そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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ハッハッハッ!決着つけようよ、焦凍ォ…!!!

 応援団による応援に、テンション上がってるハルだよ!

 え?この人達が誰かって?

 …………本当に誰?少なくとも、僕は呼んでないよ。

 

「あ、消えた」

 

 結局、謎の応援団については何も分からなかったけど、気を取り直して、試合に集中しよう!

 

「じゃあ改めて行くよ!轟くん!」

 

「来い!」

 

 氷山がスタジアムの半分を埋めつくしたことで、轟くんの攻撃の範囲が狭くなった。

 これなら避けることだってできる。

 僕はバリアを足場にして氷結攻撃の上を、パルクールで翔けていく。

 炎で氷を溶かせば、スタジアムの広さを元に戻すことができるのに、轟くんはそれをしなかった。

 

「いいのかい?溶かさなくて?さっきから動き悪いし、範囲狭いしで君が不利になってるよ!」

 

「こっちにも……色々あるんだよ!」

 

「また氷?ワンパターンじゃないかな!」

 

《バリアブルスマッシュ》

 

 バリアが割れて放たれたエネルギーは、轟くんの背後の氷を砕きながら、更にスタジアムの端に追い込んでいく。

 

「このままでいいんですかぁ?」

 

『おっとぉ!これは女殴ってる噂に説得力が出てきたぞぉ!!』

 

 ……今、いいところなんだから茶々いれないでよね。

 というかまだ言ってたんだ、僕が女の子殴ってるって……実際は殴られてる側なんだけどね!

 切奈やトガちゃんに噛まれた時なんか、あの人たちには僕しかいないの……みたいなDV受けた側のメンタルでいるもんね!

 

「本当に使わないの?負けるよ」

 

「あの時は使ったが……まだ駄目だ。左側()を使うには、清算しなきゃならねぇもんがある」

 

「あっそ……どうでもいいけどさぁ~それで誰が喜ぶのかな?」

 

「は?」

 

「どんな理由があろうが……ここに立っている以上、誰かの想いは背負ってるもんじゃない?……少なくとも僕は背負ってる」

 

「急に……何言って」

 

「切奈、尾白くん、庄田くん……他にも予選で落ちた人……色々背負ってここにいるよ」

 

「……」

 

「意外って思うでしょ?……変態でも真面目な時だってあるんだよ」

 

「……」

 

「まぁ君にも色々あるんだろうと思うけど……ぶっちゃけどうでもいいんだよ。下らない縛り設けて、それを破ったと思ったら次は清算?……しょーもな、親の顔が見てみたいよ……あ、ここにいるんだっけ?」

 

「お前ェ!!」

 

「やっと本気って感じ?遅漏かよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっちゃったぜ☆

 

 いやぁだってね……せっかく炎使うようになったのに、清算がどうとかグダグダ言うからさ、ちょっとイラついたんだね!

 まぁ轟くんにも色々あるんだろうけどさ、ここはそういうの持ち込んじゃダメな場じゃないかな?

 皆、夢のために頑張ってるのに、恵まれた力を使わず勝つなんて、他の人からしたらたまったもんじゃない。

 

 え?情緒不安定?前回のイケメンナンバーワンバトルはどうした?

 

 ただのギャグだよ。そこに大した理由なんてないよ。

 それに、情緒がおかしいのは自分でも分かってるから、いちいち指摘しなくて良いからね。

 

「さて今の気持ちをどうぞ」

 

「お前をぶん殴ってやりたい!」

 

「いいね!僕を満足できる一撃を期待しとくよ!」

 

 どうせ株なんて既に落ちてるんだ。

 SNSも炎上してるみたいだし、なら徹底的にクズを演じよう!

 それで誰かが笑ってくれるなら、喜んでドブに浸かろう。

 プライドなんて母さんの腹の中に置いてきた。でなきゃ切奈に土下座して、噛んで欲しいなんてお願いしてない。

 

「さぁさぁお立ち会い!これよりお見せいたしますは、クズとヒーローの一騎打ち!瞬き厳禁でございます!!」

 

《膨冷熱波》

 

《 《 《バリアブルスマッシュ》 》 》

 

 散々冷やされた空気が、炎によって膨張して爆風を引き起こす。

 これに勝つためには、僕も()()()()()を使うしかない。

《バリアブルスマッシュ》はバリア同士をぶつけて、圧縮した高出力エネルギーを解き放つ技だ。

 

 さてここで問題です。

 いつもは、一枚づつしかぶつけてませんが、複数枚同時に割ったらどうなるでしょう?

 

 答えは簡単さ。

 

全てを吹き飛ばす超パワーさ!

