から持て囃されて、君たちを引き立て役に使ったけど……悔しくないのぉ?」

 

 わざとムカつく言い方で皆に語りかける。

 

「ふざけんな!」

 

「さっさと退場しろ!」

 

「このクソ野郎!」

 

 案の定ブーイングの嵐だけど、気にしない。こういうのは、少しでも躊躇したら出来なくなっちゃうから、鈍感なフリをする。

 

「だよね?悔しいよね?だったら……今、ここで僕たちを引きずり下ろせばいい!この体育祭は絶好の機会じゃないか!経営科もサポート科も普通科もB組も、ムカつくなら今日証明しろよ!!主役は俺たちだって!!」

 

「当然、僕たちも全力で君たちを潰しに行く!!」

 

「雄英全員かかってこい!!!」

 

 ブーイングと歓声が混ざり合った混沌が、僕に降り注がれる。

 心臓バクバクで張り裂けそうだけど、今この瞬間の心地良さに絶頂しそうになる。

 気合いで起立を防ぎながら列に戻る。

 当然、クラスメイトから批判は殺到したが、この体育祭に爪痕を残せたから満足だ。

 

「んんっ……さて、早速第1種目行きましょう!!!」

 

「雄英なんでも早速だよね」

 

「所謂予選よ!毎年ここで多くの者が涙ティアドリンクを飲むわ!!さて運命の第一種目!!今年は障害物競走!!」

 

「計11クラスでの総当たりレースよ!コースはこのスタジアムの外周約4キロ!わが校は自由さが売り文句!ウフフフ……コースさえ守れば()()()()()構わないわ!さて、全員位置につきまくりなさい!!」

 

 僕のスピーチの興奮が、冷める前に予選が始まる。

 

 

 

 

 

リューキュウ見ていてください!僕の活躍!

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