そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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穴があったら覗くよね?

「久々の授業で汗かいちゃった」

 

「俺機動力課題だわ……」

 

「戦闘力だけーってのも問題だよなあ」

 

「情報収集で補うしかあるまい」

 

「それでも後手に回っちまうけどな。お前とか瀬呂とか羨ましいわ……つーかハルなんだよあの動き!お前も機動力あるんだな!」

 

「パルクールね。僕は今日みたいなところだといいけど……普通に走ると、飯田くんや爆豪くんとかに、遅れをとるんだよね」

 

「それでも、機動力補えるもんがあると違ぇだろ?」

 

「まぁそれはそう」

 

 今日の授業で、浮き彫りになった機動力について、制服に着替えながら話していると、峰田くんが興奮した様子で、緑谷くんを呼んでいる。

 

「……!おい緑谷!やべえ事が発覚した!!こっちゃ来い!」

 

「ん?」

 

 僕も気になって峰田くんの方を向くと、更衣室の壁に貼られたポスターが少し剥がれていて、()()が見え隠れする。

 

「見ろよこの穴!ショーシャ〇ク!!恐らく諸先輩方が頑張ったんだろう!!」

 

「隣はそうさ!わかるだろう!?女子更衣室!!」

 

 そう、覗き穴!

 その言葉は、高校生男子なら振り向かずにはいられない魅惑の響き!

 

 この壁の向こうには女子がいる……そしてその花園を覗き見ることができる穴がある。

 ならば、僕らがすることはただ一つだ。

 

「峰田くんやめたまえ!!ノゾキは立派なハンザイ行為だ!!」

 

「オイラのリトル峰田はもう立派なバンザイ行為なんだよォォォ!!」

 

 飯田くんが止めに入るが、峰田くんは止まらない……だからこそ僕が動かないと。

 

「峰田くん」

 

「あ?お前も止めに来たのかよ!彼女持ちがこの穴を覗く権利なんてねぇぞ!!」

 

「それはダメだよ」

 

 峰田くんの肩に手を置き、やめるよう注意する……と同時にポケットから紙を取り出し、書いてある文字を読ませる。

 

 

この会話は耳郎さんに聞かれている

 

 

「ッ!?」

 

 峰田くんは、目の前の穴に気を取られて忘れていただろう事実に驚愕する。

 いくら更衣室の壁が厚くても、穴を開けることができるんだ、大きな声を出せば怪しまれ、索敵が得意な耳郎さんの“個性”で、僕らが何をするのかバレてしまう。

 

「わかったよね」*1

 

「あぁ」*2

 

「……なぁ緑谷」

 

「なんだい切島くん?」

 

「なんかあの2人……ズレてるのな?」

 

「多分……」

 

「じゃあ僕は相澤先生を呼んでくるから!皆は近づかないようにね!」*3

 

「オイラが見張っとく!頼むぜ!」*4

 

「「……ズレてるなぁ」」

 

 僕は更衣室を出て相澤先生を呼びに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだこれ?」

 

「……峰田くん!?何があったの!?」

 

 数分後、相澤先生を連れて戻ってきたら、峰田くんが床に沈んでいた。

 

 ……まさか、いや……なにも言わないでおこう。彼の名誉のために。

 

 ちなみに、更衣室の穴に関してはすぐに塞がれるみたいだ。

 相澤先生は、下手に騒がないよう僕らに注意して職員室に戻って行った。

 

 そういえば……感想で僕のこと覗くのか?みたいなこと言ってた人!

 流石にそんな事しないからね!彼女がいるんだからするわけないじゃん!失礼にも程があるよ……全く反省してよね!

 

 ……え?その言い分だと、彼女がいなかったら覗いたのかって?

 

 ……そんなことするわけないじゃん……ホントだよ。

 


 

「今日もお泊まりしていいですか?」

 

「トガちゃんなら大歓迎だよ!切奈もいいよね?」

 

「うん。トガ先輩ならいつでも来ていいよ」

 

「あのそこの御三方……少々よろしいですか?」

 

 放課後、僕と切奈とトガちゃんの3人で帰っていると、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、スーツを着たサラリーマン風の男性がいた。

 

「えっと?あなたは?」

 

「私は今、街ゆく恋人たちに声をかけて、ちょっとしたチャレンジに挑戦して貰える方たちを探しているんです」

 

「チャレンジ?」

 

「はい!あそこのプレハブ小屋で質問に答えて貰うだけなんですが……全然、挑戦してくる方がいなくて」

 

 怪しいもんね。

 そう言いかけたのをグッとこらえて、どうやって断ろうか感じてる。

 

「いいですね!やってみましょう!」

 

「え?トガ先輩!?」

 

「トガちゃん!?」

 

 僕と切奈は断ろうとしてたけど、トガちゃんは乗り気だ……カァイイね。

 

 こうなると、もう止まらない……というか止めたくない、トガちゃんには笑っていて欲しいしね。

 

「わかりました、チャレンジ受けます」

 

「ホントですか!?ありがとうございます!質問に最後までお答えしていただければ、豪華賞品もお渡しいたしますので頑張ってください!」

 

 なんか怪しいけど、悪い人じゃなさそうだし……豪華賞品も気になる。

 

 僕らは男性にプレハブ小屋に案内され、中に入っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナハッ!……ナハッナハッ!」

 

 3人が小屋に入ったのを確認して、ずっと堪えていた笑いが吹き出る。

 

『上手くいきましたねぇ……それでは始めましょうか』

 

『私のステージ(Y談)を!!』

 

 私は器用にステッキを回し、これから始まるエンターテインメントに胸を踊らせるのです。

 

皆様も是非、ご覧になってください。

 

 そこにいるのはわかっています。邪魔しない……できないことも。

 

 

 

『それではショーの始まりです!』

*1
(A組の女子たち……強い子だけどこの事実を知ったらショックを受けるよね……大事にしないように気を付けないと)

*2
(たしかに盲点だった、耳郎の“個性”で丸聞こえだったよな。お前……そこまで……紳士を装って隙を見て覗く作戦だな!)

*3
(それに、峰田くんクラスの実力者なら、わざわざ覗かなくても、想像だけで女子更衣室の様子が再現できるもんね)

*4
(よし!ナイスアシストだぜハル!これでごく自然に穴の前を陣取れた!この先の景色、後でお前にも教えてやるよ!)

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