『次々行こうか!一回戦第三試合!』
切奈に背中を押されて、僕は入場口からスタジアムに向かう。
『選手宣誓でのビックマウスセンキュー!A組張理有ハル!!』
『対するは、スパーキングキリングボーイ!A組上鳴電気!!』
僕と向かい合うように立つ上鳴くんは、不安そうな顔をしている。
「さて……上鳴くんいい試合にしようね!」
「お前相手に、どこまで通用するかわかんねぇけど……やるぜ!」
『スタート!!』
「先手必勝!無差別放電130万Vォッ!!!」
スタートの合図と同時に、上鳴くんは電撃を放つ。
当然、自動でバリアが展開され防がれるが、上鳴くんは攻撃の手を止めず更に威力を上げてくる。
それに併せて僕も、任意でバリアを複数展開し対応する。
「……ねぇ上鳴くん……ちょっとストップしない?」
「はぁ?今試合中だぞ!?」
「だからだよ」
「……んだよ」
「放電もさ強いけどさ……この試合僕が勝つよ?」
「試合止めてまで喧嘩売ってんの!?」
「そうじゃないよ……放電じゃなくて帯電した状態で殴りかかってきなよ……その方が僕に勝てる可能性あるよ」
「……わけわかんねぇな……俺に塩送っていいのかよ」
「もちろん……そっちの方が勝った時の反応良さそうだし」
「絶対ぇ泣かす!」
「やれるもんならやってみな……でも僕が泣いたら、別の層からのファンが増えそうじゃない?」
「その自信すげぇよ」
僕の提案に乗った上鳴くんは、帯電した状態で僕に殴りかかってくる。
僕はそれを、得意のダンスとパルクールを応用したアクロバティックな動きで回避していく。
飛んで跳ねて回って、見る人を魅了していくように、僕はスタジアムで踊るように戦う。
「全っ然……当たんねぇ……」
「どうしたの?もう息切れかい?」
「お前……まさかこれも狙ってたのか?」
「よくわかったね!その通りさ!」
「うあぁ……なんで乗っちまったんだぁ俺ぇ……!!」
「ごめんね。でもなかなかいい動きだったよ」
「煽ってんのか!?」
「……どうかな?」
「もう怒った!手加減してやんねぇ!!」
《無差別放電200万V》
さっきよりも威力が上がった電撃が、スタジアムを包み込む。
残念……あのまま続けてたら、ラッキーパンチがあったかもなのに……バリアで全方向を防御した僕は、攻撃が終わった後の決めポーズを考える。
「……ウェ~イ」
「僕の勝ちだね」
「上鳴くん行動不能!張理有くん二回戦進出!!」
『圧倒的!あえて一度言おう……圧倒的!!張理有、上鳴の強力な攻撃を寄せ付けず圧勝し、次に駒をすすめた!!』
ミッドナイト先生の宣言により、僕の勝利が確定する。
試合が終わった僕は、B組の観戦席に向けて最大限のキメ顔を向ける。
物間だっけ?A組をよく思ってない人達からブーイングが飛ぶけど、切奈は笑ってくれたみたいだし、オールオッケーってやつだ。
「あ」
「お」
僕と上鳴くんの試合が終わり、次の試合まで時間があるからジュースでも飲もうかなって自販機を探してたら、心操くんとばったり会った。
「……じゃ」
「ちょっと待って!」
「……なんだよ……文句でも言いに来たのか?」
心操くんは、僕のことを騎馬戦で洗脳したことについて、文句があるのかって勘違いしているみたいだ。
僕はただ、話してみたかっただけだけど……そうだ!こういう時、最高の掴みがあるじゃないか!
「心操くん!どんな女の子が
「……は?」
「……」
「……」
「……」
スベったぁぁぁぁぁ!!!?
空気やっばぁ……まじでミスった!!
なにしてんだよ僕!!
これじゃただのヤバいやつじゃないか!!
「え、あ……あぁ……人並みに……大きい方がいい……かな?」
気ぃ使わせちゃった!!!?
「ごめんよ……変なこと言って……」
「いや……俺がアンタを洗脳したから……変な勘違いして悪かった」
「……」
「……」
「っふ」
「っは」
「「ッハハハ」」
なんとも言えないこの空気が面白くなって、二人して大笑いする。
「ふー……それでなんか用か?」
「ふふ……あ、そうだった!心操くん改めてさ君と話がしたかったんだ!」
「洗脳持ちの俺にか?」
「うん」
「また洗脳するかもって思わないのか?」
「思わないよ……それともするの?」
「いや……しないけど……」
「だったらいいじゃん!ほら次の試合まで時間あるからさ、さっきの好みについて聞かせてよ」
「さっきのは……違う……いや違わないけど……そういうあれじゃなくてさ」
「だったら“個性”とか、どうしてヒーローになりたいのとか聞かせてよ!」
「わ、わかったから、ちょっと離れてくれ近い」
「照れてるの?」
「俺にそっちの趣味はない!」
「ごめんね……からかってみただけ」
「なんで……」
「洗脳のお返しさ……これでチャラね」
「……お、おう」
僕は自販機で二人分のジュースを買うと、近くのベンチに心操くんの手を引いて向かった。
話してみると、心操くんがいい人ってのがよくわかった。
自分の“個性”が敵向きなことを気にしてたけど、僕がヒーロー向きだって言うと、嬉しそうに笑ってくれた。
「凄いよ……だって敵相手に無血開城も可能なんだからさ……ヒーローに向いてるよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ……ヒーロー向きなんて初めて言われた」
「確かに洗脳なんて聞くと、
「当たり前だろ」
「じゃあそれでいいじゃん!言いたい奴には言わせておけばいいよ。心操くんが気にすることじゃない」
「……そっか……そうだな」
「それよりさ、体育祭終わりに騎馬戦メンバーで、ご飯行こって話しててさ……心操くんとどう?」
「行っていいのか?」
「いいよ!尾白くんも庄田くんも、洗脳されたことなんてもう怒ってないし……それに友達でしょ?」
「……友達……」
「うん、洗脳されたとか気にしてないよ。あれは僕の油断したからだし、心操くんはその隙を上手く突いただけ……操られてたとはいえ、一緒に戦ったんだしさ……仲良くなりたいなって……ダメかな?」
「……はぁ……調子狂うな……洗脳した奴にそんなこと言われるなんて、考えたことなかったよ」
「来てくれる?」
「お前らがいいって言うなら……行くよ」
そう言って連絡先を交換した。
心操くんは、ヒーローになるために、僕たちの試合を見て糧にするらしく自分のクラスの観戦席に戻って行った。
僕も残ってたジュースを飲み干すと、A組の観戦席に戻るために歩き出す…………その前にトイレ行こ。
「心操、遅かったな……何してたんだ?」
「ちょっと友達と会ってた」
「普通科以外にもいたのか?」
「あぁ」
「今度、会わせてくれよ」
「機会があったらな」
というわけで、心操くんと接点を持たせるために、オリ主には騎馬戦で洗脳されてもらいました。
言い訳っぽくなってしまいますが、前回と今回が騎馬戦をスキップした理由になります。