そのキバで僕を噛んでくれ!   作:松田ゐふ

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“解放の園”

皆様、ご機嫌よう。

 

“解放の園”の最新情報をお届けします。

 

Y談紳士のMr.Y()()()()()やって来ました。

 

 あれは、平和な日常がまだそこにあった頃……。

 唐突に()()()()が誕生したことで、私の人生は大きく変わることになりました。

 

■■■……お前はどっち派なんだ?」

 

 目を瞑れば今でも思い出す、友人との他愛もない会話。

 

「何度も言っているでしょう……私は尻派だと

 

「……残念だよ……この手で友人を葬らないといけないなんてな!」

 

「上等です!かかってきなさい!」

 

 

 

「はぁ……はぁ……やるじゃねぇか」

 

「あなたも……強いですね」

 

「ふっ……ふはは」

 

「なはッ……なはは」

 

 胸か尻かで殴り合いをして、友情を育んだくだらない時間。

 

 

 

 それを“超常”は全て奪ったのです。

 

 

 

「……東区の方に“異能”が出たらしいぞ……」

 

「……」

 

「おい!■■■聞いてるのか!」

 

「えぇ聞いていますとも……また駆除するのでしょう?」

 

「あぁ……あんな化け物共、生かしておく価値はない」

 

「……そうですか」

 

 当時、学生だった私は青春を失いました。

 ペンは銃に換わり、汗臭い教室から血なまぐさい戦場に移りました。

 

 地獄です。

 

 どこかしこで争いが起き、戦闘に駆り出される日々。

 私の周りにいる人々から笑顔は消え、悲しみや怒りに包まれていました。

 

 そんなある日、私は異能持ちとの戦闘で負傷し、命の危機に瀕してしまいました。

 家族や友人はとうの昔に亡くし、たった一人でこの“超常”を生きてきたというのに、私の最期はこうも呆気ないのかと嘆きました。

 

「……生きたい……私は生きたいんだ!」

 

 そんな腹の底からの本音が、眠っていた力を呼び覚ましたのでしょう。

 今で言う個性因子を、私は持っていたようで……それが生命の危機に反応したのか、“異能”を発現させました。

 

 皆様も知っての通り、“完全催眠”を手にした私は、この力で争いを終わらせようとしました。

 

 しかし、仲間は私に“異能”が発現したと知るやいなや、磔にし殴り、蹴り、炙り……ありとあらゆる方法で私を苦しめました。

 

 それから何年か経ったある日、“異能”を自身に使い、痛みを鈍く感じさせ、プラシーボ効果で治癒力を上昇させて何とか生きながらえていました。

 

 そんな時、あの男が現れたのです。

 

 偶然か必然か、あの男の目的は分かりませんが、私の仲間は殺させれ施設は破壊されました。

 それにより、自由となった私は決めたのです。

 

 平和などどうでもいい、私は私の為だけに生きよう。

 二度と他人のために力を使わないこと……そして、かつての青春を取り戻し、Y談で心から笑い合うために生きていくと……ね。

 

 

 

『これが私の過去です』

 

「……あんた幾つだよ」

 

『100歳から先は数えてません』

 

「……おじいさんには見えないけど」

 

 目の前のMr.Yはどう見ても、30代から40代くらいの見た目だ。

 

『“個性”を自身に使って、若いと思い込ませているんですよ。あとは度重なる整形の賜物ですね』

 

「……それでアンタのことはわかったよ……なんでイカれたかも……じゃあ“解放の園”ってなんだ?」

 

『そんなもの作った覚えありません……犀原くんたちが勝手に言ってるだけです。私は今まで一人で活動していましたからね』

 

「え……」

 

『“個性”の発動条件である……()()()()()()()()仕事……ラジオを通して世界中に催眠をかけていたある日……そこにいる箱庭くんが声をかけてきたんです』

 

「えぇ……元々、公安で噂になっていた敵が、どんな者か見たくなりまして」

 

「アンタ公安なの!?」

 

「あ、言ってなかったですね……私は元ヒーロー公安委員会ですよ……私の“個性”は尋問室や訓練室にうってつけなので……重宝されてました。でも……飽きたんですよね、毎日毎日“個性”を使う日々……そんな時にマスターの噂を聞き、直接対面してついて行きたくなったんです」

 

『私はどうでもよかったんですが……彼の熱意に根負けして仲間……サークルのメンバーくらいの気持ちでついてくる許可を出しました』

 

「えぇ……」

 

 新情報というか……ここまで第三勢力みたいな感じで登場したのに、そのボスの認識が大学のサークルみたいで、ずっこけそうになる。

 

『それから……ここにいないもう一人のメンバーが加わり、去年に犀原くんが入り“解放の園”と名付けることにしました』

 

「この人が一番新入りなの!?明らかに古参みたいな顔してるのに!?」

 

「俺はMt.レディと同時期にデビューしたヒーローだったのだがな……マスターを捕まえる任務の際、不慮の事故でMt.レディの尻に敷かれ目覚めたのだ」

 

「終わりだよ」

 

『つまり、“解放の園”は己の性癖のために活動するサークルのようなものです。ただ規模がデカイだけのね』

 

「迷惑集団には変わりないじゃん……それでなんで僕を勧誘するのさ……」

 

『簡単な話です。貴方は私の“個性”に先天的な耐性があるからです。貴方は私の“個性”で低下した倫理観に違和感を覚えていましたよね……それが耐性を持っている証拠です』

 

「……」

 

『……それでいて特殊性癖の持ち主……この逸材を逃す手はないでしょう!』

 

「失礼なこと言うなよ!誰が特殊性癖だ!普通だろうが!!」*1

 

『ヌハハハハハハ……やはり良いですね!犀原くんのように元ヒーローだっているのです……雄英生の貴方だって気にすることはないですよ』

 

「気にするよ!世間体とか色々ね!!」

 

『まぁいいでしょう……それよりも外が騒がしいですね』

 

「え、本当だ……マジで」

 

 Mr.Yと話していて気づかなかったけど、スマホの通知が凄いことになってる。

 ……緑谷くんが敵連合と接触したみたいだ。

 

「……」

 

『行ってきていいですよ……私の話も終わりですし、ついでにここのお代も払っておきます』

 

「……礼は言わないよ」

 

『構いません……先行投資のようなものです』

 

 僕はス○バを出て、クラスメイトと合流する。

 

 ……“解放の園”やMr.Yの生い立ち、緑谷くんが敵連合と接触……。

 今日だけで色々あった……。

 家に帰ると、ベッドに体をあずけて頭の中を整理する。

 疲れていたのか、しばらくすると眠ってしまった。

 僕らの休日はこうして幕を閉じた。

 

 そして……日々は過ぎ合宿が目の前まで迫っているのだった。

*1
まだ言ってんのかよ

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