最近寒いので、風邪を引かないよう気をつけてください。
「まぁ災難だったけど……みんな無事でよかったよ!」
ヒーロー殺しの一件から一夜明け、僕らは保須市の病院にいた。
緑谷くん、飯田くん、轟くんは僕が来る前にヒーロー殺しから攻撃を受けていたから、まだ入院するみたい。
僕は特にダメージは受けてないけど、念の為ということで検査入院していた。
「……」
「……」
「……」
「……」
なんかシーンてしてるね。
それもそうだろう、ヒーロー殺しの最後の言葉を間近で見聞きしたんだから……元気じゃなくなるのもわかる。
「……えっと暇だし、僕の話でもする?」
「ハルのって……敵の血がどうとかってやつか……いいのか?」
「いいよ。別にそこまで大した話じゃないし……みんなと知り合って、大分打ち解けてきたと思うから、話せるんだ」
「ハルくん……」
「ハル……」
「ハルくん……」
「コーラとかポテチはなくてごめんね…………皆はさ、張間歐児って知ってる?」
「……たしか……稀代の盗人って呼ばれてる……」
「そう……それが僕のご先祖様だよ」
「ッ!?」
「……だよね……そりゃ驚くよね……初めて知った時は僕も驚いたよ。だって盗賊王だよ?……ビックネームにも程があるよね」
「でも、張間歐児は義賊だって……」
「……理由はどうあれ敵は敵だよ……それに、ご先祖様のことは、そこまで気にしてないから大丈夫!」
緑谷くんは優しいね、僕が傷つかないようにフォローしてくれる。でも……そういうのは今はいいんだ。
「問題はここからさ……正直な話、張間歐児よりその子孫の方がキツい……母さんの実家は、張間歐児の子孫であることを、“正義の血が流れてる”なんて言って誇りにしていたんだ……それが嫌だから母さんは出ていった。実家の話をするといつも嫌な顔をしていたよ……詳しく聞いてないけど……多分、洗脳に近い教育だったんじゃないかな?」
「……」
「……」
「……」
「叔父さん……母さんの弟もね……同じだった。張間歐児がいかに凄いのか、マジックと一緒に教えてくれたよ……あの人が全国指名手配犯だって知った時はさすがに堪えたな……」
「そんな……」
「……Mr.コンプレス……素性不明の怪盗……母さんが誰かと夜中に電話してたのを聞いてさ…………自分で調べて絶句したよ」
「…………あの人はそんな事しないと思ってた……思いたかった!……でも、叔父さんが姿を見せなくなった時期とコンプレスの活動時期が一致する……事件現場から見つかった“個性”を使用したと思われる写真……あの空間が丸ごと無くなった跡は……叔父さんが“個性”を使った跡に似ていたんだ」
「……母さんには言ってないけど…………一度だけ実家に行ったことがある。物凄く歓迎されたよ……僕は張間歐児を継ぐ素質があるって……なんでも教えてくれたよ……叔父さんがコンプレスかどうかも……それで、あぁ僕の体にはどう足掻いても敵の血が流れてるんだなって思ったよ」
「ハル……」
「……気にしないでって言われても無理だよね……だから見といてよ……僕がちゃんとヒーローになるところ……血とか家とか関係ないって、証明してみせる!」
3人は精一杯明るい顔を作ってくれてる。……自分から言ったけど……こうなるから隠してたんだよね。
「“個性”がヒーロー向きだった、足下を照らしたい、証明したい……理由なんて沢山あるし、ぶれぶれって思われるかもしれない…………でも結局は、なるかならないかだと思うんだ……3人は応援してくれる?」
「もちろんだ!」
「当たり前だよ!」
「あぁ……応援する!」
僕は友人に恵まれたみたいだね。
……これは言ってないけど、張間歐児を継ぐって言われた時、妙に納得したんだよね……生まれつき反射神経や動体視力良いこと、手先が器用だったこと……相手の意識の波長を、無意識に読み取れること…………その事実が、僕は敵だと教えてくるようで嫌だった。
だから否定する。
道化を演じて、醜くヒーローにしがみつく様を笑って歩こう。
僕がヒーローになった時、その道中が少しでも楽しかったと言えるように……。
僕の話が終わると、保須警察署署長が僕たちのもとを訪れた。
理由は単純で、僕以外の3人が許可もなく“個性”を使って、ヒーロー殺しと戦ったことだ。
結果、現場にいたエンデヴァーを功労者にすることで、3人はお咎めなしになった。
その後、僕は退院して職場体験に戻った。
色々あったから終わりかと思ったけど、まだ三日も残ってるんだよね!
