そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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個性把握テスト?あいつはいいやつだったよ

「「「「「個性把握……テストォ!?」」」」」

 

 グラウンドに集合した僕たちに相澤先生は、テストをすると発表した。

 いきなりのことで皆が驚いている中、僕は重要なことに気づく。

 

「先生!入学式はどうするんですか?せっかく考えた新入生代表スピーチは無駄になるんですか?」

 

「ヒーローになるならそんな悠長な行事出る時間ないよ」

 

「マジかよ」

 

【悲報】ワイ首席合格者、用意した新入生代表スピーチが無駄になったんやがどうすればいい

 

1:名無しの変態

 どうしたらええんや

 

2:名無しの変態

 草

 

3:名無しの変態

 草

 

4:名無しの変態

 草

 

5:名無しの変態

 草

 

 

 失礼、ショックのあまり脳内でスレ立てをしてしまった。

 まさかの展開に気分ガン萎え、帰ったら切奈に癒して貰いたいな。

 具体的には僕の上に乗って首を噛んで欲しい。多分、無理だけど。

 ……ドア・イン・ザ・フェイスなんて交渉術があるし、一緒にお風呂に入ろって提案して、断られたら噛んで貰えないかな……無理かな。

 

「首席の張理有……いや爆豪、中学のテストでソフトボール投げ何mだった」

 

「コイツが……ッ!……67m」

 

「じゃあ“個性”使って投げろ、円から出なきゃ何してもいい」

 

「思いっきりな」

 

「んじゃまぁ」

 

「死ねぇ!!!」

 

 僕のことを親の仇みたいに睨みつけてきた爆豪くんは、相澤先生からボールを受け取ると、掌を爆発させながら思いっきり投げた。

 ド派手な“個性”っていいよね。僕の“個性”は対人じゃめっぽう強いんだけど、如何せん絵面が地味になるんだよね。

 まぁその分、この顔で目立ちまくるんだけどね。切奈から、黙ってたら完璧なんて言われるくらいには、見た目は良いし、プロになってバンバン活躍すれば……僕のことを噛んでくれるファンもできると思うんだよね。

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」

 

「なんだこれ面白そう!」

 

「705mってすげぇ」

 

「“個性”思いっきり使えるんだ!!さすがヒーロー科!!」

 

「……面白そう…………か」

 

 あ、まずい。

 相澤先生の雰囲気が変わった。

 

「ヒーローになるための3年間をそんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し除籍処分としよう」

 

 はい終了。

 イカれてんでしょ、初日から生徒を除籍にするとか。僕の“個性”で体力テストなんて無理に決まってる。

 切奈、ごめんね……僕はここまでみたいだ。

 

 

 

 

 

 お巫山戯モード終了。

 まぁ……やる前から諦めるのもダサいし頑張りますか。

 ここからの僕はちょっとマジだ。

 


 

「……ってことがあったんだよね」

 

「大変だったね」

 

 放課後、僕は切奈と家に帰っていた。

 え?個性把握テストはどうしたかって?ちゃんと真面目にやったよ。

 立ち幅跳びは僕の独壇場だったよ。ランウェイを歩くように、バリアを足裏に展開して、記録∞を叩き出したよ。

 皆の驚いた顔は傑作だった。自己肯定感爆上がりだよね!

 

 というかそんなことはどうでもいいんだよ!

 大事なのは今からなんだ!

 個性把握テストの時に考えてた、ドア・イン・ザ・フェイスを試してみよう!

 除籍がどうこうよりもよっぽど大事なことだよ!

 

「でさ、初日からテストやらされて、スピーチもできなかったから、切奈に癒して欲しいなぁ」

 

「……何して欲しいの?」

 

「一緒にお風呂に入ろう!」

 

「いいよ」

 

「やっぱり無理だよね!じゃあ肩を噛ん……今なんて?」

 

「だからいいよって」

 

「肩噛むの?」

 

「お風呂に入るの」

 

「マジで?」

 

「マジで」

 

「今からでも噛む方にしない?」

 

「ハルが言ったんでしょ、一緒にお風呂に入りたいって」

 

 おかしいな、ルートが分岐しないぞ。フラグ立てし忘れたかな……。

 今からでも冗談ですって言えば別ルートに行けたりしない?

 

「やっぱりッ「冗談とか言ったら怒るよ。私だって覚悟決めてOKしたんだし」……家に帰ろうか」

 

 無理でした。

 軌道修正しようと思ったけど、先に手を打たれた。僕にはどうすることもできません。

 僕たちは、雄英から二駅ほど離れた学生用アパートに、寄り道することなく帰った。

 

「さてそろそろお風呂入ろっか」

 

 家に帰った後、普通に着替えて夕飯を食べてゲームしたり、テレビを見たりしていたら、切奈がついにお風呂を切り出した。

 誤解がないように先に言っておくけど、僕たちは同棲しているわけじゃない。

 僕が借りているこの部屋の隣に、切奈が住んでいるんだ。まぁ半同棲と言われれば否定できないんだけどね。

 

「準備してくるから、先に入ってて」

 

「……」

 

 何とか逃げ道はないかな。

 自分の浅はかな考えで、追い込まれてしまったけど、ここから入れる保険があるはずさ。

 

「因みに逃げようとしたら、ギザ歯を普通の歯にするから」

 

「今すぐ入らせていただきます!」

 

 ごめん、僕は無力だ。

 すぐさま脱衣場で服を脱ぎ、全裸になる。

 

 ……改めて見るとイイ体してるよね。脱衣場の鏡に映る自分の体を見てそうも思う。

 細マッチョって言うのかな、細身だけどしっかり筋肉が付いている女子ウケの良さそうな体だ。

 

「入るよ」

 

「っ!?OK」

 

 調子に乗って鏡の前でポージングをしていたら、切奈の準備が終わったようで扉を開けようとする。

 僕は急いでタオルでアソコを隠して浴室に入る。

 

「先に頭でも洗っといてよ。背中洗ってあげる」

 

 そういいながら、服を脱いでいく切奈。

 衣擦れの音が耳入り、シャワーの音でかき消すついでに、冷水で頭を冷やす。

 おかしい……明らかに4話でやる内容じゃない。いくら()()()でなかなかはっちゃけられないからって、僕に押し付けるのはやめていただきたい。

 

「さてと入るね」

 

「ッ!?」

 

「じゃあ背中洗うからシャワー止めてね」

 

 切奈が僕の後ろにいる。

 しかも全裸!

 童貞の僕には刺激が強い……今日が僕の命日になるかもしれない。

 悶々としながらも、切奈の言うことを聞いてシャワーを止めるために手を伸ばした。

 その瞬間だった。

 

「は?」

 

 いきなり右手首を掴まれて、恐ろしいほど冷えきった声で圧をかけられる。

 

「なんで手首に噛み跡があんの?」

 

 昔、公園で出会ったあの子がつけた、噛み跡を隠していたコンシーラが落ちたみたい。

 そういえば切奈にあの子のことを話してなかったかぁ……なんて思っていたら、掴む力が強くなった。

 

「なんで黙ってんの?いつも私に噛んで欲しいとか言ってるくせに、()()()()()()させてる子が他にいたってこと?ありえないんだけど

 

 目を見開いて、僕を見つめる切奈は怖かった。

 いつもみたいに、ふざける余裕なんて全くない。

 

 

 

 

 

 ここから入れる保険ってありますか?

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