というわけで始まりました!実技試験!
僕らは、バスに乗って試験会場に向かってます。
今更なんだけど、僕って乗り物苦手なんだよね!特にバスはダメだね、毎回匂いで酔っちゃうんだ!
「ねぇ峰田くん。真面目な話なんだけど、僕たちの試験って難易度高くない?」
「は?何言って?」
「多分だけどさ、この試験って弱点とか相性とかでペアと対戦相手決められてるよね」
「え?」
「だって、口田くんと耳郎さんって2人とも音に関係してるでしょ、それに対戦相手の、プレゼント・マイク先生も音関係だし。轟くんと八百万さんは、僕が見たところだと“個性”頼りの戦い方してるよね、だから相澤先生が相手なんだと思う」
「確かに!?」
「そう考えると、僕たちの弱点を突く相手として選ばれた、ミッドナイト先生って強敵なんじゃ」
「た、確かに!?」
酔わないように、ほかの事考えてたら、この試験の組み合わせに何かしらの法則が見えてきちゃったんだよね。
峰田くんは、高い壁が立ち塞がると弱音を吐いて諦めてしまうタイプで、僕は物理無効だけど心操くんの“洗脳”みたいな特殊技は食らう。
僕らの弱点を満たせるのが、目の前に座るミッドナイト先生だ。
先生の“個性”は“眠り香”、一嗅ぎすれば眠りに落ちる香りを放つことができる“個性”だ。
つまり、オートバリアは先生の“個性”に反応しない。
「……ミッドナイト先生は……あ、耳塞いでくれてる」
実技試験をどうするか、峰田くんと相談しようとすると、前の席にミッドナイト先生がいることを思い出す。
視線を向けると、有難いことに耳を塞いでくれている。
「……峰田くん、作戦はあるんだけどいいかな?」
「ハル……」
僕らはスマホのメッセージアプリを使って、会場に着くまで実技試験に向けて話し合った。
……ごめん酔った。
「さて、ここがあなたたちの試験会場よ!……大丈夫?」
「すんません……もうちょいしたら、気分も良くなると思いますので……お構いなく」
バス酔いしたハルくんだよ……仕方ないとはいえ、バスの中でスマホ触るんじゃなかった。
「張理有くんもこう言ってるし、試験の説明をするわね」
「はい」
「はいぃ……」
「制限時間は30分!あなたたちは『このハンドカフスを私にかける』か『どちらか一人がこの出口から脱出する』それで試験はクリアよ!」
「……なるほど、より実践的ってのはそういう事ですか……失礼ですけど、オールマイトが相手とか逃げ一択になりません?」
「そういうと思って、私たちは試験中この重りを装着するわ。体重の半分の重さだから、かなり機動力を削がれるわ」
「それじゃあ会場に入りましょ!」
説明を終えると、僕たちは会場の中央で試験開始の合図を待つ。
僕は酔いがマシになり、峰田くんはビビって震えてた。
「……峰田くん、バイブの真似?」
「そんなわけねぇだろ!」
「ごめん、でも緊張は解けたんじゃない?」
「だとしてもだろ……作戦、上手くいくかな」
「峰田くん次第だよ……僕は僕の仕事を全うする、だから任せたよ」
「お、おう!任された!」
『皆、位置についたね。それじゃあ今から雄英高1年、期末試験を始めるよ!』
『レディーゴォ!!!』
「……始まったね、さっきメッセージでやり取りしたけど、おさらいね」
「おう」
「ミッドナイト先生の説明で僕たちの勝利条件は提示されたけど、はっきり言って先生の独壇場だ。脱出口に行くのも、捕縛するのも先生に近づく必要がある。……“眠り香”の射程範囲だ」
「おう」
「僕の《バリアブルスマッシュ》で吹き飛ばせるかもしれないけど、再放出までの速さと、どのくらいの量が生成できるのか……先生の“個性”がどの程度なのか分からない以上、無闇にやたらに接近できない。吹き飛ばした瞬間に香りを生成されたら、僕は夢の中だ」
「……おう」
「……さ、頑張ろう……先生が来るよ」
脱出口の方から、薄紫色の煙がこちらに向かって近づいてくる。
「まずは手筈通り行くよ」
「任せろ」
僕はバリアが展開できる最大範囲、半径2.5Mのドーム状のバリアを張る。
エネルギーを圧縮して展開する高密度空間なら、眠り香を防げると思う。
さて、勘違いする人が出ないようにもう一回言っとくね。
オートバリアは僕がダメージを受けるかどうかで、自動で展開するようになってる。
眠り香は、確かに攻撃だけど食らっても眠るだけだ。僕がダメージを負うことはない。
だから、意識外から眠り香を食らうと、咄嗟に防御ができなくてゲームオーバーだ。
ただし、あくまで睡眠ガスのようなものを放出しているわけだから、バリアで遮ることはできる……はずだ。
実際、炎のように実態のないものもバリアで防げていたから、大丈夫だと思う。
「バリアに閉じこもっちゃって……ウブなのね」
眠り香とともに、僕たちに近づくミッドナイト先生。
「……峰田くん覚悟はいい?」
「……おう、お前が
僕は腰のケースから、鎮痛剤が入った小瓶を取り出す。
「カッコイイじゃん」
中身だけをケースに戻し、小瓶を口に含む。
指でカウントして、作戦開始の合図をする。
《バリアブルスマッシュ・改》
核*1を捉えたことで、威力が上昇した僕のスマッシュは、エネルギーとともに眠り香を吹き飛ばしていく。
「やるわね……でもプロならそれくらい想定しているわ!」
眠り香を吹き飛ばしても余裕のミッドナイト先生。先生はムチを取り出し、攻撃をしかけてくる。
眠り香だけが武器ではないことは知ってたけど、やっぱり強い。
ムチの先端は音速を超えると言われる、流石の僕も目で追うのがやっとでギリギリで回避している状態だ。
「……」
「黙りなんてつまらないわ……いい声で鳴きなさい!」
ムチを避け続けていると、眠り香がまた放出される。
……再放出までだいぶ早いな……。
《バリアブルスマッシュ》
……避けることに意識が持っていかれて核を外した。
それでも衝撃は発生し、眠り香を吹き飛ばす。
「ッ!?」
頬を掠った……。
痛いね……でも、まだ素面でいられる。
「ほらほら……どうしたの?私を捕まえるんでしょ?全然近づけてないじゃない!」
速度が更に上がったムチと再放出される眠り香に、防戦一方になる。
「峰田くん!逃げろ!」
僕は後ろにいる峰田くんに向かって叫ぶ。
軽めのスマッシュで後方に飛ばして、ミッドナイト先生に向き直る。
「はい、残念」
峰田くんを逃がすために、背後を晒したのがミスだった。
僕は眠り香に包まれて、睡魔に飲み込まれる。
……ダメだ……意識が…………もたな、い。
「おやすみなさい」
ミッドナイト先生の優しい声が聞こえた気がした。
ガリッ
なんてね、ここからが本番だ。
口内に走る激痛を我慢して、ミッドナイト先生を欺けたみたいだ。
流石僕だよね!演技力には自信があるんだ!
鉄の味が口に広がるけど、異物とともに吐き出す。
「い゛っ゙だぁ……」
眠ってないから、音は聞こえていたけど周りを確認して、やっと作戦がちゃんと上手くいった思える。
……峰田くんは上手く誘導できたみたいだ。
口内の痛みを我慢して、峰田くんが闇雲に攻撃したと思わせて、道標として残したモギモギを頼りに2人を追う。
「2人で絶対合格するんだ」
第2ラウンドは始まったばかりだ。