というわけで、ダイジェストで三日間の活動を報告するね!
“解放の園”三人目の登場、リューキュウと密室監禁、SNS炎上、犀原襲来再び、続Y談事変、波動先輩と添い寝、再びSNS炎上……等など挙げればキリがないほど濃かった。
定期的にSNSが炎上して、掲示板で僕のアンチが、勢力を増していくのを見て震えたよね!
ついでに、スマホの通知が止まらなくて震えたよね!
誰からの連絡かなんてすぐに分かる。
あぁ……帰りたくないなぁ……。
「……この一週間、大変だったとは思うけどお疲れ様」
「えぇ……本当に……でも、いい経験になりましたよ!」
「ふふ……それなら良かったわ……」
「ん?」
「あなたが仮免許を取得したら……ねじれみたいに、ウチにインターンに来てくれない?」
「い、いいんですか!?」
「えぇもちろんよ。私も楽しかったし……また一緒に働きたいと思ったからね…………それに、その……傍にいて欲しいって……」
「ごめんなさい、最後何が言いましたか?」
「ん!?な、なんでもないわ!?ゔうん……それじゃ改めてお疲れ様、学校も大変だと思うけど頑張ってね!」
「はい!一週間お世話になりました!貴重な経験をありがとうございます!!」
こうして僕の職場体験は終了した。
え?ダイジェストの詳細を教えろ?……いつか機会があったらね……正直な話、全部書こうとするとあと5、6話くらい職場体験編延びるよ?
それに殆どが“解放の園”関係だから、時が来れば明かされるよ……多分きっとメイビー。
じゃあ、文字数もいい感じだし、ここらで終わろうかな?
職場体験編が終わるし、次回は幕間かな?
まぁいいや、それじゃあまた次回お会いしましょう!またね!
「何か言い残すことある?」
「……」
ですよね。
知ってました。
このまま次回にいけば、有耶無耶にできると思ってました。ろくでなしでごめんなさい。
なんだろう、腕組んで僕を見下ろす切奈の後ろに鬼がいる。般若ってそういうことだったりする?
「……」
「黙ってないで何か言ったら?多分、それが遺言だと思うけど」
「ハルくん……」
……駄目だ、この状況なのに、屋根ゴミ構文が頭を過ぎってしまう。本当に駄目だ。
「えっとぉ……リューキュウはいい匂いでした……」*1
なんでこんなこと言っちゃうかな!?
なぜ危機的状況を更に悪化されるのかな!?
馬鹿か馬鹿なのか!?少しは誤魔化せよ!いや、それも駄目だけど!!
この状況で一番ダメなことを口走った!多分、犀原のせいだ!
土下座か……土下座しかないのか!
「……ハル」
「は、はい」
「……あんたのその浮気性なところ……なんとかした方がいいよね?」
「……」
今更じゃない?開き直るつもりはないけど、2人と付き合ってる時点で今更じゃない?
「何か言いたそうだね?」
「ヴェッ!マリモ!」
「まぁいいや……というわけでこういうの用意しました」
切奈が笑って紙袋から手錠と首輪を取り出す、目が笑ってないのが怖い……これから何をされるんだろうか……。
「今からハルを徹底的に●します」
「泣いても笑っても止めません、ぐちゃぐちゃに●します」
「……」
「大丈夫です。全て終わる頃には、私たちはもっと仲良くなれますから」
「……」
「あのぉ……別の方法とかって?」
「あると思ってる?」
「はい、すみません」
「一応、これでも優しい方だよ?世の中には同じことして、殺される人だっているんだから……私たちは別れるなんて言ってないし、殺しもしない」
「……ハルくんがどうであれ、私たちは別れるつもりはありませんから」
「はい、お二人の優しさ大変ありがたいです」
多分、僕は死ぬと思う。
でも恋人に抱かれて死ぬなら、むしろいいのでは?
「……それじゃ、行くよ」
「スー……お願いします」
覚悟は決めた!
皆!これが僕だ!恋人の尻に敷かれる僕だ!
羨ましいだろ!変わってやんないからな!
……長い長い夜が始まる。