 


 

『どーなった!?2人は無事かぁ!?』

 

「……」

 

「……」

 

『主審ミッドナイト!勝負の行方は!?てか最近の子ヤベーイ!!』

 

 爆風と高出力エネルギーがぶつかり合い、スタジアムは半壊して、煙が僕らを隠す。

 

 ……痛ったいなぁ……。

 やっぱり、自分で自分を傷つけるとちっともアガらない。

 痛みがある程度想像できるからかな?

 だったら、噛みつきもわかるだろうって?

 

 ……やっぱり貴方達はワカってない、噛みつきという行為を……。

 

 噛みつきっていうのはね……その日の体調や気分、歯の状態、お互いの信頼関係で大きく変わるんだよ。

 互いを信頼しているからこそ、一生残るかもしれない傷をつけることができるんだ。

 だからこそ、とても神聖で尊く……甘美でいて官能的な行為なんだよ!

 

 そんな行為を素人に語られたくはないね。……あ、ご新規さんはいつでも募集してるから、新たな扉を開けたい人は、ぜひ試してみてね!

 

 さて、こんなに絶好調に話してるってことは、僕は無事とか思ってる?

 まぁ実際、余裕ではあるよ……左腕が壊れただけでまだ動けるしね!

 

「……どうやら僕の勝ちみたいだね」

 

「……」

 

「轟くん場外!張理有くん決勝進出!!」

 

「いえーい」

 

 さっきの一撃で轟くんは場外に飛ばされたみたいだ。

 さっきみたいに、氷で背後を守っておけばよかったのに……僕はそうした、というかオートバリアが後ろからコケそうになった僕を守ったんだよね。

 

 決勝に進んだから、テンションが上がって観客席にお辞儀したけど、何もされなかったな……てっきりブーイングとか空き缶とか投げられるかと思ったよ。

 まぁカメラ回ってるし、スタジアムを半壊させるような技打てるやつに、そんなことはしないか……残念。

 

 とにかく、試合は僕の勝ちだ。

 リカバリーガール先生のとこ行こ、腕が痛くてしょうがないや。

 


 

「チユ〜〜〜」

 

「ありがとうございます、リカバリーガール先生!」

 

「アンタも大概無茶するね」

 

「それほどでもないですよ」

 

「……褒めてないよ」

 

「あ、ハイ。すいません」

 

「あんまり無茶な戦い方するなら、()()()()()()はもう治さないからね」

 

「……緑谷くんにも同じこと言ったんですか?」

 

「患者のあれこれは、守秘義務で守られてるから答えられないよ」

 

「はーい、二度と聞きませーん」

 

「治ったなら早く戻りな、ここは元気な子のいる場所じゃないからね」

 

「わかりました」

 

 リカバリーガール先生の注意を受けて、これから自傷はほどほどにすることを肝に銘じて、保健所を出ようとすると、先生から呼び止められた。

 

「そういえば、2人とはどうなんだい?」

 

「……僕の知らないところで、仲良くなってたみたいで……あんまり大きな声では言えないんですけど、付き合えそうです」

 

「良かったじゃないか……付き合えそう?」

 

「えぇ……まだちゃんとした告白できてなくて……」

 

「しっかりしな男の子だろ!」

 

「はい……だから体育祭が終わったらちゃんと伝えます」

 

「考えてたんだね……」

 

「2人とも大切な人だから……勢いで付き合ってる感じになっちゃいましたけど……それじゃダメだと思ったんで……」

 

「その想いはちゃんと伝わるよ……あたしが保証するよ」

 

「ありがとうございます!」

 

 リカバリーガール先生にお礼を伝えて、僕は観客席に戻った。

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい!決勝でも()()()()使えや」

 

 なんでこうなんのかな?

 いい感じで次回に行きそうな流れだったじゃん!

 なんで僕は爆豪くんと対面してんの!?

 

 保健所を出たあと、観客席で爆豪くん達の試合を見て、そろそろ決勝戦も始まりそうだったから、控え室で準備してたら、急に扉が開いてビックリしたよ。

 

 ちなみに、常闇くんは負けて爆豪くんが決勝に進出したよ。

 

「さっきのって何かな?」

 

「トボけんなよ……半分野郎の最後の攻撃に使ったやつだ」

 

 なんで知ってんの……え、怖。

 あの一瞬で僕が、複数バリアを展開したの見えてたの……キモ(褒め言葉)。

 

「どうしよっかなぁ……なんてふざけてるところじゃないね」

 

「わかってんならそれでいい……全力のお前に勝たねェと意味がねェんだ」

 

「……頑張って使わせてね」

 

「……コロス」

 

 最後の最後に怖いこと言って、爆豪くん行っちゃったよ……。

 まぁでも、爆豪くんなら期待してもいいかな?

 僕を気持ちよくしてみせてよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゾワッ

 

「ッ!?……変態野郎か……」

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